【連載はじめます】「web3って、結局なんなの?」銀行員がAI先生と本気で考えてみた。#0 プロローグ

「NFT(エヌエフティー)」「メタバース」「web3(ウェブスリー)」……。最近、ニュースやSNSで毎日のように見かけるこれらの言葉たち。なんとなく「未来のテクノロジーですごそう!」という雰囲気は伝わってくるのですが、「で、結局なんなの?」「私たちの生活とどう関係があるの?」と、正直よくわからない……と感じている方も多いのではないでしょうか。

この記事は、そんな「?」で頭がいっぱいのあなた(と銀行員の私)のために、AI先生に扮したみんなの銀行Web3.0開発グループリーダーの渋谷さんに教えてもらいながら、書いていきます。

難しい専門用語はなるべく使わず、身近なたとえ話をたくさん使いながら、「web3」という、これからのインターネットの世界観を解き明かしていきます。この記事を読み終える頃には、きっと「なるほど、そういうことか!」と、少しスッキリしていただけるはずです。

皆さんの未来のお金や社会のあり方にも関わる、とても大切なお話です。ぜひ、リラックスして読み進めてみてください。

STEP1:タイムスリップ!インターネットの歴史を「たとえ話」で振り返ろう

「web3」を理解するための最初のステップは、私たちが今使っているインターネットがどのように進化してきたかを知ることです。少しだけ、インターネットの歴史をタイムスリップしてみましょう。

図:web1.0~web2.0の変遷(出典:総務省「情報通信白書令和5年版」図表1-2-2-1)

web1.0時代:「見るだけ」のインターネット(1990年代〜2000年代初頭)

インターネットが世の中に登場したばかりの頃を思い出してみてください。ホームページはありましたが、ほとんどの人は情報を見るだけ。まるで、「駅前の大きな伝言板(←Z世代は知らないかも!?)」や「お店のチラシ」のようなものでした。

企業や専門家が発信した情報を、私たちは一方的に「読む」「見る」だけ。情報を発信するのはとても難しく、私たち一般ユーザーは、もっぱら情報の受け手でした。これが「web1.0」の世界です。

web2.0時代:「参加する」インターネット (2000年代中頃〜現在)←今ココ!

その後、SNSやブログ、動画投稿サイトなどが登場し、インターネットは激変します。誰でも簡単に情報を発信し、写真や動画を共有し、「いいね!」やコメントで世界中の人々と交流できるようになりました。

これはまるで、「みんなで自由に書き込める、巨大な共有ノート」を手に入れたようなものです。私たちはこのノートの上で、日記を書き、友達と語り合い、ビジネスを始めることさえできるようになりました。

とても便利で、楽しい世界ですよね。これが、私たちが今まさに生きている「web2.0」の世界です。

web2.0が抱える「小さな問題」――その「共有ノート」は、誰のもの?

この「みんなで使える共有ノート」は、私たちの生活を豊かにしてくれました。しかし、ここで一つ、大切な質問があります。

「その便利な共有ノートは、一体誰が管理しているのでしょうか?」

そうです。そのノートを管理しているのは、SNSや検索エンジンを提供している、特定の巨大なIT企業です。私たちが書いた日記や投稿した写真、友人とのやり取りといった大切な「データ」はすべて、その企業のコンピュータ(サーバー)の中に保存されています。

私たちはノートを「使わせてもらっている」だけです。もちろん、私たちが書いた文章や投稿した写真の「著作権」は私たち自身にあります。しかし、そのデータが保存されている場所(サーバー)や、サービス全体のルールを決める権利はプラットフォーム側が持っています。

これを「賃貸マンション」にたとえてみると、より分かりやすいかもしれません。

私たちが投稿する日記や写真は、部屋に置く「自分の家具や私物」(=データの中身)です。これは間違いなく私たちのものですよね。しかし、その家具を置いている「部屋そのもの」(=プラットフォーム)は、大家さん(運営企業)から借りているに過ぎません。

私たちは家具を自由に配置できますが、部屋そのものを自分のものにしたり、売ったりすることはできません。もし大家さん(運営企業)の都合で、「来月から利用ルールを変更します」と告げられたり、最悪の場合「残念ながら、事業判断によりサービスの提供を終了します」と決められてしまったら、どうなるでしょうか。

私たちはその決定を受け入れ、大切な家具(データ)を別の場所に引っ越さなければならなくなります。

つまり、私たちは自分の大切なデータ(私物)を、プラットフォームから「場所を借りて」置かせてもらっているに過ぎない。これが、web2が抱える構造的な問題でした。

STEP2:「所有する」インターネット、web3へようこそ!

