「油を売る」の語源とは? よく使う日本語の不思議

「油を売る」の語源とは? よく使う日本語の不思議
 「ピンからキリまで」「みっともない」「胡散臭い」よく会話に出てくる日本語だが、なぜそのような言い方になったか、語源はご存じだろうか。

 『知ればどや顔 よくわからない日本語』(東郷吉男/著、実業之日本社/刊)では、日常の言語生活のなかでふつうに使いながら、ちょっと深く考えるとどこかにわかりにくさを残すような表現、不思議な日本語の謎を著者の東郷氏が解説する。

 本書では177語を掲載している。ここでは、その中から「鯖を読む」は、なぜ「鰺」ではなく、「鯖」でなければいけないのか、などいくつか紹介していこう。

●「油を売る」
 これは「仕事中に人と無駄話などをして怠けること」という意味だが、どうして「油を売る」がそのような意味になるのだろうか?
 江戸時代の「油売り」は量り売り方式で、粘膜性のある油を枡で量り、漏斗をつかって客の瓶などに注ぎ入れるのに、ずいぶん時間がかかったそうだ。そして、婦人用の髪油を商う者は、客の女性の気を引くために、人の噂話や世間話など、長々と語り合いながら商売をするのがふつうだった。
 こういった背景から、この句は雑談しながらだらだらと仕事をする意味に転用されるようになったという。

●「ピンからキリまで」
 「最高のものから最低のものまで」という意味のこの言葉はどうだろうか。
 ピンとキリは実はポルトガル語に由来する。室町時代からポルトガル人宣教師が日本に渡来するようになったが、「ピン」はポルトガル語の「pinta」から、「キリ」は同じく「cruz」からそれぞれ入ったものなのだ。前者はもともと「点」の意味だが、転じて、さいころの「一」の目、さらに転じて「最上の物」を意味するようになり、後者は「十字架」から転じて「十」、さらに「最低の物」に転じたのだ。

●「みっともない」
 よく使う機会もあるだろう「みっともない」は、「見苦しい。見る人に嫌な感じを与えるさま。他人に見られるのが恥ずかしいさま」という意味である。
 これは「見たくもなし」(「見たくもない」の古い言い方)がウ音便化し、「見たうもなし」となり、さらに「見とうもなし」→「みっともなし」→「みっともない」と変化したと考えられるそうだ。

●「鯖を読む」
 「数を適当にごまかす。物を数えるとき、自分の都合のよいように数をごまかすこと」という意味である、「鯖を読む」。どうして「鯖」なのか?
 「鯖」は日本列島の沿海に群棲しており、昔から捕獲量が多く、刺身・焼き魚・煮魚など、用途が広く、しかも美味しいので庶民の食卓を賑わすことの多い魚だった。ところが、鯖は脂肪分が多く、腐敗しやすいという難点があり、水揚げ港や魚市場では手際よく早く処理することが求められたのだ。そして、「読む」は数をかぞえる意。そして句意はこうした事情から、その数え方が大雑把になりやすかったことによると考えるのが妥当だと著者は解説する。

 「知ればどや顔」とあるように、ちょっとした話のネタにもできるはず。日本語の面白さ、奥深さを改めて実感できる一冊だ。
(新刊JP編集部)



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