【寄稿レポート】Inter Faith(諸宗教合間交流)駅伝ツアーに参加して

【寄稿レポート】Inter Faith(諸宗教合間交流)駅伝ツアーに参加して

2013年6月にルクセンブルグで開催された「InterFaith駅伝」。「InterFaith」とは、諸宗教間の相互理解という意味で、これからの宗教界において、重要なキーワードとなる言葉です。それぞれの宗教の違いを乗り越えて、お互いに理解し合う活動の一貫として、世界のいろいろな宗教の宗教者(お坊さん)たちが集まりたすきを繋ぐという主旨の駅伝が、「InterFaith駅伝」です。
(詳しくは こちらの記事 をご参照ください。)

この試みはとても話題となり、彼岸寺でのご紹介記事への反響も非常に大きいものとなりました。今回は実際にこの駅伝に参加された、浄土真宗本願寺派 大見山 超勝寺の大來尚順師によるレポートを掲載させて頂きます。



「ルクセンブルクINGナイトマラソン併催 Inter Faith(諸宗教合間交流)駅伝ツアーに参加して」
浄土真宗本願寺派 大見山 超勝寺 衆徒 大來尚順

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 2013年6月5日-11日までにルクセンブルクで開催されたInter Faith(諸宗教合間交流)駅伝ツアーに全日本仏教会事務局員及び僧侶13人と参加した。Inter Faithマラソンとは、ルクセンブルクINGナイトマラソンと併せて開催されており、世界中から様々な宗教者が集まり、諸宗教間の相互理解を深め、諸宗教の僧侶が一つのたすきをつなぐことで世界平和に向けたメッセージを発信するもの。(公財)全日本仏教会は、日本の宗教界で初めて参加を表明し代表団を結成。ほとんど面識もない日本仏教僧侶が成田空港で初めて集い、日本仏教僧侶代表としてルクセンブルクへ出発した。

<ネディクト会修道院 滞在>

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 成田空港からアムステルダム経由でルクセンブルクまで15時間。到着するや否や、クレルボーという街にあるベネディクト会修道院へバスで移動。1000年を越える歴史上、始めて他宗教の人間が足を踏み入れることになった。ここで2泊3日滞在し、20名弱の修道士とチャペルでの祈りや伝統的な食事を共にした。修道院滞在中、日本仏教についての発表をさせてもらい、その後お茶を飲みながら交流会を持った。そこで69歳になる一人の修道士と対話する機会を得た。この修道士はベルギー出身で、修道院生活は今年で50年になるという。私自身、日本の世襲制の中の寺院に生まれ、様々なご縁を通して僧侶として生きることになったことを説明した。するとこの修道士からもこれまでの経緯を聞くことができた。

「15歳頃から神に近づきたいという思いを持っていました。ずっとそのような場所を探していて、見つけたのがベネディクト会修道院でした。私は自分でこの修道院を訪問し、ここで生きることを決心しました。両親にこの旨を伝えたとき、喜んでくれはしましたが、修道院に入ることには反対されました。それならば牧師になればいいと。しかし、私の思いはより神に近づきたいというものでしたので、19歳でこの修道院に入ることを許されました。今年で50年を迎えます。全く後悔はありません。ここにいる間、いろいろな勉強をしました。もちろん仏教も。しかし、あなたとの意見交換を通して仏教は難しい哲学ではなく、「way of life」(生き方)なのだということを感じることができました。」

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<オロリッシュ・ルクセンブルグ大司教 訪問>
 2泊3日のベネディクト会修道院を経て、ルクセンブルク日本大使館を表敬訪問し、その後約20年間日本に滞在され、上智大学でも教鞭を取っておられたオロリッシュ・ルクセンブルグ大司教を訪問。オロリッシュ師はルクセンブルクのカトリックでトップの地位にある方で、日本滞在中は親鸞について論文を執筆し、日本仏教についても様々な研究や体験をされたようである。挨拶の中で、自身の経験を踏まえ「体験」という点から日本仏教の大切さを述べられ、ヨーロッパの宗教は離れの原因の一つとして宗教を体験する/宗教に生きることの欠如を挙げられた。再度、自分の足下を見直す必要性を訴えられた。

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<ホームステイ>

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 オロリッシュ・ルクセンブルグ大司教と面会後、Inter Faithマラソンの受付会場へ移動。そこで日本仏教僧侶ランナーはそれぞれの受入先ホストファミリーと面会し、宿泊することになった。私のホストファミリーは小さな子供が2人いる4人家族。ホームステイ中、現地の宗教離れの問題など、日本社会と共通の課題等を議論した。その中でこんな声を聞いた。「以前教会へ良く行っていたが、子供の習い事の関係で行けなくなった。しかし、培ったものは消えない。大人になれば、社会でいろいろな問題にぶつかり、いつか壁を乗り越えるために必要になる。」日本でも同じことが言えるかもしれない。宗教幼児教育の必要性を改めて感じた。

<イスラム聖職者との対話>
 Inter Faithマラソンは、4人で42.195kmを走る駅伝チームとして参加。イスラム聖職者、キリスト教牧師、仏教僧侶という構成。終了後、参加者との交流会があり、そこで同じチームで走ったイスラム聖職者の方と対話をした。
「アッラーの崇拝は自己内省の時間です。イスラムの目的というのは私が『良き人間になり、良き社会作りに貢献すること』。これはどの宗教も同じなのではないでしょうか。文化、言語が異なれば、時として考え方が異なることがあるのは当然です。だからこそお互いを尊敬する中で、理解しあうことが大切なのだと思います。」
正直、驚いた。アッラーを崇拝する時に持つ心は、自分が阿弥陀仏に手を合わせる時に持つ慙愧(反省)と歓喜(感謝)の心と変わらない。

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<おわりに>
 この旅では宗教間対話の重要性を肌で感じることができた。しかし、もう一つの収穫は、仏教諸宗派間対話であった。様々な活動を日本仏教というくくりの中で従事する際に生まれたお互いを敬う心は、まさにこれから日本社会の様々な諸問題に一緒に取り組む為の大きな原動力となるだろう。

是非とも京都で開催されるマラソン企画とそれに付随する様々な交流プログラムに参加し、実際に対話というものを体験してもらいたい。

最後にこの企画に尽力された(公財)全日本仏教会に心から感謝を述べたい。

合掌

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○連載:仏教なう

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彼岸寺

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