【第1回カラスミ選手権】色んな魚の卵をカラスミにした結果 →アイツがうまーい!!【ボラ、真鯛、ブリ、サバ、きはだマグロ】

みなさまカラスミは好きですか?

カラスミは美味しいけど100g5000円ぐらいするし、上物になると余裕で100g10,000~20,000円する高価なものなので、なかなか手が出しづらいですね(>_<)

「0を1つ付け間違えてるんじゃないかな……」とドン引きしちゃう。

しかもカラスミの元になるボラは漁獲量が減少していて、価格が高騰しています。

昨年2023年秋・冬の東京のボラの卸売価格が平年の4~5倍になってて驚きました……というか平成の頃と比べると10倍の価格になっているような……。

今後はさらにカラスミの高級化が進み、滅多に手が出せない品になってしまうかもしれない……これは代替品を見つけておかなくては!!

ということで「ボラ以外の卵ではカラスミは作れないの? 他の魚だとどんな味のカラスミになるの?」を検証すべく、色々な魚の卵巣でカラスミを作ってみたいと思います(`・ω・´)!

カラスミとは

カラスミは魚の卵巣を塩漬け →塩抜き →天日干しで乾燥させて作る加工食品です。

「海のチーズ」とも呼ばれ、ウニ、このわた(ナマコの内臓の塩辛)と並び日本三大珍味の1つに数えられています。

日本のみならず世界中で食べられている食品で、その歴史は古く、古代ローマ時代から食されていたと言われています。

世界的にみるとタラやサワラ、マグロの卵巣などでもカラスミは作られているみたいです。

なんでボラのカラスミは美味しいの?

日本でカラスミといえばボラ一択。それほどボラのカラスミは美味しいのです。「他の魚卵と何が違うの?」と疑問に思い調べてみると、地中海フーズ株式会社のHPにこのような解説がありました!

カラスミの材料となる卵巣内の魚卵には油球という油の玉があり、卵全体に占める油球の比率が高いほどねっとりとしたコクのあるよいカラスミとなります。ボラの油球比率は約40%、サワラ、クロマグロ、スズキなどで約30%程度です。卵巣が大きくなればなるほど油球の含有率が高くなることから、魚が成長して大きくなった卵巣で作るカラスミほど味が良くまた値段も高価となります。

なるほどなるほど。卵自体にたっぷり油が詰まっているのが美味しさの秘訣なのですねぇ。

今回作るカラスミ

「色んな魚でカラスミを作りたい!」と思ったものの手元に魚卵がない……欲しい! と思ってすぐに手に入るものでもないし……困った……。

ということで困った時の行きつけの魚屋「海鮮市場マルモト」(神奈川県伊勢原市伊勢原1-3-37)の田中店長に相談したところ、

「色んな魚の卵巣が欲しいの? 冷凍保存してるやつならあるよ!」

ということで早速購入してきました! 田中店長いつもありがとうございます・:*+.(( °ω° ))/.:+

今回買ってきた魚卵は真鯛、ブリ、サバ、きはだマグロ、スズキです!

そして味の比較用としてプロの職人さんが作った本家本元の「ボラのカラスミ」も買ってきました!

真鯛、ブリ、サバ、きはだマグロは冷凍で、スズキはおろしたての生の卵巣です。

スズキだけ生の魚卵で作ることになるので、それだけで味に差が出てしまいそうなので、今回の選手権からは除外することにします。

スズキの卵は干し方も完全冷蔵庫内干しにするなど製作工程をちょっと変えて、番外編カラスミとして次回登場してもらいます!

カラスミを作る

カラスミを作る工程を簡単にまとめると

①血抜き(針で血管を刺した後、氷水に1日漬ける)→②塩漬け(5日~1週間ほど)→③塩抜き(水やお酒に3日ほど漬ける)→④干す(2週間ほど)

です。

④の乾燥工程終了の目安は、「水分が抜けて元の重さの60~65%ぐらいになったら完成」なので、できれば作業開始前に各卵巣の重さを測ってメモしていたほうが良いです。

では早速作っていきます!

