低炭素社会のためにも捕鯨をやめよう/クジラの骨SUGEEEEEEEE

kujira

クジラを炭素量で考えてみたことはありませんでした。すごい量です。今回はsemi_colonさんのブログ『蝉(せみ)コロン』からご寄稿いただきました。

低炭素社会のためにも捕鯨をやめよう/クジラの骨SUGEEEEEEEE
いろいろ考えるものですね。

『Nature News』 2010/02/26 「Carbon credits proposed for whale conservation」
http://www.nature.com/news/2010/100226/full/news.2010.96.html

先日アメリカポートランドで行われた『Ocean Sciences meeting』での、Dr. Andrew Pershingさん(The University of Maine)の話によりますと、クジラは海の森林みたいなものなんだそうです。生き物は炭素でできているのだけれども、クジラは特に体がでかいので、一頭あたりの持つ炭素量がハンパないというお話。Andrew Pershingさんの計算によると、クジラバイオマスとして全部で900万トンの炭素を貯蔵していることになるんだって(何クジラが何頭いる計算にしているのかは知らないけれど)。

Pershingさんは、この炭素量は温帯の森林1万1000平方キロメートル分に匹敵するのだと言っています。だから捕鯨は大規模な森林伐採に等しいのだ!

BBCの記事を見ると、
———
“When whales die [naturally], their bodies sink, so they take that carbon down to the bottom of the ocean.”
———
『BBC News』 2010/02/26 「Whaling worsens carbon release, scientists warn」より引用
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/8538033.stm

クジラが”自然に”死ぬのなら大丈夫ということで、一瞬呪術(じゅじゅつ)的なものを想像をしましたが、そうじゃなくてクジラを構成する炭素がそのまま海底に沈んでしまえばいいよねって話でした。クジラの死骸(しがい)が海の底に沈んでいれば、炭素循環から外れて大気中の二酸化炭素が減るってスンポー。まあ実際は海底の動物たちのご馳走(ちそう)になって再び循環されると思いますケド、ちょっとくらいは堆積(たいせき)したままになるでしょう。

実はクジラを持ち出すまでもなく「生物ポンプ」という考えがあります。大気中から海洋表層に二酸化炭素が溶け込みます。それを光合成をする植物プランクトンが有機炭素にして、排泄(はいせつ)物や死骸(しがい)として海底に沈む。マリンスノーとか言われているやつ。もちろん一部はだれかさんのエサになって分解されるけれど、一部はそのまま堆積(たいせき)する。海洋表層から深層へ運ばれる炭素量(生物ポンプ量)は年間400億トンなんだそうです。年間400億トン。クジラは全部で900万トン。結局Pershingさんの言っているwhale carbon creditという概念は、生物ポンプのほんの一要素にしか過ぎないと思うんですけどね。

『Nature News』記事では最初クジラの炭素貯蔵量を1億500万トンとしてたんだけど、Andrew Pershingさんが再計算したら900万トンだったんだって。1/10以下じゃん。BBCの記事では森林換算が1万1000じゃなくて13万平方キロです。差がちょうど105対9くらいなので、まだ訂正されていないのでしょう。この辺、多く見積もるには「クジラってすごくたくさんいるんですよ」と言わなければならないし、「絶滅の危機に瀕(ひん)している!」の立場なら炭素貯蔵の規模も小さくなってしまうので、難しいですね。

この報を受けて早速オーストラリアでは、増えすぎたカンガルーを海に投げ込むプロジェクトを検討し始めたそうですウソです。

<追記>
コメントを受けて鯨骨生物群集調べてたら思いのほか興味深かった(wikipedia:鯨骨生物群集)。
http://ja.wikipedia.org/wiki/鯨骨生物群集

執筆: この記事はsemi_colonさんのブログ『蝉(せみ)コロン』より寄稿いただきました。
文責: ガジェット通信

■最近の注目記事
荒木飛呂彦のイラストがCell誌の表紙を飾る
ドラえもんがのび太を勝ち組にできた理由
メダルはなぜ金銀銅か

  1. HOME
  2. ガジェ通
  3. 低炭素社会のためにも捕鯨をやめよう/クジラの骨SUGEEEEEEEE
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。