日雇い派遣禁止が1年で解禁に?背景に労働者置き去りの政治

access_time create folder政治・経済・社会

迷走を深めた派遣をめぐる法案改正議論

日雇い派遣禁止が1年で解禁に?背景に労働者置き去りの政治

10月4日、政府の規制改革会議が「日雇い派遣」を解禁するよう求める意見書をまとめました。しかし、日雇い派遣といえば昨年禁止されたばかりです。なぜ、1年足らずで解禁が議論されているのでしょうか。

日雇い派遣というのは、労働者と派遣元の契約が30日以内という短期の派遣のことを指します。もともと政権交代前の自公政権で、いわゆるワーキングプアやネットカフェ難民などが社会問題化した際、30日以内を禁止するべきと議論されました。

さらに2008年のリーマンショック後、いわゆる「派遣切り」や「年越し派遣村」などが発生し、その原因が雇用を不安定にしている派遣にあるとされ、民主党への政権交代後、「登録型派遣の禁止」「製造業派遣の禁止」などとともに「60日以内の日雇い派遣の禁止」の改正法案が作られたのです。しかし、当時の衆参のねじれ国会で、その後、法案は2年間におよび迷走し、「登録型派遣の禁止」「製造業派遣の禁止」等が大幅修正され、2012年3月に成立することとなりました。

この時、日雇いだけは民自共に法案化していたこともあり、結局「30日以内の日雇い派遣」が原則禁止となってしまったのです。原則禁止とあるだけに、すべての日雇い派遣が禁止されたわけではありません。業務によって、また、60歳以上の高齢者や昼間学生、そして、年収500万以上の世帯の人やその配偶者などは例外とされました。

政治的事情で改正された法律に労働者の声は反映されていない

ここまでが改正に至るまでの大きな流れですが、ここに改正が再議論されるポイントがあります。一連の議論の中には、日雇い派遣で働いている派遣労働者の声が反映されていません。すべては政治的な流れの中で、「日雇い=可哀想な働き方」として括られ、「可哀想だから禁止しよう」とされたのです。しかし、日雇い派遣で働く労働者は、自身になんらかの事情があり、長期的に働けない人も多いのです。その事情は千差万別ですが、禁止によって否定されるようなものではありません。ましてや年収で制限されるなどは、差別であると言っても過言ではないでしょう。

現在、派遣の登録では、年収確認の欄が設けられていますが、登録者から「500万円以下の誤植ではないですか?500万以上のセレブなら働く必要がないのでは?」という声を聞きます。まさに、その通りです。政治的事情によって改正された法律が現場とのかい離を生み、それが今回の再解禁議論の背景となっているのです。

厚生労働省の労働政策審議会では、労働者派遣法の改正が議論されていますが、そこでは今のところ残念ながら「日雇い派遣の禁止」の見直しは議論の対象となっていません。しかし、今回から初めて、この審議に業界の代表者がオブザーバーとして参加しています。こうした現場の派遣労働者の声なき声を発信し、今度こそ、名実ともに「派遣労働者の保護」となる法律となることを願っています。

  1. HOME
  2. 政治・経済・社会
  3. 日雇い派遣禁止が1年で解禁に?背景に労働者置き去りの政治
access_time create folder政治・経済・社会
JIJICO

JIJICO

最新の気になる時事問題を独自の視点で徹底解説するWEBメディア「JIJICO」。各分野の専門家が、時事問題について解説したり、暮らしに役立つお役立ち情報を発信していきます。

ウェブサイト: https://mbp-japan.com/jijico/

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。