いま、工科高校に熱視線! 次世代の活躍人材が生まれる源泉へ小中学生や親世代も注目

▲「工科プレゼンアワード」でベストPR賞を受賞した練馬工科高校の生徒たちとなすなかにし、武内陶子アナウンサー

工業高校というと、かつての“やんちゃ”な男子生徒のイメージが強いかもしれないが、いまは小中学生とその保護者からの熱い視線が注がれているという。東京都などでは「工業高等学校」を、「工科高等学校」に名称変更、ITやデジタル技術など現代の産業ニーズに対応する教育課程への改編が行われるなど、イメージも変わりつつあるのだ。そんな工科高校が集まるイベント「都立工科高校ドリーム・フェスタ2026」の様子をレポートする。

都立22校が一堂に会し、体験と交流の一日に

▲各校のブースでの個別相談の様子

2026年8月2日、東京都新宿区の新宿住友ビルで開催された「都立工科高校ドリーム・フェスタ2026」は、東京都教育委員会が主催し、都立の工科高校22校が集結。在校生による体験・実演コーナーや展示コーナー、ドローン・ロボットなどの先端技術コーナーが用意され、夏休み中の小中学生とその保護者が朝から詰めかけた。

会場では、在校生が自校の魅力を来場者に語りかけるPRタイムのほか、教員と直接話せる個別相談ブースも設置。単なる展示にとどまらず、「進路」としての工科高校を肌で感じてもらう工夫が随所に見られた。

【体験1】VR・AR溶接――「重さ」まで伝わるリアルさ

▲VR溶接体験

もっとも人だかりができていたのが、八王子桑志高校と蔵前工科高校が合同で実施した「VR・AR溶接体験」コーナーだ。実際の授業では金属の溶接を行うが、会場では日本溶接協会や六郷工科高校から借りたVR・ARの機材を使い、臨場感ある疑似体験ができるようになっていた。VRゴーグルを装着すれば溶接時の視界をリアルにイメージでき、AR体験は手元だけの映像でありながら、溶接特有の重みの感覚まで再現されているという。

八王子桑志高校では、1年生が「工科技術基礎」という授業の中で3時間×6週にわたる溶接実習を行っており、大会で関東3位に入賞した生徒もいるという。体験に立ち会った生徒によると、VR溶接は実際の作業より簡単だが、角度や速さが仕上がりや強度に直結するため、感覚をつかむ練習として意味があるという。

実際の授業は危険を伴うため3人一組で交代しながら協力して行うそうで、「工科高校は実践的な授業が多く、希望すれば資格も取れるのが魅力」と話していたのが印象的だった。担当教員によると、去年よりも反響は大きく、1時間で40枚の整理券がすべて配布される人気ぶりだったという。

【体験2】ドローンサッカー――都立高校で唯一の設備

▲ドローンサッカーの実演

北豊島工科高校のブースでは、ドローン操縦体験とドローンサッカーの実演が行われた。同校の授業ではドローンを扱っており、国家資格である「二等無人航空機操縦士」の資格を取得できるプログラムも用意されている。将来的にはビルや橋のメンテナンス、宅配などへの活用が見込まれる分野として、就職にも有利に働くという。

なかでもユニークなのが、部活動として行われている「ドローンサッカー」だ。5対5(攻撃2人・守備3人)に分かれ、3分間でより多く得点を入れたチームが勝利するというルールで、操縦の練習にもなっているという。都立高校でドローンサッカー用の設備を持つのは同校が唯一とのことで、来場者たちはリング状のゴールにドローンを通す様子に見入っていた。

【体験3】ロボットアーム de クレーンゲーム――ゲーセン感覚で学ぶ制御技術

▲ロボットアームdeクレーンゲームの体験

蔵前工科高校のブースでは、プログラムでアームの動きを設定し、2つのボタンでロボットアームを操作する「クレーンゲーム」が人気を集めていた。ゲームセンターにあるクレーンゲームのミニチュア版のような感覚で楽しめる内容だが、その裏側にあるのはプログラミングと機械制御という工科高校らしい専門技術だ。筆者も体験してみたが、無事キーホルダーを取ることができ、生徒が作成したキーホルダーをお土産にもらって帰った。

