【ライヴレポ】「でんぱえび」の絆は永遠! 2組の想いが重なりあった特別なツーマンライブ──〈でんぱ組.inc × 私立恵比寿中学 ～ヘロー！ウェルカム！踊るでんぱえび共和国～〉

2024年11月25日。神奈川・KT Zepp Yokohamaにて、でんぱ組.incと私立恵比寿中学による、ツーマンライブ「ライブナタリー でんぱ組.inc × 私立恵比寿中学 ～ヘロー！ウェルカム！踊るでんぱえび共和国～」が開催された。

様々な変化を繰り返しながらも、長きに渡りアイドル・シーンを盛り上げ続けている、でんぱ組.incと私立恵比寿中学(通称：えびちゅう)。この2組がツーマンライヴを行うのは、2019年5月にZepp DiverCity（TOKYO）で行われた「私立恵比寿中学合同合唱コンクール」以来約5年ぶり。移り変わりの多いアイドルシーンのなかで、5年後に同じグループがこうして共演すること自体が、奇跡のようなことに思える。ちなみにナタリー主催のこのイベントのレポートを、なぜOTOTOYが書いているのかといえば、それはひとえにナタリーの担当者からの熱い熱い熱意が届いたからである。この日は、その熱意が120%表現された、本当に理想的なイベントだった。

定刻を迎え、でんぱ組.incのピンキー！こと藤咲彩音と、えびちゅうの真山りかによる影ナレが入ると、客席の熱がぐんと上がる。そこから真山の「まずはでんぱ組.incから！」という合図とともに、でんぱ組.incのメンバーがステージに姿を現す。その手には新体操のリボンが握られており、曲がはじまる前から客席から「おおっ⁉︎」このフォーメンションは⁉︎」と驚きと喜びの声が上がっていた。そして歌われたのは、でんぱ組.incきっての超絶ハイテンション楽曲“でんでんぱっしょん”。スタートから一気にフロアのヴォルテージはMAXに達した。

さらに、驚かされたのはここから。でんぱ組.incが歌い終えたあとのステージに、えびちゅうのメンバーが立っていたのである。えびちゅうはそのまま“仮契約のシンデレラ”を披露。互いのキラー・チューンをいきなり序盤からぶつけ合う展開に、客席は歓喜に沸く。この時点で、このイベントがただのツーマンではなく、今日だけの特別な時間になっていることを感じた。

2組がステージに勢揃いして、イベントの開幕を力強く宣言すると、続いてはそれぞれ3曲ずつ披露。まずはえびちゅうが、スキルフルなラップが印象的な自己紹介ソング“Knock You Out!”から、“ハイタテキ！”、“Go!Go!Here We Go!ロック・リー”をパフォーマンス。続くでんぱ組.incは、作詞が前山田健一繋がりということなのか“ギラメタスでんぱスターズ”でスタート。“衝動的S/K/S/D”、“ちゅるりちゅるりら”とテンションの高い楽曲を畳み掛けた。歌詞もサウンドもコミカルな楽曲が多い2組だが、それを表現するスキルはどちらも折り紙つき。そういった部分でも相性は抜群だった。

続いてのブロックは、「スペシャルリクエストタイム」と称したコーナーへ。ここは事前にお互いの曲を2曲ずつリクエストしていたとのことで、何がリクエストされたのか、始まる前から期待が高まっていた。えびちゅうの1曲目は、今年リリースされたアルバム『indigo hour』から“BLUE DIZZINESS”。クールな表情で、現在進行形のえびちゅうのカッコ良さを打ち出したあとは、寒い時期にも関わらず夏曲「夏だぜジョニー」を披露した。次のでんぱ組.incが歌ったのは、“でんぱれーどJAPAN”と“バリ3共和国”の2曲。でんぱ組.incらしさ全開のパフォーマンスで、客席を熱狂の渦に巻き込んだ。このブロックでは、互いのメンバーがステージ上にいる状態で、ライヴを楽しんでおり、至近距離でのファンサするシーンも見られた。

でんