やんごとなき謎解きイベントで皇居のパワーをチャージ(辛酸なめ子)

皇居東御苑は、一般の人にも解放されている自然豊かな庭園です。樹々に囲まれ、竹林や芝生の広場、果樹園など、都心とは思えないほどの自然を体感できます。その地でなんと謎解きイベント「皇居を巡る謎解きの旅 with QuizKnock」がスタートしました。謎といえば皇居や皇室そのものが謎めいていますが、このようなイベントが行われることに令和の開かれた皇室を感じます。
謎解きイベントは、令和7年3月18日から令和9年3月31日までの約2年間開催。3月17日はオープニングイベントがあり、抽選に応募したのですが即落選。でも、これまで皇居関係のイベントはたいてい往復はがきで応募だったのが、ネットで応募できたことに時代の流れを感じました。

気を取り直してイベントが始まってから友人と皇居を訪れました。入場無料で参加できるありがたいイベントです。平日だというのに大手門の前には列ができていました。こんなに謎解きが大人気だとは! と思ったら大部分はインバウンドで、入場待ちというより荷物検査の列でした。門をくぐると、立派な門の前の石の台に飲料水を置いてカフェみたいに使っている外国人がいるのが気になりました。クイズは日本語なので彼らは謎解きには参加しないと思われます。

約21万平米の広大な庭園に、謎解き看板が10か所設置されていて、一応サイトに地図はありますがわかりにくいので、歩きながら探しました。技術の進歩に驚いたのは、看板にスマホをかざすとNFCタグを読み取り、問題が書かれたサイトに自動接続すること。まさか宮内庁のサイトでNFCタグについての説明を目にすることになるとは。宮内庁のDX(デジタル・トランスフォーメーション)がめざましいです。

10個の謎を解くとパズルのピースが埋まって1枚の写真の完成形が現れる仕組みです。順番は決まっておらず、どの謎から解いても良いとのこと。最初に見つけた8番の謎からはじめたのですが、近くに「百人番所」という建物があったのでてっきりこの施設についての問題かと思ったら、とくに関係ありませんでした。
問題は四角の中に入る文字を少ないヒントで推理する内容で、謎解き慣れしている人なら解けそうです。謎解きがかなり久しぶりだったので、謎解きモードになるまで時間がかかりました。宮内庁のサイトには「皇室の方々のご活動や皇室に伝わる文化、皇居等に対する理解を深めていただくため」のイベントだと書かれていたのですが、問題も知的でやんごとない内容でした。ちなみに答えはもちろん、問題についても公開禁止とのこと。

行った日は桜も咲き、春の花が咲き乱れていて、謎解きだけではなく庭園も満喫できました。歩きながらパワースポットのエネルギーをチャージ。草むしりしている人々を見かけましたが、噂の勤労奉仕団の方々でしょうか。クイズには目もくれず、草むしりに専念していました。

中には難しくてなかなか解けない謎もあり、下の方に「答えを見る」ボタンがあって押したい衝動にかられましたが、なんとか答えをひねり出して入力。謎解き看板には「謎解きのネタバレ防止のためお話し声の大きさにもご注意ください」と書かれていましたが、謎がなかなか解けないときは他の人の会話を聞きたくなってしまいます。
実際「わかった、◯◯だ!」「△△だろ!」と答えを言ってしまう人も散見されました。答えまでいかなくても「これとこれをくっつければいいんだ」とかヒントをもらす人も。また、難易度の高い問題を見た瞬間「はい。これは余裕ですね!」と彼女ので言い放つ男性も……。「解けた! やばいよ俺、 QuizKnockなれるわ」とイキがる男子高生の発言が聞こえました。謎が解けたときのマウントのせめぎ合いの空気が、清らかなパワースポットで浄化されていきます。

皇居東御苑はアップダウンもあり、2時間以上歩き回ってかなりの運動量でした。夏は炎天下で謎解きに集中するあまり熱中症になる人が出ないと良いのですが……。友人と協力し合い、一応全問クリアしたのですが、巷のイベントのように何か記念品がもらえるということもなく、心の中で達成感に浸って終わりです。数時間の滞在で皇居の良いエネルギーを吸収できた、というのが一番の景品かもしれません。

(イラスト・文:辛酸なめ子)

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