年間150件の手術をこなす凄腕心臓血管外科医が語る「信頼できる外科医」との出会い方
日本人の死因の第2位である「心疾患」は、2004年に15万9000人だったものが、2024年では22万6000人と4割も増加する結果となっています。
心疾患は循環器医、脳血管疾患は神経内科医などが主治医となりますが、手術となると心臓血管外科医、脳神経外科医が担当することに。
この手術を安心して任せることができる外科医と出会うためには、どうすればよいのでしょうか。
今回は、救急医療と外科手術に定評がある総合東京病院院長の渡邉貞義先生と、同病院に所属し年間150件の心臓血管手術を行う凄腕の心臓血管外科医である前場覚先生が、信頼できる外科医に出会うためにできることについて解説してくれました。
安心して手術を任せられる外科医と出会うためには何をすればいい?
手術は予定された「待機手術」と、日常生活の中で急遽具合が悪くなり、搬送先で手術を行う「緊急手術」の2種類が存在します。

緊急手術の場合、救急搬送先の病院の外科医に全てを任せなければなりません。
世間ではこれを「お医者さんガチャ」とも呼ぶことがあり、手術に立ち会う外科医の「アタリ」「ハズレ」で運命が分かれる不安を表現しています。
自分や家族がこの「お医者さんガチャ」でハズレを引いてしまわないためにはどうすればよいのかについて、渡邉先生は、

「外科医と直接外来で出会うことはあまりありませんが、たとえ緊急時でも外科医を選ぶことは可能です。信頼のおける外科医が所属する病院、またはそのグループクリニックに日頃からかかっておく、気になる症状がなければ脳ドックや心臓ドックなどの人間ドックを受けておくといいでしょう。50歳を過ぎたら、年に1回は人間ドックを受けることをオススメします。心臓や脳に疾患がある方は、緊急時のために診察券を持ち歩く、病院名や担当医のメモを名刺入れなどに入れておく、家族や周囲の人にあらかじめ伝えておくのもいいかもしれません。」
と解説し、信頼できる病院への搬送ができるよう日頃から気をつけておくことが重要だと語りました。
手術データや手術数などをネットで確認しよう
信頼できる外科医を患者側から選ぶためにはどうすればよいのかについて、前場先生は、

