<フジロック’25出演>カトリエル&パコ・アモロソ、才能、友情、そして大胆さでラテン音楽の境界を打ち破るデュオ

By: Isabela Raygoza / 2025年4月30日 Billboard.com掲載
Photo: Toto Pons

 今日のラテン音楽シーンの主流はムジカ・ウルバナ、トロピカル・リズム、メキシコ地方音楽が主流だが、カトリエル&パコ・アモロソはまったく独自の道を切り開いている。派手なカリスマ性、卓越した音楽性、そしてジャンルを超えた大胆さを備えたアルゼンチンのデュオは、既存の枠組みに収まらない新たな芸術の波を象徴している。業界が既知のものを求める中、彼らは混沌と革新をもたらし、ラテン音楽の可能性の境界を押し広げている。

 彼らの急成長はまさに画期的なものと言える。先週、二人は米ニューヨークのバワリー・ボールルームで2日連続で完売の公演を行った。これは【コーチェラ】(米国)、【FUJI ROCK FESTIVAL】(日本)、【グラストンベリー】(英国)、【ロスキレ】(デンマーク)、【ロラパルーザ】(独ベルリン、仏パリ)などの世界的なフェスティバルを含む、60公演にわたる野心的なワールド・ツアーの一環だ。その数週間前には、アルゼンチン人アーティストとしては稀な快挙となる米人気番組『ザ・トゥナイト・ショー・スターリング・ジミー・ファロン』への出演を果たし、彼らのグローバルな影響力の拡大を証明した。

 だが彼らにとって名声は複雑さを伴うもので、その心情は、彼らの最新ミニ・アルバム『パポタ』とその1曲目「Impostor」(偽者)に凝縮されている。この楽曲は、彼らの急激な成功を皮肉を交えた歯に衣着せぬユーモアと生々しい感情で描いた作品で、一夜にしてアイコンとなることの非現実的なプレッシャーと向き合っている。6か月前に彼らを国際的な称賛へと押し上げた『タイニー・デスク』コンサートは、スペイン語アーティストのパフォーマンスとしては同チャンネルで最も視聴回数の多いものとなり(3,350万回)、彼らにとって名誉の証であると同時に、前述の曲で彼らが冗談めかして“sindrome de impostor”(インポスター症候群)と呼んでいるものの象徴ともなっている。

 カトリエルはビルボード・エスパニョールに対し、「世界のケツ(果て)からはるばるやってきた僕らは、こんなことになるなんて思ってもみませんでした」と、バワリー・ボールルームのバックステージで自身の南米のルーツに触れながら語り、「突然ここに現れて、こんなに多くのカメラとライトに囲まれるなんてどうかしてますよ。僕らはずっと(南)の方から来たので、まだここでの生活に慣れてません」と言う。とはいえ、ロックスターのエネルギーと混沌を融合させた堂々とした存在感は、彼らが十分に準備できていることを証明している。

 彼らの相性は仕事上だけのものではなく、個人的なものでもある。二人は6歳の時に出会い、似た名字(ゲレイロとゲリエロ)と教師が二人を兄弟と間違えたことから関係が始まった。その運命的な出会いは、好奇心、信頼、そして堂々とした風変わりさによって育まれた、生涯にわたる友情と芸術的なパートナーシップへと発展した。

 ブエノスアイレスで育った彼らの音楽的影響は、街と家庭の両方に由来している。カトリエルは、父親がギターを弾く姿を見て育ち、今ではフェンダーでジャジーでプログレッシブなリフを弾く完璧なギタリストになっている。「僕はマイケル・ジャクソンになりたかった。クイーンはバンド全員になりたかった」と彼は告白する。一方、パコ・アモロソは、自身が多大な影響を受けたPatricio Rey y sus Redonditos de Ricota(パトリシオ・レイ・イ・ス・レドンディトス・デ・リコタ)のようなアルゼンチンのロックのアイコンたちの海賊版コンピレーションに夢中だった。「何年間もあの18曲しか聴いていませんでした」とパコは回想し、「アルゼンチンのロックは、どちらかというと生き様みたいなものだと思っていて。あの連中みたいになりたかったんですよ、仕事に行きたくなかった。シャンパンを飲んでいたかった。ガキの頃ってそういうものが欲しいんです」と続けた。また、オランダのヴァイオリニスト、アンドレ・リュウにも言及し、「ヴァイオリンを弾きたかった。彼は完璧な巨匠です」と話している。