卵巣を血抜き掃除する

消毒した針を血管に刺してから、指やスプーンで血管にそって圧力をかけて、血を押し出して抜きます。

血が残っていると雑味やえぐみのもとになるので、根気よく丁寧に血抜きします。細い血管にも針を刺して血が抜けるようにします。

でも冷凍卵巣だと血が固まってしまっていて、押しても全然抜けないので、とりあえずプスプス針を刺すだけになりました(・∀・;)

このあと氷水や塩に漬ける作業があるので、穴が開いていれば浸透圧で勝手にある程度抜けるのではないかなーと。

全部の血管をプスプス刺し終えたら氷水に漬けて冷蔵庫に一晩置きます。

一晩経つと残った血が抜けて水が赤くなっています。

卵巣を取り出してみると、血抜きができているとは言えない状態ではありますが、まぁ良いでしょう。

塩漬けの工程に移ります!

塩漬け1日目

血抜きした卵巣を洗い、キッチンペーパーでしっかり水気を拭いたら塩に漬けて冷蔵庫で寝かせます。

塩は精製塩ではなく、海の旨味たっぷりの天然あら塩が良いです!

塩漬け初日は「塩はどのぐらいの量が必要かしら? 卵巣が埋まるぐらいの量じゃないとダメかしら?」と不安になり、3kgと大量に使いました。

が、その後の塩漬け工程を見ていると別に埋もれさせる必要はなく、卵巣全体に塩がつく程度の量があればOKでした。

24時間経つと魚卵から大量の水分が出てきて、塩水タプタプ状態になります。

塩には魚の臭み・えぐみが溶け込んでいそうので、もったいないですがこの塩は全て捨てて、新しい塩に総入れ替えしました。

1日で身は結構締まり、白玉ぐらいの硬さになっています。

卵巣をさっと洗ってからキッチンペーパーで水気をとって、卵巣全体に塩をまぶしてまた冷蔵庫で寝かせます。

塩漬け2日目

塩漬け2日目24時間後もまだまだ水分が出てくるので、塩の入れ替えをします!

塩漬け6日目

塩漬け4日目あたりから水分はあまり出なくなり、6日目には水分はほぼ出ず塩が湿らなくなったので、これで塩漬けの工程は終了です。

プニプニだった卵巣はハード系グミぐらいの硬さになりました!

塩抜き

次は塩を軽く落として真水に漬けていきます。

本当は卵巣についた塩を洗い落としてから、塩を少量溶かした水に漬けて(真水につけると浸透圧で魚卵の旨味が抜けてしまうので塩水に漬けます)~という工程を踏むのが正しいらしいのですが、面倒くさいのでしません。

「塩が付いた状態で真水に漬けたら表面の塩が溶けて、自動的に塩水に漬けた状態になるじゃん」の精神で、軽く塩を落とした状態で水にドボンします。

4時間に1度くらいの頻度で水を舐めてみて、「しょっぱ!!!!」と思ったら漬け水を半分捨てて新しい水を補充します。

「塩辛いけどちょうど良い」ぐらいの塩加減だったらそのまま置いておきます。

「全体的に柔らかいけど、芯に少し硬さが残ってる」状態に戻るまで水に漬けます。だいたい24時間ぐらいです。

酒漬け

塩抜きが完了したら酒漬けの工程に入ります。

お酒はなんでもいいみたいなのですが、アルコール度数25%以上の焼酎と日本酒を合わせたものに漬けるのが初心者向きみたいです。

私は昆布やハーブ、スパイスで風味付けされたお気に入りのクラフトジン(アルコール度数60%)と日本酒を半々で割ったものを使用しました。

しかし後々完成品を試食する時に分かるのですが、この漬け酒の味がモロにカラスミに反映されるので、漬け酒はうま味がありつつ魚卵の味を邪魔しない純米酒がおススメかなーと思います。

お酒がムラなく全体に染みわたるように卵巣をキッチンペーパーで包み、お酒を注ぎます。お酒の量は卵巣が被るぐらいでOKです。

芯に残っていた硬さがなくなり、全体的に柔らかくなったら酒漬け終了です。私は3日ほど酒漬けしました。

なお、ここで硬さが残っている(きちんと塩が抜けていない)と、完成時に塩辛すぎるカラスミなってしまいます。

干す

酒漬け終了した魚卵たちです。お餅のようにモチモチ柔らかくも弾力のある柔らかさになりました。

めっちゃいい匂いする!!!!!!!

