日本と中国のフットワークアーティストを紹介する新コンピ『包-PAO-Vol.1』配信開始

日本と中国のフットワークアーティストを紹介する新コンピ『包-PAO-Vol.1』配信開始

日本のダンスミュージックレーベル「Kool Switch Works」と香港コミュニティーラジオのレジデント番組「The Footwork Program」がタッグを組み、juke / Footworkに焦点を当てた共同コンピレーションのシリーズ第1弾『包-PAO-Vol.1』が配信リリースされた。    

シリーズ第1弾となる本作では、国内の伝説的レーベル「Bootytune」の初期メンバーでもあり、日本のジューク・フットワークシーン黎明期から活動するKSW所属のDJ SAUCEMAN(aka D.J.G.O.) と、フットワークダンサーとして国内で活動し「Prophecy Crew」のメンバーでもあるJunya Kobayashi(Chikob) が、日本のフットワークシーンの豊かな系譜と現在進行形のスタイルを披露。

一方、中国サイドは「YUKU」や「Planet Mu」から実験的なエレクトロニック作品を発表してきた Rev、そして多くの中国ヒップホップ名盤を手がけてきたプロデューサーAroll(aka Natural Doc) ~いずれも成都を拠点とする二人~によるシンコペーション豊かなビートは、中国のエレクトロニック・ミュージシャンの間で複雑なリズムに対する探求心が芽生えつつあることを鮮やかに示している。

Introduction by Lindrum(Anlin Liang)

数年前、香港コミュニティラジオ(HKCR)で「The Footwork Program」という番組を始めました。番組を始めたきっかけは、たまたま聴いていた ShioriyBradshawの HKCR の番組にゲスト出演していたDJ Fulltonoのミックスに影響を受けたことです。DJ Fulltono のミックスは本当にスムースで「こんなミックスをずっと聴いていたい」と心から思い、知っているフットワーク・ジュークのプロデューサーに声をかけて番組用のMIXを依頼してもらいました。フットワークコミュニティの人々は(シカゴはもちろんそれ以外の地域も含めて)たいてい親切で、寛大で、音楽とダンスへの純粋な愛から行動している人ばかりです。お願いした多くのDJがミックス制作を快く引き受けてくれ、送ってくれたミックスはどれも本当に素晴らしく毎回圧倒されました。

その過程でたくさんの友人もでき、そうした友情から実りある交流が生まれました。このコンピレーションもそのひとつの交流から生まれたものです。今年8月、私は番組のゲストでありのレーベルオーナーでもある Pharakami Sandersに、広州在住のプロデューサーの友人のデモを送り興味があるかどうか尋ねました。彼はトラックがまだ仕上がっていなかったにもかかわらず、そのデモを気に入りました。そして彼はKool Switch Worksで中国のフットワークプロデューサーたちを紹介するコンピレーションを作るのはどうか?ととても寛大な提案をしてくれました。中国には確立されたフットワークシーンがあるとは言えませんが、各地にフットワークを聴いたり作ったりすることに強い興味を持つ人がいることは知っており、制作のモチベーションになる場を作りたいと思っていたのですぐに連絡先を見返してひとりひとりに参加したいかどうか声をかけていきました。

