悪質な不要・不急の110番通報、どんな罪に?
不要・不急の110番通報、3割近くに
不要・不急の110番通報が後を絶ちません。今年上半期に埼玉県内で受理された110番通報のうち、間違いやいたずら、問い合わせなどが3割近くにも上っていることが判明しました。中には悪質なものもあり、埼玉県警は刑事事件として立件することを視野に入れ、厳しい態度で臨むそうです。
悪質なものは「偽計業務妨害罪」の対象に
公務の執行を妨害する罪としては、公務執行妨害罪(刑法95条1項)があります。しかし、この罪は「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた」場合に成立するものです。悪質な不要・不急の110番通報により公務を妨害したとしても「暴行又は脅迫」が用いられていないため、これには該当しません。また、威力業務妨害罪(同法234条)も「威力」(人の意思を制圧するに足りる勢力)を用いて業務を妨害した場合の罪のため同様に該当しないでしょう。
そこで考えられるのが、偽計業務妨害罪(同法233条)です。「偽計」とは、裁判上は「欺罔(きもう)行為(※詐欺罪の実行行為)により相手方を錯誤に陥らせる場合に限定されるものではなく、相手方の錯誤あるいは不知の状態を利用し、または社会生活上受容できる限度を越え不当に相手方を困惑させるような手段術策を用いる場合をも含む」とされております。悪質な不要・不急の110番通報は、正当な通報であると信じて応答する担当者を困惑させるため、「偽計を用いた」ものといえるでしょう。
刑事罰に問われることの周知が必要
もちろん、すべてが悪質ではありません。110番が覚えやすいものであるため、生活上の相談事があると、どうしてもそこへかけてしまう人が多いようです。これらすべてに丁寧に応じているとしたら警察には頭が下がります。
ただ、不要・不急の110番通報の増加によって、本来の110番通報システムが阻害されてしまうことは、誠に忌々しき事態としか言いようがありません。悪質な110番通報に対しては、「偽計業務妨害罪」に該当するものであることを周知し、厳正に対処することが必要といえるでしょう。
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