【記者会見レポ】北野武監督、「映画はこれからじゃんじゃん進化していくべき」“実験的作品”に挑んだ『Broken Rage』を語る
北野武が監督・脚本・主演を務めるAmazon Original映画『Broken Rage』(2025年2月14日配信開始)の配信記念記者会見が2月5日(水) オークラ東京にて行われ、北野監督、浅野忠信、大森南朋、白竜、國本鍾建が登壇して作品について語った。
日本の配信映画として初めてベネチア国際映画祭に正式出品され高い評価を受けた本作は、「暴力映画におけるお笑い」をテーマに北野監督が映画の常識を覆すべく手掛けた作品。
映画本編のティーザームービーが披露された後に登壇した北野監督は冒頭の挨拶で、「Amazonのネット配信ということで、“お茶の間で観る映画”というのはどういうものか悩んで、かなり実験的な映画をやらせてもらおうと思いました。映画が完成した後、エンターテイメントというものは観る側と作る側の環境が変わると、これほどまでに変わってしまうのか、ということがわかるようになりました」と作品が完成した今の心境を語った。
井上刑事を演じる
「第81回ベネチア国際映画祭」で行われたワールドプレミアについて訊かれた北野監督は、「映画祭の島へ行くためのボートに乗るときに頭をぶつけて、記憶がないんですよ(笑)。ただ、映画が終わった後のお客さんの反応を見せてもらったら、「良かったのかな」と思いました」と思わぬエピソードを明かして集まったメディアを驚かせた(その後、病院に行って脳波を調べたところ治っていたとのこと)。
ベネチア国際映画祭での反響について浅野は、「Aパートではいつもの北野監督のやくざ映画だという雰囲気の反応でしたけど、Bパートになっていきなり劇場の雰囲気が変わってアットホームな世界になったんです。僕も一緒になって笑ってました」と、前半後半での反応の違いが映画の大きな特色であることを語った。現地では熱狂的な北野映画ファンが集まり、写真を持ってきてサインを求めてきたというが、大森は「僕にサインしてくれって渡される写真が全部、浅野君の写真なんですよ(笑)。一応、大森南朋って書いておきましたけど」と報告して笑わせた。
「今回の作品を経て監督自身が進化したのか、またどういった方向へ挑戦していきたいのか?」との質問に対して北野監督は、「絵画では、キュビズムだとか印象派とかいろんな言葉があるけど、絵画の歴史に比べれば、映画はしょせん100年ちょっとしかない。今回、意識としては映画におけるキュビズムやフォービズムをやろうとした。映画はこれからじゃんじゃん進化していくべき。絵画と同じようにシーンをバラバラにしてそれを繋げてもわかるような時代になって来るだろうなと思う。それに対しては、今回はかなり実験的な映画だと思っています」と、鋭い感性を思わせるコメントを残した。
また、『アウトレイジ』を思わせるタイトルに込められたメッセージについて問われると、「『アウトレイジ』は現代的なヤクザ映画を撮ったが、『Broken Rage』はそれに対するパロディであり、自分の映画キャリアを”壊す”という意味も込めている」とのこと。
海外メディアからの質問も寄せられ、「ストリーミング配信は映画の敵として見るべきか?それとも新たな表現手段として見るべきか?」という問いに対して北野監督は、「今の時代、エンターテイメントはどういう方法をとるのか、今は過渡期であり試されている。その渦中にいる我々は、出来る限りいろいろチャレンジをしていきたいと思っています」と今後のエンタメとの向き合い方を示唆した。
会見の最後に北野監督は、「自分としては実験的な映画で、グレードとしてはそんなにすごいとは言いませんが(笑)、お金を払って見て損するとは思わないだろうという感覚です。おかげさまでここにいる役者さんたちが上手くて一生懸命やってくれたので、どうにか映画としての形はできましたし、この映画が目指すベクトルは次にまた違う映画として花咲くということを期待しています。できたら観てください。ありがとうございます」と、真摯なメッセージで締めくくった。
Amazon Original映画『Broken Rage』は、Prime Videoにて240以上の国や地域で2025年2月14日(金)より世界独占配信される。
●取材・文・写真
【OTOTOY特別取材班― 武田美芝 / 石川幸穂 / 岡本貴之】
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