派遣、業務別の制限撤廃へ 正社員雇用への影響は?

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3年ごとに「人」が替われば、ずっと派遣活用が可能に

派遣、業務別の制限撤廃へ 正社員雇用はどうなる?

厚生労働省の「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」は、派遣労働の上限制限などの規制を実質的に緩和する最終報告をまとめました。現在は、通訳など専門性の高い26業務だけが期間に関係なく派遣で働かせることができます。しかし、26業務以外については「業務」ごとに対して最長3年という制限があるため、派遣業務に2年勤務していた人が辞めたあと、後任の派遣労働者は残りの1年間しか勤務できないことになっています。

今回、「どんな仕事でも企業がずっと派遣に任せられるようにする」というコンセプトのもと、26業務などの専門性の区分をなくして「業務」ごとの最長3年の期間制限を撤廃し、「人」基準で3年を上限とすることにしました。派遣先の企業が労使で合意すれば、3年ごとに人が替わることを条件に、ずっと派遣を活用することができるようになります。さらに、派遣労働者が派遣元と無期契約を結んでいれば、同じ人がずっと働くことが可能になります。

また、現在、有期契約で先述の26業務に就いている派遣労働者にとっては、人単位で最長3年という期限が設けられることで職場を変える必要が出てきますが、これをきっかけに派遣元の企業が無期契約に変更するということも考えられます。派遣であっても無期契約で働くことができれば、より安定して働くことができるでしょう。

揺らぐ正社員雇用。派遣に置き換えられる可能性も

最終報告の中では、派遣労働者に3年という期間を確保することは能力向上の機会を増し、派遣先の企業側で3年という区切りで正社員へ転換しようとする動きも出てくると予測される、といったメリット面を強調しています。しかし一方で、人件費が高い正社員の仕事を派遣に置きかえる動きが進む可能性は否定できず、正社員に限らず、企業全体としてリストラを検討するきっかけになってもおかしくはありません。その点を懸念する声は多数あります。

今後、報告書をもとに労働政策審議会で法改正の論点を詰め、年明けの通常国会で改正を目指すことになりますが、想定される課題をクリアするにはさらなる議論が必要です。

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