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「携帯電話が心臓ペースメーカーを誤動作させる」という話

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携帯電話の心臓ペースメーカーへの影響って、本当のところはどうなんだろうと、病院や電車の中で一度は考えたことがあるのではないでしょうか。今回はMobileHackerzさんのブログ『MobileHackerz再起動日記』からご寄稿いただきました。

「携帯電話が心臓ペースメーカーを誤動作させる」という話
「携帯電話の電波がペースメーカーを誤動作させるので、ペースメーカーのそばでは携帯電話を使ってはいけない」という話があります。そのため「公共交通機関の優先席付近では携帯電話の電源をオフにする」というルールが徹底されていますし、すでに一般常識としてみんな知っていると思います。さらに少し詳しい方なら「ペースメーカーと携帯電話の間は22cm以上離すこと」というガイドラインもご存知かもしれません。

では、この「ペースメーカーと携帯電話の間は22cm以上離す」というガイドラインは、いったい何を根拠としているのでしょうか?今日はこのあたりを詳しく掘り下げてみたいと思います。

「ペースメーカーと携帯電話の間は22cm以上離す」というガイドラインは、平成9年(1997年)に不要電波問題対策協議会が策定した指針 *1 に基づいています。これは、平成7年(1995年)から平成8年(1996年)にかけて詳細な実証実験を行い、(当時の)現行携帯電話全機種において、植え込み型心臓ペースメーカーに影響を与えた最大影響距離が15cmだったことから、15cmに安全係数(√2)をかけた21.2cm(=22cm)を基準として「22cm以上離すべし」とガイドラインが制定されたものです。

●携帯電話の電波が心臓ペースメーカーを誤動作させる、ということは実験で確かめられています。

●実際の最大影響距離は15cmですが、安全を見込んで(電波の強度は距離の2乗に反比例するので、電波の強度が2分の1となる√2倍の距離を見込んで)22cm以上離せ、というガイドラインとなりました。

ところが、この実験が行われたのは1995年から1996年。そう、もう15年近くも前の話なのです。ではその後はどうなのか?……というと、実はちゃんと毎年のように総務省では継続してテストしていたりします。たとえば2001年の調査資料は

『総務省 総合通信基盤局』 2001/5/15 報道資料 「現行携帯電話端末の電波防護基準への適合を確認 -携帯電話端末の電波防護指針への適合確認調査結果-」
http://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/ele/medical/12.htm
で見ることができます。

pm1

これを見ると、この当時でも実のところほとんどのペースメーカーには影響がなかったこともわかります。

●2001年時点で、5cm以内まで近づけた時に影響があるとされた心臓ペースメーカーは68機種中4機種、10cm~15cmの距離で影響があるとされた心臓ペースメーカーは68機種中1機種のみ

次におそらく出てくるであろう疑問は「この調査はPDC(第2世代)携帯電話についてだけど、今の(第3世代)携帯電話……『FOMA』とか……だとどうなの?」ではないかと思います。そう、今の携帯電話のほうが電波の効率が良くなっているので電波出力が弱いはずなんですよね。そのあたりは、2002年に調査されています。

『総務省』 2002/7/2 報道資料 「電波の医用機器等への影響に関する調査結果-新たな植込み型心臓ペースメーカ等についても22センチの現行指針の妥当性を確認-」
http://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/ele/medical/13.htm

そして、報告書の「第I編 携帯電話端末等の電波が心臓ペースメーカへ及ぼす影響の検討(PDF)」 *2 27ページと37ページに詳しい結果の表があります。各「実機」の「最大干渉距離」に注目。

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そう、『FOMA』などの第3世代携帯電話実機では1cm~2cmまで近づけないと影響がないことが示されています。だんだん面白くなってきましたかね?

さらに新しい携帯電話(イーモバイルで使われている1.7GHz帯や2GHz帯のCDMA2000など)になってくると、調査結果 *3 を理解するのに表すら要らなくなります。「影響は確認されませんでした」または「最も離れた位置で影響を受けた場合の距離が1cm未満であることが確認されました」そしてこんな注釈が入ります。
———
注 本調査では、植込み型医療機器へ及ぼす影響が最大となるよう、携帯電話端末の送信出力を最大にするなどの厳しい条件で試験をしており、調査結果(最も遠く離れた位置で影響が確認された距離等)を通常の通信状態における携帯電話方式間の比較に用いることは適当ではありません。
———
「電波の医用機器等への影響に関する調査結果」より引用
http://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/ele/medical/13.htm

つまりこういうことです。
●第3世代携帯電話では、心臓ペースメーカーと携帯電話をほとんど密着させた状態でのみ一部で影響が出ることがある、程度

客観的な実験、データをまとめてみるとこうなります。
●携帯電話の電波は心臓ペースメーカーを誤動作させる可能性がある
●ただし、その「可能性」は
 ・ 旧型の携帯電話(出力が強い)と、もっとも誤動作しやすいペースメーカーの組み合わせ
 ・ かつ、送信出力やペースメーカーの感度を最大にするなど最も悪条件の場合
 ・ かつ、15cm以内に近づいた時のことである
●FOMAなど近年流通しているほとんどの携帯電話(第3世代以降)では、最悪条件時でも3cm以内に密着させない限り影響はない
●PHSは影響しない

ところで、2002年、朝日新聞に「通勤電車は電磁波充満?携帯電話、電源オンで重複・反射」という記事が出たことをご記憶のかたもいるかもしれません。概要としては、「電車のような閉空間で密集して携帯電話が電波を発すると、電波が反射して閉じ込められるので、たまたま共振する地点ではホットスポット(局地的に電波強度の高い点)が発生し想定外の出力になる可能性がある」というもの。当時の記事を一部引用します。
———
通勤客は日々、強い電磁波にさらされている--。
列車内では多くの乗客が持つ携帯電話の電磁波が重なって反射し合い、その電磁波密度は国際的な安全基準値を大幅に超えうることが、東北大の研究で分かった。金属で覆われた車両は電波が外に漏れにくく、複数の携帯電話が同時に発した電磁波は重複して反射する。この研究者は「電源がオンなら、通話中に限らない」などと警告、このほど日本物理学会の論文誌で発表した。
(中略)
ラッシュ時は1車両に約300人が乗車することや、携帯電話機器を複数台持つ人を考えると、さらに強い場合も容易に想定されるという。「金属の箱で電磁波を反射させる『電子レンジ』の大型版と考えれば分かりやすい。バスやエレベーターなど閉鎖空間での電磁波の影響を考慮し、予防原則を考える必要がある」と、本堂氏は話す。学会誌で発表後、英国の鉄道などから問い合わせが相次いでいる。
———
『朝日新聞』 2002/6/3 「通勤電車は電磁波充満?携帯電話、電源オンで重複・反射」より引用(※ リンク切れ)
http://www.asahi.com/national/update/0603/013.html

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