ハーブの香りがする芳醇な数の子って感じの美味しい香りです。特にサバは脂がのっていていい匂いがします。これは完成が楽しみすぎる。

ダイソーの干物ネットに入れて陰干ししていきます。干物ネットを販売してくれているダイソー様マジ神。

本当はこの段階で板に挟み押しつぶして成形してから干すのが良いそうです。そのほうが乾燥具合にムラができず均等に仕上がり、味が良くなるそうです。

干す時の気温は10℃ぐらいが最適で、最高でも18℃ほどが良いのだそうですが、連日日中の気温は大体21℃……

「腐るかな(・ω・;)?」と不安になりつつも、やってみなければ分からないので、21℃にひるまず外干しします。

夜は夜露に濡れないように冷蔵庫に閉まったほうが良いらしいですが、面倒くさい&夜は4~7℃と気温が低く空気も乾燥しているので、外に出しっぱなしにしました。

雨が降った時だけ冷蔵庫にしまいます。

干し1日目終了

1日でほんのり色づき表面はパリパリに乾燥しました。

表面だけ乾燥が進みすぎてしまうのを防ぐために、1日1回焼酎で湿らせたキッチンペーパーで拭いたり霧吹きを吹きかけ、ひっくり返します。

これを毎日続けながら2週間ほど干します。

干し14日目

指で押すとカチカチでしっかりと乾燥しながらも弾力を感じる感触になり、熟成香も漂うようになってので、14日で干し作業は完了としました。

スメルチェックをすると

■ブリ→焼きタラコと干物を合わせて発酵させたような匂い。
■きはだマグロ→魚の干物の匂い。
■真鯛→納豆的な発酵臭のする生タラコの匂い。
■サバ→酸化した脂の匂いが強いものの、発酵臭はせず、焼きタラコと数の子を合わせたような匂い。

ちなみに職人さんが作った本物のボラのカラスミは

まず見た目が全然違いますね。表面は水あめのような艶がありしっとりしています。

開封した直後こそは酸化した脂の匂いが鼻をつくけど、じっくり熟成させた干物を佃煮にしたような、甘く複雑で奥行きのある香りがします。

匂いだけで旨味がたっぷり詰まっていて美味しいのが良く分かります。

この時点で本家本元のボラのカラスミと素人のカラスミでは雲泥の差があって、「食べ比べする必要あるかなぁ……」とつい思ってしまいましたが、試食していきたいと思います(`・ω・´)

ボラのカラスミ

まずはボラのカラスミを食べてみます。

めっちゃくっちゃ美味しい!!!!!!!!!!!!!!!

香水のトップノート、ミドルノート、ラストノートのように段階的に変化する味わいがもう食べる芸術!!

最初はうま味が非常に濃い干物とタラコの味がガツンときます。

そこに生ハムのような熟成肉っぽいうま味と風味がのってきて、そしてすぐにチーズやフォアグラのような濃厚なコクが追いかけてきます。

そして生クリームのようなトロける甘みが広がり、舌がうっとりした状態で味覚が締めくくられます。

羊羹のようにみっちりした歯ごたえでありながらサラサラーと溶けてゆき、オイルの滑らかな舌触りに卵のツブツブがはじけて、食感までものすごく美味しいです!

これは感動する美味しさ。高額でも買いたくなるわけだわ!!

サバのカラスミ

まずは一番脂がのっていて期待できそうなサバのカラスミから頂きます(・н・)パクッ

う~ん……美味しくはないね……

切り分けてみると意外にも酸化した脂の匂いはしない代わりに、唐辛子強めの明太子と数の子の匂いがします(唐辛子など一切使っていないのに、なぜか辛い匂いがします)。

まず脂が足りないです。ねっとり感もない。うま味も足りない。全てが足りてない、ないない尽くしの味です。

そして口溶けも悪くゴムを噛んでいるみたいな食感です。

よく噛んでいると魚のうま味や魚卵のコクが少しは出てきますが……漬け酒のクラフトジンの味が強く出すぎていて、多少魚卵のうま味のあるクラフトジン味のグミを噛んでいるような感じです。

でも意外にもオレンジ色のキレイな色味のヤツよりも、茶色くて小汚いほうがうま味が強くて美味しかったです!

