標準的なお茶淹れが、かなりの重金属を除去することが判明!(彩恵りり)

水に含まれる汚染物の除去は、公衆衛生上の重大な問題となるよね。特に鉛などの重金属は、かなり少量であっても健康被害をもたらす恐れがあることから、特に関心が集まるよね。
ノースウェスタン大学のBenjamin Shindel氏などの研究チームは、世界中で親しまれている飲料である「お茶」について調べた結果、標準的な淹れ方で、重金属が効果的に除去されることを発見したよ! お茶の種類や挽き方は除去効果にあまり影響せず、淹れる時間に大きく影響することが分かったけど、数分間という標準的な淹れ方で十分な効果を発揮することも突き止めたよ。
もちろんこの研究は、明らかに汚染されている水でもお茶を通せば安全になるとか、そんなことは言ってないよ。また、お茶の金属吸着能力が、他のフィルター物質と比べて特に優れているわけでもないよ。ただ、お茶は世界で最も消費量の多い飲料であること、お茶を淹れる以外に特別なことをしなくて済むことが特別なんだよね。「お茶を飲むと健康になる」という研究結果の裏には、実はお茶の成分ではなく、お茶の重金属除去が貢献しているかもしれないよ。
水に含まれる「重金属」は公衆衛生上の課題
人間も生物である以上、どんな人でも水なしには生きることができないよね。このため、水に汚染物が含まれているかどうかは、どの地域・時代であっても健康問題の主軸であり続けることになるよ。
水中に含まれる無数の汚染物質の中でも、関心が高いものの1つが、鉛などの重金属になるよ。重金属は健康上の問題を引き起こすことが分かっている物質の1つで、身体に蓄積しうることから、安全な水を作る過程において、重金属濃度を低く抑えることは重要項目の1つなんだよね。
重金属の低濃度さの実現には、フィルターとなる物質を通すことで、金属原子そのものを吸着することで成立しているよ。金属原子の吸着は、物質の表面にくっ付いて離れない、という原理を利用する関係上、フィルターは表面がデコボコしている、体積当たりの表面積が大きな物質が使われているんだよね。活性炭やゼオライト (沸石) は、まさにこのような物質の1つだよ。
どのお茶も重金属吸着能力は高い
さて、Shindel氏らの研究チームが今回注目したのは「お茶」だよ。お茶は茶葉をお湯に浸し、成分を抽出することで成り立つ飲料だよね? この淹れる過程で、水に含まれる重金属が茶葉に吸着する可能性は十分にあるよね? 問題は、その効率となってくるよ。
そこでShindel氏らの研究チームは以下のような実験を行ったよ。前提となる重金属を含んだ水は、鉛、クロム、銅、亜鉛、カドミウムを含ませた上で、沸騰直前まで沸かしたものを用意したよ。茶葉を加えた後の淹れる時間は数秒から24時間まで幅広く取ったよ。
また、チャノキ (Camellia sinensis) の加工品である緑茶、紅茶、ウーロン茶、白茶などに加え、チャノキ以外の植物であるカモミールティーやルイボスティーなどでも試したんだよね。また、お茶がティーバッグに入っている事が多いことも踏まえ、綿製、セルロース製、ナイロン製などのティーバッグの吸着についても確認したよ。
その結果、様々なことが分かったよ。まず、お茶の種類や挽き方はさほど重金属の吸着に影響を与えなかったんだよね。細かく挽いた紅茶は最も多くの重金属を吸着したんだけど、他と比べて際立って多いというわけではないんだよね。

【▲図1: 走査型電子顕微鏡で撮影された紅茶の茶葉。表面に無数のシワや穴があることが、重金属吸着に大きな役割を渡していると考えられるよ。 (Image Credit: Vinayak P. Dravid Group (Northwestern University) ) 】
あまり違いが現れなかったのは、どの茶葉も加工の過程で似たような構造、つまり多数のシワや穴が生じる事と関連している、とShindel氏らは考えているよ。乾燥させる過程で細かい構造が多数生じることはどの茶葉でもさほど変わらないからね。結局のところ茶葉は、他のフィルターになる物質と同じく、表面積が増えたことによって重金属を吸着しているようなんだよね。
逆に、最も違いが現れたのは淹れる時間だよ。これは単純に、長ければ長いほど多くの重金属を吸着したんだよね。つまり、かなり長い時間をかけて抽出するアイスティーの類を作ると、かなり水中の重金属を除去してくれることが期待できるよ。ただ後述する通り、現実的な熱いお茶を淹れる時間である数分程度でも、かなりの量を吸収してくれる、ということも同時に分かったよ。
そして、ティーバッグ自体の重金属吸着については、綿とナイロンは対して吸収しないのに対し、セルロースはかなりの量を吸着することが分かったよ。これもやはり、綿やナイロンと比べて、セルロースの方が表面積が大きいからだと考えられるよ。
お茶を飲むと健康に良い理由はこれが理由?

【▲図2: 今回の研究結果を元に考察すると、1回の標準的なお茶淹れにより、水に含まれる鉛の約15%を吸着できると予測されるよ。 (Image Credit: 彩恵りり / いらすとやの画像を一部使用) 】
今回の研究結果を元に推定すると、ティーバッグ1個にマグカップ1杯分のお湯を注ぎ、3分から5分浸すと、水に含まれる鉛の約15%を除去できると考えられるよ。数分間淹れるというのは現実的な範囲なので、日常的なお茶淹れが水の中の重金属濃度を下げている可能性があるんだよね。
ただし、今回の研究はあくまで実験目的だったので、数分間淹れることによる鉛濃度の低下は10ppm (0.001%) に下がるまでしか追跡していないんだよね。10ppmは明らかに有毒な値なので、これだけだと意味がなさそうだけど、重金属の吸着は割合で起こると考えられるので、これよりずっと低濃度の鉛でも、数分で約15%という割合の除去は働くとShindel氏らは考えているよ。
もちろん、水の浄化が適切になされている地域では、そもそも水同士の重金属濃度がかなり抑えられているから、わざわざお茶を通さなくても安全な水が飲めるよ。逆に、明らかに汚染されている水が、お茶を通せば安全になるということももちろんないわけだから、お茶が浄水器に使われたり、水危機を救う手段になることもないと言えるよ。
しかし、お茶が世界で最も消費されている飲料であることを考えると、私たちの健康に影響を与えているかもしれない、とShindel氏らは考えているんだよね。お茶が健康に良い証拠は色んな研究で見つかっているけど、もしかするとその理由はお茶に含まれる成分ではなく、毎日少しずつ重金属の摂取を減らしているからかもしれないよ! この予想が正しいかどうかは、もっと研究してみないと分からないけどね。
(文/彩恵りり・サムネイル絵/島宮七月)
Image by congerdesign from Pixabay
<参考文献>
Benjamin Shindel, et al. “Brewing Clean Water: The Metal-Remediating Benefits of Tea Preparation”. ACS Food Science & Technology, 2025. DOI: 10.1021/acsfoodscitech.4c01030
Amanda Morris. (Feb 24, 2025) “Brewing tea removes lead from water”. Northwestern University.

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