首都圏の2024年の住宅市場を総括。東京23区とその周辺で異なる動きも?

首都圏の2024年の住宅市場を総括。東京23区とその周辺で異なる動きも?

2025年に入って、2024年(年間)の住宅市場の動向が相次いで公表された。そこで今回は、不動産経済研究所と東京カンテイ、東日本レインズが公表したデータから、首都圏の新築・中古マンションと中古一戸建ての価格動向について見ていくことにしよう。

【今週の住活トピック】
「首都圏 新築分譲マンション市場動向2024年(年間のまとめ)」を公表/不動産経済研究所
「首都圏マンション 戸当たり価格と専有面積の中央値の推移 2024年」を公表/不動産経済研究所
「『中古マンション70m2価格推移』2024年(年間版)」を公表/東京カンテイ
「首都圏不動産流通市場の動向(2024年)」を公表/東日本不動産流通機構(東日本レインズ)

2024年の首都圏新築マンションの平均価格は23区を除き上昇

まず、2024年の新築マンション市場について、不動産経済研究所が公表したデータで見ていこう。

目につくのは、発売戸数の減少だ。首都圏全体で2万3003戸と前年より大きく減少した。特に東京23区が3割減と減少が著しい。ただし、同社では2025年の23区の発売戸数を2024年の45%増の1万2000戸と予測している。2024年の発売戸数減少は、人手不足による着工の遅れや事業計画の見直しなどの一時的な影響も考えられる。

不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向2024年のまとめ」のデータを筆者が抜粋して作成

不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向2024年のまとめ」のデータを筆者が抜粋して作成

一方、平均価格はどうだろう? 2024年の首都圏全体の平均価格は、7820万円で前年よりやや下がった。ただし、23区を除くすべてのエリアで平均価格は上昇しており、高値状態は継続している。なお、首都圏の億ションが前年(4174戸)から12.6%減の3648戸となり、この億ションの減少が23区の平均価格を押し下げたとも言えるだろう。

不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向2024年のまとめ」のデータを筆者が抜粋して作成

不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向2024年のまとめ」のデータを筆者が抜粋して作成

気になるのは、初月契約率だ。2024年は66.9%で、安全圏と言われる70%を切った。価格の高止まりなどが影響していると考えられる。

2024年の首都圏新築マンションの価格、中央値はいずれも上昇

発売戸数が減少していくと、特定の大規模マンションの価格が全体の平均価格に大きく影響するようになる。不動産経済研究所では、2024年(年間)の戸当たり価格の平均値と中央値をまとめたデータも公表している。

その結果を見ると、中央値、つまり価格を順番に並べた際の真ん中の値は、首都圏全体で6398万円となり、平均価格(7820万円)より下がる。それでも、対前年で4.9%上昇した。同様に、東京23区の中央値は8940万円で、対前年で9.0%上昇した。

不動産経済研究所「首都圏マンション 戸当たり価格の平均値と中央値の推移」のデータを筆者が抜粋して作成

不動産経済研究所「首都圏マンション 戸当たり価格の平均値と中央値の推移」のデータを筆者が抜粋して作成

同社は、「2023年は都心の超高額住戸の積極供給が目立ったものの、2024年には一服し、首都圏や23区の平均値は下落に転じていたが、中央値は上昇が続いていることから、人件費、資材費や用地の高騰などのコストアップの影響で、全体の価格は上がっていることがうかがえる」と見ている。

さらに、「2025年以降は都心やその周辺エリアでの高額物件、大規模タワーの供給が再び活発化することが見込まれることから、価格は中央値の上昇率以上に平均値の上昇率が大きくなる可能性が高い」という。

2024年の中古マンションの平均価格は東京都のみ続伸

では次に、2024年の中古マンション市場を見ていこう。東京カンテイでは、70m2に換算して平均価格を算出しているのが特徴だ。首都圏の中古マンションの平均価格(70m2換算)は、前年より1.1%減少の4747万円。2022年から横ばい傾向が続く。

東京カンテイ「『70m2あたりの中古マンション価格』2024年(年間版)」より抜粋して筆者が作成

東京カンテイ「『70m2あたりの中古マンション価格』2024年(年間版)」より抜粋して筆者が作成

ただし、東京都、特に23区では、依然として上昇が止まらない。東京カンテイによると、都心部(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、渋谷区)では20.2%上昇するなど、「国内外の富裕層や投資家からのニーズが高い都心部の上昇度合いは特出している」という。

首都圏の中古マンションと中古一戸建ての成約件数が増加し、平均価格も上昇

首都圏の中古住宅市場について、東日本レインズのデータでも見てみよう。

まず、中古マンションについて。東日本レインズと東京カンテイのデータには、東京カンテイが売り出し価格であり、70m2に換算して出した額であるのに対して、東日本レインズは成約した(契約に至った)物件の平均価格で、対象にワンルームマンションなども含んでいるといった違いがある。

首都圏の中古マンションの成約件数は、どのエリアでも増加している。新築マンションの供給戸数が減少しているのとは対照的だ。新築マンションの価格上昇が続くことから、消費者の中古マンションへの関心が高くなっていることがうかがえる。また、平均価格については、どのエリアも上昇している。

東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2024年)」より抜粋して筆者が作成

東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2024年)」より抜粋して筆者が作成

さきほどの東京カンテイのデータでは、東京都の周辺エリアでは平均価格が下がっていたので、東日本レインズの新規登録データ、つまり売り出し価格も見てみた。新規登録物件の平均平米単価は、埼玉県と千葉県で前年よりも下がっているので、東京カンテイのデータのように、東京都の周辺エリアで上昇鈍化の状況も見て取れる。

次に、首都圏の中古一戸建てを見ていこう。東京23区が主要エリアになるマンションと違い、むしろ23区外が主要となるのが一戸建ての市場だ。まず、成約件数を見ると、23区を除くすべてのエリアで増加している。これは、新築マンションの価格上昇の影響で、消費者が中古マンションのみならず一戸建てに関心を移していることが考えられる。

また、中古一戸建ての平均価格については、東京23区で対前年5.1%上昇しているが、その周辺エリアでは-3.3%~+1.7%の範囲内となっている。マンションに比べると価格の上昇については小幅と言えるだろう。

東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2024年)」より抜粋して筆者が作成

東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2024年)」より抜粋して筆者が作成

一戸建て市場については、新築マンションに手が届かない人たちの受け皿になっている可能性もあるが、価格についてはマンションよりも落ち着いた動きをしているようだ。

さて、さまざまなデータから、2024年の首都圏の住宅市場の状況を見てきた。首都圏の、東京23区とその周辺では、明らかに異なる動きをしている。特に投資的な買い方がされるマンションでは、23区で価格の上昇が続いているのが目立つ。一方で、マイホームを求める人たちの目が、中古マンションや一戸建てに向く動きもあるが、2024年には価格上昇が鈍っている状況も見て取れる。

2025年で気になるのは、住宅ローンの金利だ。超低金利が続いていた変動型の金利も、いよいよ現実的に上昇を始めた。金利上昇による消費マインドの冷え込みがどの程度生じるかによって、発売・成約戸数や価格に影響を与えるだろう。注視していきたい。

●関連サイト
不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向2024年(年間のまとめ)」
不動産経済研究所「首都圏マンション 戸当たり価格と専有面積の中央値の推移 2024年」
東京カンテイ「『中古マンション70m2価格年別推移』2024年(年間版)」
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)「首都圏不動産流通市場の動向(2024年)」

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