とはいえ、まぁ総じて美味しくはないです(・∀・;)サバはカラスミには向かない魚かもしれない。

真鯛のカラスミ

続いては見た目が一番美しく美味しそうな真鯛のカラスミです。

ふむ、切ってみるとタラコ臭が強めではあるものの、本家ボラのカラスミに近い匂いがします。良い香り。

ねっとりツブツブした食感で、まず口当たりは良いです。

焼きタラコ感が強いけど、熟成された深みのある旨さが濃くて美味しい! コクもあります!

脂の甘みや滑らかさはないものの、まろやかな味わいです!

ボラのカラスミとは全く別のベクトルで、タラコ味の強いサッパリ系カラスミとしては大いにアリではないでしょうか? 美味しい!!

真鯛のカラスミは、もっと寝かせて熟成させたらさらにうま味が増して美味しくなる予感がします!

きはだマグロのカラスミ

きはだマグロとブリはあまり見た目が美味しそうじゃないなぁ(・ω・;)

でも匂いは甘みのある佃煮干物臭がして、かなり本家ボラのカラスミに近いです!!

食べてみると旨味たっぷりで、味もボラのカラスミに近いです!!

脂がないのであっさりしているものの、ボラのカラスミにはない白身魚の干物的な旨味が多く、色々な旨味が複雑に絡み合って美味しいです!

そしてなぜかイカの燻製的な風味も微かにします。

焼きタラコ+数の子+魚の干物+イカの燻製といった味わいで、脂の甘みや滑らかさは全くないけど、まろやかさやコクがあってかなりウマいです!!

食感はネットリ感は全くないものの、ツブ感をほとんど感じさせないほどの極小粒で、密度がギュッと詰まった焼きタラコといった感じです。

ただ、皮が硬すぎる上に厚くて噛みきれないので、皮は剥くか炙るかしてから食べたほうが良いです。

ブリのカラスミ

きはだマグロと同じく、匂いは本家ボラのカラスミに近いです。そして皮が厚くて硬い。

食感もきはだマグロのカラスミと同じく、消しゴムに転生した焼きタラコみたいなみっちりした感じです。

味もきはだマグロのカラスミとよく似ているのですが、ブリカラスミのほうがシンプルで甘みがありつつ、尖った味をしています。

数の子&干物、時々、タラコ味ですね。

カラスミ選手権感想

一番美味しかったカラスミはやっぱりダントツでボラでした。まぁ、これはプロの職人さんが作ったものだし、どうしても別格になります。

ボラ以外だと、1位きはだマグロ、2位真鯛、3位ブリ、(超えられない壁を挟んで)4位サバでした。

総じてどのカラスミもボラのカラスミと比べると、脂と甘みが足りなすぎる感があります。

しかしきはだマグロと真鯛のカラスミは、ボラにはない旨味や風味がたっぷりが詰まっており、ボラカラスミでは味わえない美味しさがありますので、これはこれで大いにアリです!

口に入れた時の瞬間的な美味しさはボラのカラスミには遠く及ばないものの、「あー無性にきはだマグロと真鯛のカラスミが食べたい!!!!!」とちょいちょいツマミたくなる、とてもクセになる味わいです。

カラスミ作りは時間はかかるけど、日々変化していく姿を見るのは生き物の育成に通じる楽しさがありますので、よかったみなさまもぜひ色々な魚の卵巣でチャレンジしてみてください(・∀・)!

「次は甘みを補うべく、酒漬けのときにみりんも入れてみようかなー?」とか自分なりに改良実験できるところも楽しいです!

※画像は全て筆者撮影

東京都中央卸市場市場統計情報
https://www.shijou-tokei.metro.tokyo.lg.jp/[リンク]
地中海フーズ株式会社
https://chichukaifoods.com/karasumi[リンク]
海鮮市場マルモト
https://www.0-to.com/[リンク]

(執筆者: ゆずくん)

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