水分不足が疲労回復を阻む理由と効果的な水の飲み方

水分不足が疲労回復を阻む理由と効果的な水の飲み方
「疲労回復」するために、食事や睡眠、マッサージなど様々な方法が試されますが、実はその土台にあるのが「水分補給」です。水を摂取しない限り、疲労回復の仕組みは機能しません。これは単なる喉の渇きを潤すという話ではなく、体の中で回復の“土台”として水が果たしている役割によるものです。

水が不足すると血液が粘性を増し、流れが悪くなります。本来、血液は酸素や栄養を運び、同時に老廃物を回収する重要な輸送路です。水が足りないでその流れが鈍ると、細胞に必要なものが届かず、いらないものが停滞し、疲労が慢性化します。まるでゴミ収集車が来なくなった街のように、細胞の周囲が“汚れて”しまうのです。

筋肉や脳が活動することで生まれる「代謝のゴミ」を外に出すためにも、水は不可欠です。腎臓や肝臓は水があることでろ過や解毒など、本来の機能を発揮します。水が足りないと、この“掃除”が滞り、疲労物質や老廃物が体内にとどまり続けるため、疲れが抜けない状態が続いてしまいます。

また、水分不足は自律神経にも影響を与えます。特に交感神経が優位になりやすく、副交感神経への切り替えがうまくいかなくなると、体は過度な緊張状態のまま、休息しても十分に回復できません。これが疲れの慢性化や不調の原因になります。
このように、水はただ喉の渇きを癒すだけでなく、体内環境全体を調整し、疲労を外へ出すための流れを握ってます。特に、血の材料、体温調節、ホルモンバランス、免疫機能の安定といった、健康維持に欠かせない機能にも関与しているため、日常的に不足させないことが重要です。

水なら何でもいいのかという疑問も多いですが、一般的には軟水が体にやさしく、日本人の体質に合っています。水道水や市販のミネラルウォーター、白湯など、成分が安定したものをこまめに摂ることが基本です。硬水はミネラルが多く含まれている一方で、日本人は胃腸に負担を感じる人もいます。冷たい水よりも、常温または白湯程度の温度が胃腸にやさしく、吸収もしやすいとされています。

では、水はどのタイミングでどのくらい飲めばいいのでしょうか。目安としては、1回150〜200mlを8〜10回に分けて、1日合計で1.5〜2.0リットル程度を飲むのが理想です。大切なのは、「喉が渇いたと感じる前に、こまめに飲む」ことです。朝起きたとき、運動の前後、入浴後や寝る前など、体内の水分が減りやすい時間帯に意識的に補給すると、疲れにくくなります。

ただし、すぐにトイレに行けない職場環境にある人にとっては、「水分をこまめに取る」ができません。そのような場合は、1回の水分量を100ml以下に抑え、間隔を少し空けながら摂ることで、体内の水分濃度を急激に変化させず、尿意を抑えながらも循環を保つことができます。また、白湯や常温の水は体を冷やしにくく、利尿作用が穏やかなため、選択肢として有効です。利尿作用の強いカフェインを含む飲料は避け、胃腸に負担をかけない形で調整することが、限られた環境でも実践できる疲労管理の一つになります。

一方、スポーツドリンクと水は似ているようで役割が異なります。スポーツドリンクは電解質や糖分が含まれており、発汗によって失われた塩分や水分をすばやく補給したい場面では有効です。特に炎天下の運動時や脱水が懸念される状況では、水よりも体内への吸収が早く、疲労軽減にもつながります。しかし、糖分が多く含まれるため、日常的な水分補給としては適さないことがあります。また熱中症を恐るあまり毎日糖分が入っていないからとスポーツドリンクを水より飲んでいる人もいますが疲労回復の目的であれば、主に常温の水や白湯で補い、スポーツドリンクは補助的に留めるのが理想的です。血の材料の水を優先して飲んでください。

疲れがたまりやすい人こそ「水が足りているか」を確認することが基本です。体は、水があってこそ血の材料が入り、巡り、整い、回復するように設計されています。水を適切にとること。それが、疲労からの確かな出口をつくるための第一歩です。

【参考文献】
藤田紘一郎『水の健康学』新潮社, 2000年.
石原結實『「白湯」健康法』マキノ出版, 2015年.

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