【東京都台東区】大河ドラマ「べらぼう」関連施設が爆誕! 江戸と令和をタイムトリップ(辛酸なめ子)

江戸のメディア王、蔦屋重三郎(蔦重)をフィーチャーした大河ドラマ「べらぼう」が始まり、台東区が盛り上がっています。“蔦重の夢が息づく粋なまち”というキャッチフレーズもつけられ、いつの間にか名前を「蔦重」と訳すのも定着しているようです。

浅草の台東区民会館内に「台東区べらぼう 江戸たいとう 大河ドラマ館」も開館。施設名が妙に長いのが気になりますが、さっそく行ってみました。入館料は大人800円。訪れたのは祝日で、中に入ると結構混み合っていました。年齢層はやや高めで、和服姿や作務衣のおじさんもいて、江戸好きオーラを醸し出しています。「蕎麦の値段はニ八、十六文っていう説があるんだよね」と、江戸のうんちくを披露する紳士も。

大河ドラマの概要や、登場人物を紹介し、衣装や小道具を展示する、という構成。

横浜流星の大きな写真があちこちに展示されていて、絵に描かれた和風顔の蔦屋重三郎の記憶が上書きされそうです。キャストの写真とそれぞれの意気込みなどのパネルも展示されていました。

「版元考証」をつとめた大学教授、鈴木俊幸氏による「蔦重は、何がすごかったのか?」というパネル展示には、広告などの「戦略」を考えていた、ということや、自分の店に注目してもらう仕掛けを作っていた、などと書かれていました。

洗練を極めた「通」が集まる吉原で、自分の書店は最先端のスポットである、というブランディングにも成功。出版プロデュースから広告代理店みたいな仕事もしていたとは、生まれる時代が早すぎました。男性の興味をかき立てる吉原の案内本、吉原細見「細見鳴呼御江戸」を出すときには、当時人気だった平賀源内に序文を依頼した、というのにもやり手ぶりが表れています。

その、平賀源内を演じたのは安田顕。ドラマで着用した衣装や、平賀源内関連の小道具が展示されていました。

当時大ヒットした歯磨き粉「漱石香」は平賀源内が宣伝文句を考案。江戸時代のクリエイターは多才です。蔦屋重三郎の衣装の着物は藍色で知的な印象で、平賀源内の衣装はボロボロなのがおしゃれで、現代のダメージファッションに通じるものがあります。江戸の粋のセンスは古びません。

会場内でひときわ混み合っていたのが、ドラマのストーリーや現代の吉原について紹介するVTRコーナー。そんなにきわどい場面は出てこなかったですが、今も昔も吉原という街の注目度は高いです。

花魁の花の井を演じる小芝風花の華やかな衣装も展示。脚本の森下佳子氏のコメントには「吉原の女たちの身に起きているのは、勿論どうしようもなく悲劇です。子どものころに売られ、嫌でも男の相手をさせられ、最後は病気で死んでしまうかもしれない。だけどそんな時代の中で、自分ひとりの力だけで、したたかに商売しているのが吉原の遊女なんです」と書かれていました。

「しぶとくて、強い女を描こう」という思いで脚本を手がけたとか。吉原の光と影がバランスよく描かれているドラマです。その吉原で育ち、吉原をもっと良くしようと尽力していた蔦重。22歳で吉原大門前に書店を開いたのをきっかけに、江戸文化への影響を強めていきます。

館内には、その蔦重のお店を再現したコーナーがあり、フォトスポットになっていました。本が並び、茶碗もたくさん用意されていてお茶が飲めるようになっています。サードプレイス的なカフェの元祖かもしれません。セットですが、しばらく佇んでいたら蔦重の残留思念を感じ、出版もまだがんばれるかもしれない、という気力がわいてきました。

この 大河ドラマ館からは期間限定で無料の循環バスが出ていて(2026年1月12日まで)、蔦重ゆかりの地を回ることができます。(バス乗車には、 大河ドラマ館来館記念証提示が必要)蔦重の菩提寺である正法寺、平賀源内墓所といった渋いスポットも巡ります。

吉原大門の近くにオープンした、「江戸新吉原耕書堂」には、吉原の花魁の絵や、吉原細見、実際に花魁が履いていた太夫下駄なども展示。本物の醸し出す雰囲気に圧倒されました。

そして、バスの窓から現代の吉原の光景を眺めることができます。部外者は近寄りがたい吉原の歓楽街。無料案内所やお店をバスから垣間みて、江戸の吉原から時空をワープした感が。中央区や千代田区でも「べらぼう」関連の観光プロモーションをしているそうですが、台東区が最もディープでべらぼうな体験ができることは間違いありません。

「べらぼう 江戸たいとう 大河ドラマ館」

期間:2025年2月1日(土)~2026年1月12日(月・祝)
休館日:毎月第二月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
場所:台東区民会館9階(台東区花川戸2-6-5)

(イラスト・文:辛酸なめ子)

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