そこで登場したのが、新しい未来のビジョン、「web3」です。

「場所を借りる」から「自分の家(資産)を所有する」へ。これこそがweb3の変化

先ほどのマンションのたとえを思い出してください。web2.0が、自分の大切な家具(データ)を置くための「場所を借りる」インターネットだったのに対し、web3は、建物や土地そのものを自分で「所有する」インターネットだと言えます。

この「家を持つ」という直感的な感覚を、より正確に、そして法的な権利も含めて表現する言葉が「所有」です。不動産に「登記」があるように、デジタルな世界でも「これはあなたのものです」と証明できる仕組みが生まれているのです。

つまり、単に利用する(借りる)だけでなく、自分の資産としてデータやアカウントを「所有」する。これがweb3がもたらす最も大きな変化なのです。

「でも、デジタルな世界でどうやって『自分の家』を所有できるの?」と思いますよね。

現実の世界で家の所有権を証明するのが「登記」であるように、デジタルの世界でそれを可能にするのが、web3の根幹を支える「ブロックチェーン」という技術です。

図:web3の特徴(出典:総務省「情報通信白書令和5年版」図表3-1-1-1)

【たとえ話】ブロックチェーンは「極めて改ざんが困難な“魔法のノート”」

ブロックチェーンの技術を分かりやすく表現するため、「世界中の人たちがみんなで監視しあっている、極めて改ざんが困難な “魔法のノート”」というたとえ話がよく使われます。

web2.0の「一企業が管理するノート」とは違い、この魔法のノートは参加者全員で同じものを共有しています。そのため、特定の誰かが自分に都合よく情報を書き換えようとしても、他の大多数の記録と食い違うため不正がすぐに発覚し、無効になります。

このように、誰もが信頼できる記録によって「所有権」が証明されるのです。では、この魔法のノートの仕組みを、もう少し詳しく見てみましょう。

1.取引が記録される
AさんがBさんに「100円を送った」という取引をしたとします。その記録が、まずノートの1ページに書き込まれます。

2.記録がみんなに共有される
その記録が書き込まれた瞬間、その情報が暗号化され、ネットワークに参加している世界中の人たちのコンピュータにコピーされて共有されます。つまり、参加者全員が、まったく同じ内容のノートを持っている状態になるのです。

3.ズルができない仕組み(ズルをしても、すぐにバレる仕組み)
ここで、もし悪いCさんが「Aさんは自分(Cさん)に1,000円送ってきたことにしよう」と、自分の手元にあるノートの内容を不正に書き換えたとします。

どうなるでしょうか?

Cさんのノートだけ、他の参加者全員が持っているノートの記録と内容が食い違ってしまいます。すると、ネットワークは「その記録は大多数と違うから嘘だ!」と自動的に判断し、Cさんの不正な書き込みを無効にしてしまいます。

このように、みんなで同じ記録を監視しあうことで、誰か一人の力でデータを改ざんしたり、嘘をついたりすることが、極めて困難になっているのです。

この「魔法のノート=ブロックチェーン」のすごいところは、銀行や国、大企業といった「中央の管理人」が存在しなくても、参加者同士が取引の正しさを検証し合うことで、ネットワーク全体の信頼性が保たれる点にあります。これが、web3が「非中央集権的」と言われる理由です。

図:従来型の中央一元管理とブロックチェーンによる分散管理のイメージ(出典:総務省「情報通信白書平成30年版」図表3-3-3-1)

STEP3:魔法のノートの上で、いったい何ができるの?

さて、この「中央の管理者がいなくても信頼できる、極めて改ざんが困難なノート」があることで、どんな新しいことが可能になるのでしょうか?