そんな中でこのコンピレーション第一弾に参加してくれた4名のアーティストを紹介します。

SAUCEMAN (D.J.G.O.)
東京を拠点に活動する DJ/トラックメイカーでKool Switch Works に所属し、また長年日本のジューク・フットワークシーンを牽引してきた DJ Fulltono 主宰のレーベル の初期メンバーの一人でもあります。KSW のレーベルオーナーである Pharakami Sandersが偶然 D.J.G.O. の “Supa Dopa EP”(2011年5月に Booty Tune からリリース)を偶然耳にし、自身のDJとしての方向性に大きな影響を与えました。
2012年に彼は D.J.SAUCEMAN 名義でKSW 最初のコンピレーション “WITCHCRAFT EP” に参加し、Nina Simone の “Feeling Good” をサンプリングした独自性の高いトラックを提供しました。このリリースを機にアーティスト名をに統一し、その後図書館で手に入れた寄贈品の野鳥音源のフィールドレコーディング CD-R から着想を得て、KSW の代表的な作品 “鳥シリーズ” を生み出すことになります。今回のコンピレーションにおけるSAUCEMAN もまた、独自の音の組み合わせが光ります。口琴、雨のように響くパーカッション、8bit 的な質感のシンセ、ヒップホップ的なドラム、そして極太のベース。

Rev
中国・成都を拠点に活動する才能あるプロデューサー/ミュージシャンです。2024年には YUKU から高く評価された EP “DICA” をリリースし、同年11月には Planet Mu から “Stay, Nomad” を発表しました。彼の音楽は新鮮で緻密、そしてきらめくような質感を持っています。今年6月に私自身の楽曲制作で彼と共作する機会に恵まれ、その過程で彼の多才さや複雑なリズムへの関心について深く知ることができました。彼が Bandcamp のコレクションを見せてくれたことで、フットワークへの理解と愛があることも分かり、ぜひフットワークのトラックを作ってほしいとお願いした。完成したトラックは間違いなくRevの音像そのもの。その遊び心に満ちた楽しいヴォーカル・チョップの妙技が見事に発揮されています。

Junya Kobayashi
私が深く敬愛しているフットワークダンサーです。彼を知ったのはAce-Up(個人的には最高峰のフットワークプロデューサーの一人)が、かつてFRUITY 名義で作ったトラックに合わせてJunyaが踊っている動画をリポストしていたのを見たことがきっかけでした。冬の夜、白い街灯の下、柳の木のそばで踊るJunyaダンスにはいつも品のある優雅さが宿っています。そこからフォローを始めましたが、彼のダンス動画は今のSNSに残された数少ない“救い”のような存在です。Junya が音楽制作を学んでいるとどこで聞いたのか忘れてしまいましたが、Pharakami Sanders に「誰をコンピレーションに入れたい?」と聞かれたとき、真っ先に思い浮かんだのが Junya でした。彼のダンスに現れている感性は、きっと音楽にもそのまま息づくはずだと信じていて、その予感は的中しました。

Aroll
Natural Doc という名義で長く尊敬されてきたビートメイカー/ヒップホップ・プロデューサーです。Natural Doc 名義では、中国のヒップホップ・グループ

のメンバー のアルバム『顽石点头』を全曲プロデュースし、この作品は多くの人に “2022年のベスト中国ヒップホップ・アルバム” と称されました。また今年11月には北海道のMC Kojeemah との新作プロジェクトもリリースされています。現在 Aroll は成都を拠点に、仲間たちとともに音楽スペース「工 GONG」を運営しており、Rev もそこでよくプレイしたり遊んでいたりします。私がアーティストを GONG に連れて行って演奏した際に Aroll と出会い、そこでArollとGONG の仲間たちがフットワーク好きであることを知りました。Aroll はヒップホップ以外にもサンプリングベースの音楽をさまざまなスタイルで探求しており、特にブロークンビートやフットワークに関心を寄せています。彼は“クオンタイズしない”音楽構成を好み、過度に機械的なリズムではなく、テクスチャー豊かで自由に流れるようなグルーヴを作り出すことを目指しており、その特徴は今回のトラックでもはっきりと感じ取れるはずです。

リリース情報

『包-PAO-Vol.1』
包-PAO-Vol.1 ~Kool Switch Works x The Footwork Program~
〈収録曲〉
1. Rev – How Many Foot
2. SAUCEMAN – Beyond
3. Aroll – Badbwoyy Sound
4. Junya Kobayashi – Fumbling Tumbling

Mastered by Metome
artwork created by Kota Nakazono

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OTOTOY

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