2025年の注文住宅トレンドは「スペパ・コスパ」! 埋め込み型換気扇、自動洗浄風呂、壁面太陽光パネル、ジェネリック建材など注目キーワード続々 『SUUMO注文住宅』編集長に聞いた

2025年の注文住宅トレンドは「スペパ・コスパ」! 埋め込み型換気扇、自動洗浄風呂、壁面太陽光パネル、ジェネリック建材など注目キーワード続々 『SUUMO注文住宅』編集長に聞いた

自分の思い描く暮らしに合わせて、工務店やハウスメーカー、建築家に住宅をオーダーできる注文住宅。間取りや設備も自由に選べるため、好みに加えて時代のトレンドも大いに反映される特徴があります。住まい情報誌『SUUMO注文住宅』編集長の服部保悠さんによると、2025年の注目ワードは「コスパ」と「スペパ」。どういうものなのか、早速見ていきましょう。

住宅価格が高い今こそ、コスパ、スペパな注文住宅を意識

全国的に、建築費・土地代ともに上昇傾向が続いた2024年。SUUMOリサーチセンター「2024年 注文住宅動向・トレンド調査」によると、建築費の全国平均は3,415万円で、前年より229万円増加。土地代の全国平均は2,331万円で、前年より186万円増加。どちらも直近9年の中で最高値となっています。

建築費用 建築者

出典:SUUMOリサーチセンター「2024年 注文住宅動向・トレンド調査」

「職人不足や働き方改革によって人件費が上がっていますし、建材価格も今のところ下がる要素は見当たりません」と服部さん。そんな住宅価格の高騰を受けて、注文住宅のトレンドとなるキーワードがコスパ(コストパフォーマンス。費用対効果)とスペパ(スペースパフォーマンス。空間対効果)だといいます。

注目ワード1:建築費の増加を受けて注目集まる「コスパ」

自由に家づくりができる注文住宅ですが、かといって好きなだけ費用を注げる人は多くないはず。そんな中で注目を集めているのは、コスパのいい注文住宅です。具体的にはどんな住宅が選ばれているのでしょうか?

●規格住宅

規格住宅

(写真/PIXTA)

ハウスメーカーや工務店があらかじめ用意した間取り、デザイン、設備の中から自由に選択できる規格住宅(セミオーダー) 。最初に価格の目安がつきやすいこともメリットです。「建てる家にもよりますが、フルオーダーの住宅と比べて3/4程度の建築費になる場合もあります」と服部さん。
注文住宅は自由に設計できるとはいえ、細かな内装材にいたるまですべてを一から考えるのはなかなか大変なもの。その会社のプランや世界観にしっくりハマる人であれば、おすすめできる建て方です。結果的にコスパだけでなくタイパにもつながるのも魅力。ハウスメーカーだけでなく、規格住宅を用意する工務店も近年増えてきているといいます。

●平屋

平屋

(写真撮影/北島和将)

ゆとりある土地が取得しやすい郊外が中心になりますが、平屋を選ぶ人は年々増加中。
「昔はマンションではなく一戸建てを建てたい理由って、広さや部屋数が確保できるというのが理由の一つだったと思うのですが、今は5LDK欲しいとか100平米欲しいという人だけではなく、自分たちの暮らしに合った広さがあればいいという考え方ですよね。そうなれば平屋も選択肢に入れやすくなりますし、つくり方にもよりますが、建築費も比較的抑えられます」と服部さん。
SUUMOリサーチセンター「2024年 注文住宅動向・トレンド調査」によると、平屋建ての建築費用は平均3034万円で、2階建て以上の平均額と比べて490万円低くなっています。

平屋建ての建築費用

出典:SUUMOリサーチセンター「2024年 注文住宅動向・トレンド調査」

ファミリー世帯でも、部屋をすべて個室化せず、室内の壁は必要最低限にして大空間でゆったり暮らしたい、というような人が平屋を選ぶ傾向にあるそうです。

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●コンパクト住宅

コンパクト住宅

(写真/PIXTA)

