ファンタジーホラー『男神』遠藤雄弥インタビュー「どこか童心に戻れるようなストーリーが魅力的」

『辰巳』『ONODA 一万夜を越えて』で鮮烈なインパクトを残した遠藤雄弥を主演、『ソローキンの見た桜』の井上雅貴監督による映画『男神』が全国公開中です。

本作の原案「男神」は、2020年、「日本(美濃・飛騨等)から世界へ!映像企画」にて入選し、YouTube 超人気サイト「怖い話怪談朗読」にて朗読され、「今までで一番怖い話」と一躍注目を浴びた話題作。視聴者からの映像化への熱い期待を受け、オリジナルストーリーで撮影地となる日進市の協力により、映画化が実現。

全国各地で母と子の失踪事件が相次ぐなか、ある日、新興住宅地の建設現 場に正体不明の深い「穴」が発生する。時を同じくして、そこで働く和田(遠藤雄弥)の息子も忽然と姿を消してしまう。その「穴」の先は不思議な森に繋がり、そこでは巫女たちが「男神」を鎮めるため異様な儀式を行っていた。息子がそこに迷い込んだ事を知った和田は、その穴に入っていくが・・・。主演の遠藤雄弥さんに撮影の思い出や作品の魅力についてお話を伺いました。

――本作とても楽しく拝見させていただきました。遠藤さんご自身は普段怖い話をよくご覧になったりしますか?

普段はあまり見たり読んだりしないのですが、本作の原作となっている「男神」の朗読をYouTubeで聴きました。めちゃめちゃ怖かったです。その原作の怖さを残しながら、井上監督が書き上げた脚本は、ファンタジーや家族愛や冒険という要素が入りとても豊かなシナリオだったことも素敵だなと思いました。

――おっしゃるとおり、ホラー要素もありながら、日本の伝統や家族愛など様々なモチーフが絡み合っていましたよね。

日本の歴史や古来より伝わる儀式という原作からのモチーフがありつつも、映画にしかないファンタジックな要素や家族愛もふんだんに盛り込まれていて。脚本を読んだ時に、宮崎駿監督の映画『君たちはどう生きるか』(2023)が思い浮かんだんです。不思議なお話だけれど、どこか童心に戻れるようなストーリーが魅力的だなと思いました。

――子供の時の、怖いのになぜか惹かれてしまう…という様なワクワク感もありますね。

そうなんですよね。僕は大長編『ドラえもん』シリーズが好きなのですが、『ドラえもん のび太の創世日記』(1995)の様な、その場所には何があるのだろう…?という探究心を掻き立てられる作品だと思いますので、ぜひ怖がらずに劇場に足を運んでいただきたいです。

――人間が因習に歯向かっている所がアツいなあと思いました。

映画の中で、僕が演じる和田が息子と妻を探しに行きますが、冒険映画の側面もありますよね。妻に対しても息子に対しても強い愛情を持っている男で、監督からは、「愛が深すぎるが故の狂気を出してほしい」と言われました。愛があるから嫉妬心が生まれる。序盤はその狂気を、カトウシンスケさん演じる木曽田との対立構図で見せています。

――和田というキャラクターが、完璧ではなくて間違えたりする所が人間らしいですよね。遠藤さんのお芝居がまた葛藤に深みを与えているなと感じました。

ありがとうございます。映画のクライマックスで「お前は自分のことしか考えていないだろう?」と言った感じで責められますが、あの問いって難しいですよね。家族を愛しているから帰ってきて欲しいというのは本心だけれど、それって自分のためなのかな?とか、それじゃダメなのかな?と自問自答してしまう。観ている方も一緒になって考えてくれるのではないかなと思います。

――映像も独特の美しさを感じました。日本の田舎の狭い世界を描いているのに海外のアート映画を観ている様な部分もあって。

井上監督がこれまで海外のクリエイターと多くお仕事をされてきたこともあって、撮影の現場のスタイルがすごくオープンだなと感じました。監督ご自身もご家族を現場に連れてきたり、アットホームな雰囲気の中で撮影していて。縄文時代から続く風習が出てくる作品なので、撮影現場も縄文時代からある場所を使わせていただいたり、細部へもこだわって撮影しています。日本の歴史やルーツを描きながら、それだけに囚われない撮影の仕方をしていますので、海外の映画ファンの方にも楽しんでいただける世界観なのかなと。

――“儀式”での走るシーンがもの凄かったですね…!

大変でした(笑)。撮影の前に、「遠藤さんには全力で何本も走ってもらいます」と言われていたので、覚悟を持って臨みました。撮影では、結界の中で加藤雅也さん演じる山伏が祈祷をしていて、物凄い迫力の中で走ることが出来て。役柄を超えて、必死に走り続けていました。

――その熱気が伝わってきて、観ている私までヘトヘトになる様な、本当に凄いシーンでした。

加藤雅也さんの熱気もそうですし、監督、スタッフの皆さんが最高のシーンになる様に環境を整えてくださり全力を尽くすことが出来ました。映画は自分1人の力ではどうにもならないなと、様々な作品に参加する度に感じます。こうやって取材していただいり、宣伝をしていただいて、皆さんに観ていただいて映画が完成するので、感謝の気持ちを忘れずに取り組んでいきたいです。

――今日は素敵なお話をありがとうございました!

撮影:たむらとも

<STORY>
全国各地で母と子の失踪事件が相次ぐなか、ある日、新興住宅地の建設現場に正体不明の深い「穴」が発生する。時を同じくして、そこで働く和田の息子も忽然と姿を消してしまう。その「穴」の先は不思議な森に繋がり、そこでは巫女たちが「男神」を鎮めるため異様な
儀式を行っていた。息子がそこに迷い込んだ事を知った和田は、その穴に入っていくが・・・。「決して入ってはいけない」と語り継がれる穴に、禁忌を破り息子を助けにいったことにより起きる得体のしれない恐怖と狂気、家族の悲劇を描くファンタジーホラー。

<CAST・STAFF>
遠藤雄弥
彩凪翔 岩橋玄樹 須田亜香里 カトウシンスケ
沢田亜矢子 加藤雅也(特別出演) 山本修夢 塚尾桜雅 アナスタシア すずき敬子 大手忍
チャールズ・グラバー 藤野詩音 齋藤守 清水由紀(友情出演) 永倉大輔(友情出演)
監督・脚本:井上雅貴 原案:「男神」(八木商店)
エグゼクティブプロデューサー 志賀司
プロデューサー 益田祐美子 羽田文彦
制作プロダクション 平成プロジェクト・INOUE VISUAL DESIGN・セレモニー
製作 平成プロジェクト セレモニー TBS グロウディア 山本工務店 名古屋テレビネクスト
三晃社 エクサインターナショナル Samplesdl 中日本興業
ロケ地:愛知県日進市、岐阜県下呂市 協力:高山市、飛騨・高山観光コンベンション協会
支援:日進市企業ふるさと納税 下呂市ふるさと文化振興助成金
協賛:マテラ化粧品 ワンダーランド そうび社 龍の瞳 イオス コーポレーション 題字:小林芙蓉
2025 年/日本/93 分/カラー/シネスコ/5.1ch
配給:平成プロダクション/配給協力:東京テアトル
©2025「男神」製作委員会

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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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