「まずは患者さんが指標にできる情報として、手術データがあります。手術データを公開していないところは除外しましょう。さらに、手術数だけでなく周術期合併症を公開しているかどうかも大切です。医療行為に100%はありえません。手術の安全性を伝える上で、正直に伝えることが大切だと考えています。データの全体を読み解いて、判断することがポイントです。」
と解説。
この手術データは「病院のHP」「医師個人のHP」などで確認することが可能であることも教えてくれました。
チェックすべきポイントはコンスタントに一定以上の「手術数」を維持しているかどうか、症例は多岐にわたるか、そして死亡数や周術期合併症を公開していることなど。
これらを総合的に確認し、信頼できる外科医かどうかをチェックしましょう。
「院内の評判」「外科医の人間性」も重要な見極めポイント
信頼できる外科医かどうかについては「院内スタッフからの評判」を探ることも大切なポイント。
「手術手技そのものは成功して当たり前、術後経過や予後まで含めた外科治療が大切です。私は患者さんの体に負担が少ない低侵襲治療にこだわっています。ですから、小開胸手術を導入し、術後3~4日後退院を実現、お仕事をされている方などは早期職場復帰を目指していただきます。」
前場先生は、一人の医師が行う手術数としては非常に多い年間150件の手術を行っています。
他の施設での勤務経験がある看護師は、前場先生が担当した手術の術後経過の良好さに驚きを隠せないと話しており、特に術後管理の素晴らしさを実感しているのだとか。
こういった評判・説明は病院側から発信することは困難なほか、当然インターネットや各種報道などで紹介されることもほとんどありません。
事前調査で気になる外科医を見つけたら、院内の評判なども調査することが信頼できる外科医選びにつながるでしょう。
また、その評判の中には当然「外科医の人間性」という点も重要。
「コミュニケーション力は、患者さんが判断しやすい医師の資質です。私の場合は、ビデオを見ながら丁寧に1時間程度かけて手術の説明を行っています。」
前場先生は視覚的にわかりやすいビデオを使うことで、患者が理解し、自分の体でどのようなことが起こるのかをイメージして手術に臨むことができるよう、時間をかけてしっかりと事前説明を尽くしていると語りました。
医師の資質は患者側からは見えにくい部分であるものの、報道や公開されている情報を基に人間性を探っていくことが大切です。
【前場先生が教える外科医が持ち合わせるべき資質10選】
・コミュニケーション力
・集中力の耐久性
・知識と技術の向上心
・プレッシャー耐性
・リーダーシップ
・高い倫理観
・伝承力
・説明責任能力
・得意淡然失意泰然
・深い教養と美意識
優秀な循環器医を見つけることが優秀な心臓外科医発見の近道に
「心臓血管病の主役診療科は実は循環器科です。多くの循環器病の治療は循環器科で完遂しています。一方で、優秀な循環器医ほど、心臓血管手術の利点・欠点をよく理解し、優秀な心臓血管外科医と連携しています。」
と前場先生が語るように、優秀な医師同士はお互いに連携を取り合っていることが多いそう。
優秀な循環器医を見極める方法については、
「“手術する方法としない方法がありますが、どちらになさいますか?”といった無責任な説明を行う医師には注意が必要です。“手術は大変ですが、長期的にみて手術を受けた方がいいでしょう”、といった根拠に基づいた明確な説明を行う医師は優秀と考えてよいでしょう。」
と見極めのポイントを解説。
信頼できる循環器医が紹介する心臓血管外科医も、優秀で信頼できる可能性が高いと判断して良さそうです。
また紹介状にも医師の資質が現れるそう。
「紹介状はとても重要な医療データです。優秀な循環器医から受け取る紹介状は、わかりやすく丁寧に書かれています。また私自身、患者さんがセカンドオピニオンを希望される場合や、他施設での手術を希望される場合は、できるだけ詳細に丁寧に紹介状を書いています。ただし、紹介先は私が選ぶこともあります。心臓血管外科医は絶滅危惧種といわれ、優秀な人材が限られています。患者さんには見えない、外科医同士でないとわからない技術の差というものが、どうしても存在してしまうのです。心臓血管手術は死に直結します。患者さんの命を守るために、私の場合は優秀な外科医を紹介しています。」
前場先生も実際に丁寧に紹介状を執筆していると教えてくれました。
「自らどうすることもできない“深刻な疾患”、これは理不尽です。このような理不尽にさらされた方が手術を余儀なくされ、立ち向かわれたその勇気に敬意を表して日々診療を行っています。ご自身にふりかかったこの理不尽を受け止め、私と一緒に心臓血管病に対峙していただきたい、きっとお役に立てると信じています」
日常的に遠方からもセカンドオピニオンの依頼で患者が訪れるという前場先生は「深刻な疾患は差別、暴力、災害などと同様な“理不尽”である」と表現しています。
「お医者さんガチャ」にハズレてしまい、さらなる理不尽に見舞われないためにも、外科医選びを慎重に行い、信頼できる先生を見つけておくようにしましょう。
●渡邉貞義(わたなべ さだよし)先生
医療法人財団健貢会 最高執行責任者。総合東京病院 院長。
「すべては患者さんのために」を病院理念として掲げ、医療機器・設備、診療体制、人材の確保・育成、地域との連携に努める。救急医療においては、24時間365日切れ目のない体制を敷き、横断的な診療科のバックアップ、救急救命士の登用などを積極的に行い、今年東京消防庁から感謝状を授与。
●前場覚(まえば さとる)先生
心臓血管外科医。1996年山梨医科大学医学部卒業、広島大学医学部第一外科入局、厚生連広島総合病院 心臓血管外科、クアラルンプル国立心臓病センター 胸部心臓外科などを経て、総合東京病院に勤務。
自身のHPにて執刀手術件数などを公表。
凄腕心臓血管外科として評判を呼び、遠方からも手術を求めて患者が訪れる。
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