明確な規定はありませんが、延床面積が10坪~20坪前後の小さな家のこと。少しでも土地代、建築費を抑えたい、でも郊外ではなく都市部に住みたい、という人に選ばれています。
「コンパクトでかつシンプルな間取りにすることで、建築費を抑えられます。コンパクトといっても、間取りや設計の工夫で、圧迫感をなくすことはできます。例えば、部分的に吹き抜けにする、視線の抜けに窓をつくるなど、縦または横に広がりを持たせることで、実際の面積以上に広く感じられるのです」(服部さん 以下、同)

注目ワード2:限りある空間をとことん有効活用する「スペパ」

コスパ、タイパならぬ「スペパ」が、注文住宅の重要ワード。間取りや設備を工夫して、限られたスペースを効率的に活用しよう、という考え方です。極端な話ですが、「うちは湯船は使わない」という人がシャワールームだけにしたらこれだけスペースが抑えられた、というようなことですね。注文住宅だからこそ、ライフスタイルに合わせて「スペパの高い家」がつくれるというわけです。また「高スぺパ」は「高コスパ」にもつながります。その具体例を服部さんにうかがいました。

●省スペース玄関

省スペース玄関

(写真/PIXTA)

「わかりやすい玄関はいらない、という人は結構いらっしゃいます。玄関ドアを開けたらすぐにリビングというパターンも」
昔の土間のように一部だけモルタルにして、ここで靴を脱ぐという境だけつくっているようなケースもあるようです。廊下をつくらず、あるいは極力少なくして居室部分を広く、という考え方が、玄関にまで及んできているような傾向です。
逆に、アウトドアや園芸用品など外で使うものの収納スペースを兼ねた「玄関土間」をつくる事例も。ガレージまではいかなくても自転車などのメンテナンスができたり、子どもが縄跳びしたり。そんな機能性を持たせたスペースです。

●バルコニーなし

バルコニーなし

(写真/PIXTA)

共働きで夜洗濯をして室内干ししたり、乾燥機を利用したりすることも多いから、いっそ「バルコニーはなくていい」という人も。その分建築コストを下げることができます。

●ダイニングのリビング化
ダイニングテーブルの椅子を壁に沿った造作ソファなどにして、リビングとしてくつろげるスペースを兼用。

●寝室の居室化

寝室の居室化

(写真/PIXTA)

寝室兼書斎にするなど、寝る以外の機能を設けた寝室。
「さすがに書斎まではつくれないけれど、寝室の一角をワークスペースとして有効活用するというような使い方は増えています。こもってリモート会議をすることもできます」

●造作収納
造作したソファや椅子の下にものを入れられるようにしたり、ヌックの下部や、リビングを一段下げてそこを収納スペースにしたり。
「既成の家具を入れると無駄なスペースが生まれがちですが、造作なら効率よく収納できます。例えば本棚なら、階段ホールや廊下の壁にわずかな奥行きがあればつくれます。階段を椅子がわりにして子どもが読書したり、家族のコミュニケーションの場になったりも」
高さや奥行きに合わせて造作してもらうことで、無駄なくスペースを活用できるのも注文住宅ならではです。

2025年、服部編集長が注目するトレンド設備は?

注文住宅を建てるうえで、最新の設備についても気になるところ。住宅設備で服部さんが今注目しているものをうかがいました。

●デザイン性◎! キッチンに開放感をもたらす埋め込み型換気扇

埋め込み型換気扇 埋め込み型換気扇

(写真提供/ホリベアソシエイツ 撮影/市川かおり)

「toolbox」と建築事務所「Horibe Associates」が共同開発した「天井スリットファン」は、天井に埋め込んだ換気扇が整流板のスリットから煙を吸い込む換気システム。ほかにも、吹き抜けなどで天井に取り付けられない空間におすすめの「壁出しレンジフード」や、アイランドキッチンにもぴったりの「下引き換気扇」も。
「下引き換気扇は、電動で昇降するレンジフード。ふだんはフラットで、使うときだけカウンタートップから出てきて調理の排気を吸引します。どの商品もデザイン性がよく、レンジフードで空間が遮られないので、キッチンの圧迫感が軽減できます」