ここで、よく聞くあの言葉たちが登場します。

1. 暗号資産(仮想通貨):銀行を介さず個人間で送れる価値

「魔法のノート」に記録された、デジタルなお金のことです。ビットコインやイーサリアムといった名前を聞いたことがあるかもしれません。

ノートに「Aさんは1ビットコインを持っている」と記録され、その事実が世界中の参加者によって承認されている状態です。

銀行のような仲介者を介さずに、個人から個人へ、国境を越えて直接お金(のような価値)を送ることができるのが特徴です。これにより、これまで送金が難しかった国や地域へも、インターネットさえあれば価値を届けられる可能性が生まれます。

2. NFT:デジタルデータに「本物」の証明書を

そして、注目を集めているひとつにNFTがあります。NFTとは「魔法のノート」に記録された、「世界に一つだけのデジタルアイテムの所有証明書」のことです。

これまでは、インターネット上の画像や音楽などのデジタルデータは、簡単にコピー(複製)できてしまうため、「本物」と「コピー」の区別がなく、「所有」するという概念がありませんでした。

しかし、ブロックチェーン技術を使うことで、あるデジタルデータに対して、「これがオリジナルであり、現在の所有者はあなたです」という鑑定書(所有証明書)を付けることができるようになりました。この鑑定書こそがNFTです。

たとえば、あるデジタルアートにNFTが紐づけられると、そのアートの作者や、これまでの所有者の履歴、そして現在の所有者が誰なのかが「魔法のノート」にすべて記録されます。この記録は誰にも改ざんできません。

これにより、デジタルデータに、まるで現実世界の美術品のような「一点物」としての価値と、「所有権」が生まれたのです。これが、NFTが革命的だと言われる所以です。

まとめ:これからの「お金」と社会の話をしよう

ここまでを一度、整理してみます。

・web2.0(現在)←今ココ!
便利なサービスと引き換えに、私たちのデータは巨大企業が管理する「借り物」だった。

・web3.0(未来)
ブロックチェーン技術によって、データを個人が「所有」できる新しいインターネットのかたち。その上で、暗号資産やNFTといった新しい価値が生まれている。

なぜ、私たち銀行が「web3」の話をするのか?

「なるほど、web3の可能性はわかった。でも、なぜ銀行がこんな話をするの?」きっと、あなたはそう思われたことでしょう。

web3は、これまでの社会の仕組みを大きく変える可能性を秘めています。特に、お金や資産の「カタチ」や「持ち方」、「送り方」を根本から変えてしまうかもしれないのです。

それは、お客さまの大切な資産をお預かりし、日々の決済を支える私たち銀行にとっても、決して無関係ではありません。

「みんなに価値あるつながりを。」をミッションに掲げる私たちは、これから訪れる「新しい金融の未来」を、一方的にお届けするのではなく、お客さまである「みんな」と一緒に学び、考えていきたい。そして、誰もが安心して新しいテクノロジーの恩恵を受けられるようなサービスをつくっていきたい。

そんな思いから、記事での情報発信を始めることにしました。

次回予告:web3世界のパスポート「ウォレット」とは

web3の世界観、少しだけイメージが湧いてきましたでしょうか? さて、この新しいインターネットの世界に足を踏み入れるには、具体的に何が必要なのでしょうか?

そこには「ウォレット」(※)という、とても大切なキーワードがあります。web3の世界の「入口」であり、「お財布」や「身分証明書」の役割を果たす、とても重要なツールです。

※「ウォレット」と聞くと、みんなの銀行「Wallet」を思い出す方もいるかもしれませんが、この2つは似ているだけで全くの別物です。みんなの銀行「Wallet」は銀行サービスで、日常的なお金の出し入れ(支払い・振込・入出金)を行うための普通預金口座のことです。

では、そのweb3世界の「お財布(ウォレット)」には、何を入れておくのでしょう? 先ほどご紹介したビットコインなどの「暗号資産」でしょうか? もちろんそれも一つの答えですが、「価格の変動が激しくて、日常の買い物に使うのは少し不安……」と感じる方もいるかもしれません。

そこで今、注目されているのが「ステーブルコイン」という、もう一つのデジタルなお金です。

「ステーブルコイン」って何? それも暗号資産なの? 私たちが普段使っている法定通貨(円やドルなど)とはどう違うのでしょうか?

この「ウォレット」を使いこなし、「ステーブルコイン」のような新しいお金のカタチを理解すること。それが、未来の金融サービスを体験するための、次なるステップになります。

いよいよ次回から本編がスタートします。AI先生に扮したWeb3.0開発グループリーダーの渋谷さんと一緒に、web3世界のパスポートとも言える「ウォレット」の基本から、そして「ステーブルコイン」の正体まで、さらに一歩踏み込んで学んでいきましょう。

<次回、2025年9月公開予定>

※この記事はオウンドメディア『みんなの銀行 公式note』からの転載です。

(執筆者: みんなの銀行)

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