▲上がクレーンゲームで取ったキーホルダー。下はVR溶接体験の記念品で、授業で使うレーザーカッターで作ったという

お笑いコンビ・なすなかにしが表彰式に登壇

▲「工科プレゼンアワード」表彰式

会場を大いに盛り上げたのが、スペシャルサポーターを務めたお笑いコンビ・なすなかにしだ。ステージでは「うちの工科はこれが魅力!全力プレゼンSHOW」と題し、各校の在校生によるプレゼンテーションが行われ、最後には「工科プレゼンアワード」の表彰式が開催された。

武内陶子アナウンサーが選ぶ「ベストMC賞」には科学技術高校が選ばれた。「とにかく元気とパワーがあってよかった」と評価されたという。なすなかにしが選ぶ「ベストスペシャルサポーター賞」には六郷工科高校が選出され、プレゼンがしっかりしていてアイデアの良さが決め手になった。また、来場者と配信の視聴者による投票で受賞校を決定する「ベストPR賞」には練馬工科高校が輝いた。登場時に転んでしまうアクシデントがありながらも、それも含めて会場を沸かせた点が評価されたようだ。

表彰式後、なすなかにしの那須さんは「逆に僕らが勉強になりました。本当に学ぶことがいっぱいあって、また来たいです」、中西さんは「いろんな学校のことも知れて、みんな将来のことを考えてんねやなと思いましたね。若いときからいろんな技術を学ぶっていうのは、本当に大人になってくると役に立ちますんで、工科高校にこの先入る方もいらっしゃるかもしれないですね」とそれぞれ感想を述べた。

進行を務めた武内さんも「皆さんのものづくりに対する真剣な眼差しと遊び心が感じられる1日でした。高校に入る前から、いろいろなことを考える機会として親としても参考になりました」とコメントするなど、大人の視点から見ても学びの多いステージイベントとなったようだ。

子どもの「好き」が広がった一日

▲夏休みの日曜日とあって会場は大盛況

来場者は小中学生やその保護者など5,390人に上ったという。会場を訪れた親子からは、それぞれの体験が印象に残った様子が伝わってきた。お菓子作りに興味があるという中学2年生の女子生徒は、母親とともに中野工科高校のブースを訪れ、香りビーズの芳香缶作りやコーヒーグラウンズを使った消臭袋作りを体験。「生徒さんの説明が丁寧でみなさん親切だったので楽しめました」と話していた。

また、なすなかにし目当てで来場したという親子連れは、アルファベット組み立てストラップや「水と油の世界」、香りビーズの芳香缶作り、LED点灯カイロの製作など、さまざまな体験コーナーを回ったという。

将来は動物の飼育員になりたいと考えていた中学1年の男子生徒は、このイベントを通じてロボットやLEDへの興味を新たに持ったといい、体験を見守っていた母親も「生徒さんのお話がとても魅力的で、実際に技術が世の中の役に立つ様子をイメージしやすかった」と、子どもの関心の広がりを実感していた様子だった。

日本の産業を支える人材の育成拠点に

工科高校が注目される背景にあるのは、深刻化する理系人材不足だ。経済産業省の予測によれば、2040年には大卒・院卒の理系人材で約124万人、高卒(工業科)人材で約91万人が不足するとされる。

一方で、全国の工業系高校卒業生に対する求人倍率はすでに31.9倍。AIやロボット技術が進化する時代だからこそ、ものづくりや情報、建築、機械といった専門分野を実践的に学べる工科高校の価値が見直されているのだ。理系大学への進学や国家資格の取得にもつながる学びが充実しており、日本の産業を支える人材の育成拠点として再注目されている。

夏休みのひとときに、次世代の技術者の卵たちと直接触れ合いながら「ものづくりの面白さ」を体感できる本イベント。将来を担う人材の裾野を広げるという意味でも、こうした取り組みの意義は小さくないだろう。

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