睡眠中の口呼吸には要注意! 鼻呼吸の習慣を取り戻す「マウステーピング」のススメ
朝起きると、口に乾きやねばつきがあったり、のどの痛みを感じることはありませんか? 気温が下がり空気が乾燥するこの季節、そんな不調がある人は睡眠時に“口呼吸”をしているのかもしれません。人間は赤ちゃんの頃から“鼻呼吸”をしてきたはずなのですが、成長の過程や加齢により口呼吸をするようになり、特に睡眠時の口呼吸が健康リスクをもたらします。「みらいクリニック」を開業する内科医の今井一彰先生に、睡眠中の口呼吸のリスクと口呼吸を解消する「マウステーピング」の意義についてお話を伺いました。
口呼吸は後天的に身に着けたもの
「ご飯を鼻から食べる人はいないように、呼吸を口からしてはいけないのです」と語る今井先生。人間はもともと鼻で呼吸していたのに、さまざまな要因で後天的に口呼吸の癖がついてしまっているそうです。
子供の頃は柔らかい食べ物、口遊びの不足といった要因が挙げられる他、大人になっても唇の周りにある口輪筋が衰えたり、花粉症やアレルギー性鼻炎をきっかけに口呼吸の習慣が身についてしまいます。口呼吸をすると、何が問題になるのでしょうか。
口呼吸がもたらす健康リスク
日中、口呼吸をしてしまうことにより、「体と心に影響がある」と今井先生は指摘します。体の問題は分かりやすく、乾燥して冷たい空気を直接吸い込んでしまうことから、風邪や肺炎、気管支ぜんそくにかかりやすくなってしまいます。また、酸素を取り込む量が少なくなり、仕事のパフォーマンス低下や記憶力の減退につながるリスクも。
心の問題は、うつ傾向や集中力の低下が考えられる他、心が弱くなり疲れやすくなってしまうリスクが考えられるそうです。
特に注意が必要な睡眠時の口呼吸
睡眠中は筋肉が弛緩して舌がのどに落ち込んでしまうことから、口が開きやすくなります。これにより口呼吸になってしまうので注意が必要です。睡眠中の口呼吸は、朝ののどの痛みや風邪の原因となる他、いびきや睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まります。
また、口呼吸は唾液による口腔内の自浄作用を低下させ、虫歯や歯周病を悪化させる要因にも。虫歯や歯周病は動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、認知症、糖尿病といった疾患リスクを高めるという観点からも注意が必要です。
睡眠時の鼻呼吸を促すマウステーピング
睡眠時に鼻呼吸を促す方法として、今井先生は唇をテープで閉じる「マウステーピング」を推奨します。口を閉じることで舌が沈下せず歯の方向に向かうことから、気道を確保して鼻呼吸をしやすくする効果が期待できます。
テープは市販の専用タイプのほか、サージカルテープなどでも代用できます。肌の状態に合わせて、刺激の少ないものを選ぶようにしましょう。貼り方は、唇の中央で縦に貼るのがおすすめとのこと。寝ている間にくしゃみをしても空気の逃げ道を確保することができます。
寝る際の姿勢は、あおむけ寝がよいそうです。睡眠時無呼吸症候群では横向き寝が推奨されますが、横向き寝は顔が同じ方向ばかりを向くようになり、鼻中隔湾曲症の発症や歯並びの悪化の原因になるとしています。
鼻炎などで鼻が詰まる場合でも大丈夫なのか伺ってみたところ、鼻呼吸の癖をつければ鼻が通るようになるので、寝る前に短時間、マウステーピングを試して慣れるとよいとのこと。鼻炎がひどい場合は抗アレルギー薬を服用したり鼻炎用スプレーを使ったり、頬骨のマッサージ、鼻うがいが有効。心配な場合は小さい面積で貼ってすぐにはがせるようにすれば、心理的な負担が少ないというアドバイスも。
「あいうべ体操」で舌の位置を正しく
今井先生は、鼻呼吸を習慣づける方法として「あいうべ体操」を提唱しています。声は出しても出さなくてもよく、「あー」「いー」「うー」「べー」と口を大きく動かすという体操。口周りの筋肉を強化して舌を上あごの正しい位置に保つことで、口がポカンと開いてしまうことを防ぎます。1日30回ほどを目安に続けることで、3週間ほどで変化を感じる方もいるそうです。
「インフルや風邪ってすごく無駄ですよね」と今井先生。「仕事に穴を開けるとか病院に行かざるを得ないとか、余計な出費がかかる。病気ってコスパもタイパも悪いんですよ。薬を出すのは二の次、三の次で、病気にならないようにするのが医者の一番の役目だと思います」と、予防の重要性を語ります。日中や睡眠中に口呼吸をしている自覚がある方は、マウステーピングや「あいうべ体操」で鼻呼吸の習慣を取り戻してみてはいかがでしょうか。
今井一彰プロフィール
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
著書に「あいうべ体操 舌を鍛えれば病気にならない――不調の7割は口呼吸が原因?」「世界一簡単な驚きの健康法 マウステーピング」など
ウェブサイト: https://getnews.jp/
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