●毎日のお風呂掃除から解放!自動洗浄浴室
洗剤をセットしておけば、スイッチひとつでお風呂の床も浴槽も自動で洗浄。
「数年前から各社で出していますが、だいぶ普及してきたのではないでしょうか」
お風呂掃除から解放され、タイパにつながると人気を集めています。

●コストカットの期待も高まる壁面太陽光パネル

壁面太陽光パネル

(写真/PIXTA)

日の当たる壁面に設置できる太陽光パネル。もともと設置場所が限られている都市部の高層ビルで実用化されていますが、降雪量の多い地域などでの導入も進んできています。

「北海道で、屋根設置よりも雪の影響がなく発電できるとして、壁面太陽光パネルを取り入れている事例もあり、注目です」

壁面に設置する太陽光パネルでは、太陽の位置が低い時間帯に発電量が多くなり、日が当たっている場合、冬は夏の約2倍の発電量になったという実証結果も。外壁や窓に設置する場合は専用の架台が不要で、建材一体型の太陽光パネルなら建物の建設作業と兼ねることができ、コストカットにもつながります。
2024年には、住宅・建築物の再エネポテンシャルを最大限引き出し、太陽光発電設備の導入を促進するため、環境省による「窓、壁等と一体となった太陽光発電の導入加速化支援事業」もスタートしました。

●機能は落とさずコストダウンできる“ジェネリック建材”
「建材の価格が上がっている今、いい意味でごまかせる、性能とデザイン性の高い建材がこれまで以上に必要になってくるのではないでしょうか。例えば昔は高級感を出すのに石を使っていたものが、タイルでも石のような雰囲気が出せるなど。プリント技術もかなり上がってきていますからね」と服部さん。
性能や機能は落とさずにコストダウンできる点でいうと、ジェネリック家具ならぬジェネリック建材といえそうです。ぜひチェックしてみましょう。

●「玄関手洗い」は定番化

玄関に入ると右手に洗面室

玄関に入ると右手に洗面室(写真撮影/片山貴博)

洗面室

(写真撮影/片山貴博)

「玄関を入ってすぐに手洗いスペースを設ける間取りはコロナ禍で増えましたが、ある程度選択肢の一つとして定着した感があります」と服部さん。子どもの手洗い習慣にもなるうえ、来客時に生活感ある洗面所までわざわざ案内するのも……というとき、玄関手洗いがあると便利なもの。タイパにもつながり、今後も取り入れる人は増えそうです。

コスパ、スペパな家をかなえるためには?

最後に、コスパ、スペパな家づくりをするために、気をつけたいことを服部さんに教えていただきました。

「大切なのは、間取り先行で考えないこと。注文住宅はつい、吹き抜けが欲しい、書斎が欲しい、土間が欲しい……などと考えてしまいがちですが、まずは『どんな暮らしをしたいか』を伝えてほしいです」

例えば吹き抜けにすると、2階のスペースが減ってしまう。でも吹き抜けにしたい理由が『開放的に暮らしたい』だったら、大開口の窓をつくることで視線が抜けたり開放感が生まれたりします。書斎が欲しい理由も、仕事で家族にも見せられない資料を扱ったり、リモート会議が多かったりするならいいのですが、PC作業がメインなら大きなダイニングテーブルで作業できるかも……。
「こういう暮らしをしたい、と伝えることで、具体的な間取りの工夫はプロが提案してくれます」

物価上昇が続くからこそ、無駄なく、コスパよく、スペパよく!人気のトレンド設備もチェックしながら、自分のライフスタイルにぴったり合った快適な暮らしを、注文住宅でかなえましょう。

●取材協力
住まい情報誌『SUUMO注文住宅』編集長
服部保悠氏
『SUUMO注文住宅』

●関連サイト
SUUMOリサーチセンター「2024年 注文住宅動向・トレンド調査」
環境省 民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業のうち窓、壁等と一体となった太陽光発電の導入加速化支援事業の公募開始

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