「ズキューン!」――カウンター席で鮨をお客に提供する際に、若き大将、黒田直輝氏がウインクをしながら発する声。2024年12月に東京・御徒町にオープンした江戸前鮨「鮨結う 遥」(すしゆう はるか)では、たちの寿司店では通常は聞かれないようなユニークな掛け声が店内に響き渡る。
同店は、4年連続でミシュランガイドに掲載されている名店「鮨由う 銀座」(すしゆう)や、半年先まで予約で席が埋まっている人気店「鮨結う翼 恵比寿」(すしゆうつばさ)の系列店。
「鮨由う 銀座」でミシュラン1つ星を獲得した大将、尾崎淳氏は、テレビなどにも出演している有名料理人。そして彼の愛弟子が黒田氏。「鮨由う 銀座」でおなじみの”尾崎劇場”が、「鮨結う 遥」では”黒田劇場”となって美食を求める観客たちを楽しませる。
特に見どころは、コース半ばの「プリン巻」。「ズキューン!」が飛び出す瞬間はスマホで動画撮影をぜひお見逃しなく!
シャンパーニュで乾杯!その後は希少な日本酒が続々
先付け3種とシャンパーニュでのどを潤す
「鮨結う 遥」はカウンター9席、テーブル全6席からなる。L字型カウンターの奥には大将、黒田直輝氏。そのきびきびとした所作や真剣な表情がとても気持ちいい。夜の営業は2部制で、開始時間になると一斉に先付けが提供される。
シャンパーニュで乾杯した後は、濃厚でなめらかな嶺岡豆腐、もずく酢、そして肉厚で歯応えのある三陸産わかめのぽん酢。ふんわりとしたアオサ入りの卵焼き。その後、とろりとなめらかな茶碗蒸しが提供される。
茶碗蒸しに海苔醤油を加える。後半は寿司に変身
「茶碗蒸しは半分まで味わったら、最後まで食べ切らずに、器を一度、カウンターに戻してくださいね~」と黒田氏。
穴子とクリームチーズの旨みがからみ合う茶碗蒸し。それを半分ほど味わって、いったん器をカウンターに戻すと、その中にシャリと海苔醤油が加えられる。何やら仕掛けがあるようで、口に含むと茶碗蒸しが立派な寿司に変身していた!
太刀魚の焼きには日本酒「風の森」
同店のサプライズはこれからが本番。ふっくらした太刀魚の焼き物には、少しだけ発泡を含んだ「風の森」(油長酒造・奈良)を合わせてくれた。日本酒は約10種揃うが、「風の森」と「醸し九平次」はプレミアム扱いで、おひとり様1杯のみ注文できる。他は何杯でもO K。日本酒の柑橘風の味わいが、上質な太刀魚の旨みを一層引き立てる。
日本酒だけでも10種。これらが飲み放題とは!
お酒は他にワイン、ビール、焼酎、ウィスキーなど。日本酒とワインは持ち込みもできる(赤ワインはNG)。ドリンクはすべて飲み放題。前菜に11カンの鮨が付くおまかせコースが13,200円とコスパが良すぎではないか!
聞くところによると、予約で満席になることが多い系列店の中で、同店が最もリーズナブルとか。系列店から同店に流れてくる客もいるのかも。
1カンごとにため息が漏れる極上の寿司体験
真鯛の稚魚、カスゴのにぎりとガリ
1カン目のカスゴ鯛(鯛の稚魚)のにぎりは身がしっとりとして美味。4日間寝かせたというシマアジのにぎりは、脂がしっかりのっている。シャリには赤酢の中でもまろやかなものを厳選して使用。ガリはスライスではなく角切りのもの。随所にこだわりが垣間見られる。
3カン目の食べ応えのある真アジにぎりには、細かくたたいたネギが添えてあって独特の風味。そしてついに黒田氏の声がワントーン高くなり、「プリン巻」が登場する。
系列店でも大人気の「プリン巻」。提供時にズキューン!の掛け声
裏ごししたあん肝をシャリと合わせて海苔に乗せ、きゅうりを挟んた「プリン巻」は、カウンターの中から黒田氏が「ズキューン!」の演出とともに手渡ししてくれる。あん肝をたっぷりと使っているので「プリン巻」。でも痛風を気にせず食べちゃうよね!系列店でも人気の名物メニューだ。
サワラのにぎりには 「澤屋まつもと」
同店には地味で無口なすし職人はいない。エンターテイメント性の高い寿司劇場で、きっと外国人観光客などにもすぐ口コミで人気が広がるだろう。若干28歳の黒田氏が時折見せるはにかんだ笑顔さえも、最高のおつまみ。黒田劇場の活気が、後半はさらにみなぎってくる。
5カン目はサワラのにぎり。皮目を香ばしく炙って、福井県産の地がらしを利かせたもの。これには「澤屋まつもと」(松本酒造、兵庫)の純米酒をおすすめしてくれた。口いっぱいに寿司をほおばり堪能していると、目の前にはカニとウニがうず高く盛られたにぎりが並び出す。海苔の上にカニとウニのにぎりが乗せられ、お客に手渡しで提供してくれる。
高さは4センチほどのカニとウニの軍艦巻
7カン目のマグロは青森県産のキメの細かな上質な赤身。続いてトロのにぎり。これに合わせ日本酒はプレミアム枠の「醸し九平次」が提供された。しかもぬる燗にしてグラスで提供してくれた!
「トロは口の中に入れるとすぐにとろけるので、それに合わせて日本酒も温めました」と黒田氏。さすが!日本酒好きの気持ちをわかってる~!トロの極上の旨みと日本酒のふくよかな甘み、極上の美味しさにしばし無言になってしまう。
トロのにぎりには「醸し九平次」のぬる燗
9カン目は酸味と旨みがバランスよい小肌。そして煮帆立のほぐし軍艦。半生になるように火入れしてあるので甘みが際立っていて美味。ふっくらとした穴子の握りには爽やかな柚子の香りを添えて。最後は魚介や干ぴょうなどの太巻きならぬ“福巻き”で笑顔に。
こだわり日本酒も含めてドリンクは飲み放題なのに、価格は13,200円。寿司9カンに前菜も付くのに価格は13,200円。予約が取れるうちに、ぜひチェックしてみてください。
店舗名 : 鮨結う 遥(すしゆう はるか)
所在地 : 東京都千代田区外神田5-3-8 宇土ビル1階
営業時間 : 1部:17時30分/2部:20時00分
※火・水を中心に月8日休み
※土・日・祝日のみ昼営業:12時00分
席数 : 13席(カウンター9席 ・ テーブル6席)
店舗電話番号 : 03-3831-1134 完全予約制
※取材は2024年12月のもので、食材などは季節により変更になることもございます。
≪筆者プロフィール≫
▪滝口智子
国際きき酒師&ソムリエ
飲食ライター歴20年の食いしん坊バンザイ!記者&PRプランナー。
日本酒やワインなどもこよなく愛す。