 彼らの初期のインスピレーションは、ジャンルを融合し、実験的な試みを積極的に取り入れる能力の基盤を築いた。「僕らはさまざまな段階を経るんです」とパコは説明する。“vicios diferentes(さまざまな悪癖)”だ。「ある時期はラップに没頭し、次は楽器演奏で。そうやって僕たちは始まりました。ゲームばかりして他のことは何もしなかった時期もありましたね。そして進化し続けるんです」と彼は付け加える。その夜バワリー・ボールルームで巧みに披露したような、ジャズの複雑なコード、ゴスペル風のボーカル、生楽器の演奏、電子リズムを融合させるこのデュオの卓越した革新性は、独自の境界を突破する存在へと彼らを押し上げた。

 カトリエル&パコ・アモロソはデュオとして有名になったが、そのキャリアはソロ活動への大胆な挑戦によっても特徴づけられている。2019年の「Ouke」や「Mi Sombra」などの楽曲でコラボし大ブレイクを果たした後、二人はパートナーシップを一時休止し、それぞれのプロジェクトに挑戦した。カトリエルのソロ・デビューは2枚のEPから始まり、ファンキーなグルーヴ、オールドスクールなヒップホップ、輝くシンセ、ローファイなミニマリズムを融合した、2022年の【ラテン・グラミー賞】にノミネートされたアルバム『エル・ディスコ』へと進化した。一方、パコ・アモロソは、2021年の陰鬱なアルバム『サエタ』で大胆なサウンド・テクスチャーを探求し、アルゼンチンのトラップとエレクトロニック・ミュージックの境界をさらに押し広げた。

 離れていた期間にもかかわらず彼らの絆は変わらず、2024年の『バーニョ・マリア』と最新ミニ・アルバム『パポタ』での魅力的な再会へと結実した。新たな時代を迎えた彼らは、友人として、そしてコラボレーターとして、それぞれの経験の豊かさと新たな創造のひらめきを身につけて再結集した。

 「Impostor」の内省的な内容と関連して前出の彼らの『タイニー・デスク』でのパフォーマンスは、ブエノスアイレス出身のアーティストとしてのアイデンティティを印象づけ、その独創的な芸術性を世界に向けて発信した重要な瞬間となった。このパフォーマンスはシリーズで最も成功した動画の一つとなり、ナタリア・ラフォルカデの7年前のパフォーマンスに匹敵する視聴回数を記録するとともに、彼らの生々しい複雑なサウンドを視聴者に紹介した。

2025年4月23日、米ニューヨークのバワリー・ボールルームで公演を行うカトリエル&パコ・アモロソ。

 彼らのタブーを破る派手なパフォーマンスは、ショーに演劇的な要素を加え、観客を魅了する。ステージ上では遊び心あふれる瞬間が散りばめられ、時には友情の象徴として二人が画面上でキスをする場面もある。このような非伝統的で境界を破る存在感が、彼らを単なるスターではなく、前衛ラテン音楽の先駆者としての地位に押し上げている。

 このことを最もよく表していたのは、カトリエル&パコ・アモロソが最後の曲で観客をステージに招き、マイクをファンに向けて歌詞を一緒に歌おうと誘った瞬間だった。カトリエルはこれを“Interaccion total”(完全な交流)と表現した。

 未来について尋ねられると二人は、「“Seguir estando vivos”――ただ生き続けること」と現実的な答えを返す。パコは笑いながら、「一部の人にとっては簡単かもしれません。でも他の人にとってはそう簡単じゃないんですよ」と補足する。これは、彼らの音楽に対するフィルターを通さないアプローチを反映した理念だ。新しい曲、ステージ、大胆な実験のたびに、彼らはその大胆なビジョンが単に境界を破るためだけのものではないことを証明している。それは彼らが創造する音楽を通じて、人生を全力で生きるということなのだ。

名前:カトリエルとウリセス
年齢:いずれも31歳
おすすめの楽曲:パコは「友情について歌っている」と、彼らのプロジェクトの本質を表しているとして「El Dia del Amigo」を推薦。一方、カトリエルは「引き出しの奥にしまっていた曲」と表現する「Mi Sombra」を、自分にとって意外なお気に入り曲として選んだ。
最大の成果:両者は、シンプルながらも深甚な成果について一致している。「生まれていて、まだ死んでいないこと」と、彼らは皮肉っぽい笑みを浮かべながら答えた。
今後の予定:米国、ラテン・アメリカ、欧州、アジアでの60公演のツアー、そして【コーチェラ】、【グラストンベリー・フェスティバル】、【ロラパルーザ】、【FUJI ROCK FESTIVAL】などの国際的なフェスティバルへの出演が予定されている。

◎公演情報
【FUJI ROCK FESTIVAL ’25】
期間:2025年7月25日(金)、26日(土)、27日(日)
会場:新潟県 湯沢町 苗場スキー場
※カトリエル&パコ・アモロソの出演は26日となります。
INFO:FUJI ROCK FESTIVAL
https://www.fujirockfestival.com/

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