【ライヴレポ】安月名莉子は「変わるために生まれた」──ワンマンライブ2025「Born to Change」

“Born to Change”。その言葉の意味を、彼女はこの夜、確かに歌で示していた。
2025年11月9日、



開演の時刻、ステージのスクリーンにはこの1年間の活動を振り返る映像が映し出され、観客の胸にさまざまな思い出が蘇る。そして最後に浮かんだのは、この夜のテーマでもある「Born to Change」の文字。
照明が落ちた瞬間、ステージに響いたのは「最高の1日にしようぜ!」という安月名の叫び。バンドメンバーと共にアコースティックギターをかき鳴らしながら、披露されたオープニングナンバーは「BLUE CYALUME」。青いサイリウムの光に包まれた客席とともに、ライブの幕が勢いよく開かれた。
続く「ないものねだらせたもん勝ち」では、コール&レスポンスで会場がひとつに。
その熱を引き継ぐように放たれたのは、ハードなギターリフが唸る「keep weaving your spider way」。突き抜けるようなハイトーンのヴォーカルに、フロアのヴォルテージは一気に頂点へと達した。



MCを挟み、キュートな振り付けが印象的な「Chance! & Revenge!」、そしてクラップが響く「Shouting My Soul」へ。アコースティックギターの鋭いカッティングとともに歌い上げられる「手を伸ばして あと1ミリ 僕が未来を変える」というリリックには、今回のライブタイトル「Born to Change」にも通じる決意が宿っていた。
「かたち」では一歩一歩踏みしめるように歌い、「Unheard Voice」ではブレイクビーツに乗せて軽やかにステップ。バンドメンバーの紹介を経て「Forever」へとつなぐと、伸びやかな歌声が会場全体を包み込んだ。
スポットライトに照らされながら歌われた「Whiteout」では、一音一音を丁寧に紡ぎ出す。続く「DAISY」では、「夢を追いかけた日々は無駄じゃない」という前向きなメッセージを放ち、さらに「Glow at the Velocity of Light」へ。夕暮れのような温もりを持つ歌声が、会場をやさしく染め上げた。



中盤にはアコースティックアレンジのコーナーが設けられた。美しいピアノとともに歌われた「Convallaria」は、静けさの中に強さが宿る一曲。さらに安月名は、自身の原点であるデビュー曲「君にふれて」へと続け、「Memories」「シルバーフラワールド」をしっとりと歌い上げた。
安月名の歌声は、まるで夜明け前の空気のように澄んでいて柔らかいのに、内側に確かな熱を持っている。高音は繊細で抜けるように美しく、低音には静かな憂いや決意が宿る。このアコースティックのコーナーは、彼女の素直でまっすぐな歌声が、改めて彼女の本質を映し出す時間だった。
ライブはここから新曲「GRASSHOPPER」で終盤を迎える。ダンサブルなビートに乗せて跳ねるように歌い、会場の熱気を再び高めていく。そして「今日イチの最高のジャンプを見せてください!」という呼びかけとともに「selfish」へ。フロア中がハッピーなオーラに包まれた。


アンコールに入る前、MCで安月名は、グッズの傘とキャップが完売したことを笑顔で報告。「今日雨でよかった」と語りながらも、ファンとのお約束のように「安月名のワンマンはなぜか雨」と語る。「雨なら雨で対策を、という声をたくさんいただいて作りました」と語る傘グッズは、ファンにとって“安月名ライブの風物詩”のような存在になるだろう。
安月名は続けて、「これまで“変わりたい”“変われない”という気持ちをずっと抱えてきたけど、最近になってようやく、“私は変わるために生まれてきたんだ”と思えるようになったんです」と語る。「自分の感情を受け入れられるようになったから、自信を持って前向きな言葉を届けられるようになった」と語る彼女の姿は、凛としながらも温かい光を放っていた。
「喜怒哀楽の“怒”や“哀”の感情を、これまでちゃんと受け止められていなかった。でも、怒りや悲しみって、一番大きなパワーを生み出すものなんです」。そう語った彼女は、「その想いを曲に込めました」と紹介し、「昨日書いたばかり」だという新曲「Born to Change」を初披露。


ステージにひとり立ち、ギターを携えて放たれた歌声は、“変わるために生まれた”という言葉を体現するようだった。続く「雨のち虹」では「みんなで虹を降らせましょう」と語りかけ、どんな暗い日も、未来はきっとカラフルに変わるという希望を届けた。ラストナンバー「Horizon」でライブは大団円を迎える。まっすぐに未来を見据えるような歌声が、夜空の果てへと伸びていった。
終演後には、近日中に新曲「GRASSHOPPER」のMVが公開されること、そして2026年3月中国・上海ワンマン公演が開催されること、そして来年春にはセカンド・アルバムのリリースが決定したことが発表された。
安月名莉子は、何を変えたいのか。それはきっと“未来”なのだろう。それは自分自身の未来でもあり、聞いてくれるリスナーの未来でもある。この日のステージを通して、安月名莉子は“変わる”ということを恐れず、音楽でそれを証明してみせた。変わるとは、過去を否定することではなく、自分自身を信じて未来へ進むこと。その歌声は、彼女自身の未来だけでなく、聴く者の心にも確かに“変化”の種を灯していた。


取材&文:ニシダケン
Photo by 小川遼
ライブ情報
安月名莉子 ワンマンライブ2025 ”Born to Change”
2025年11月9日 @ 浅草花劇場
セットリスト
1BLUE CYALUME
2ないものねだらせたもん勝ち
3keep weaving your spider way
4Chance! & Revenge!
5Shouting My Soul (Live ver)
6かたち
7Unheard Voice
8Forever
9Whiteout
10DAISY
11Glow at the Velocity of Light
12Convallaria
13君にふれて
14Memories
15シルバーフラワールド
16GRASSHOPPER
17selfish
EN1 【新曲】Born to Change
EN2 雨のち虹
EN3 Horizon
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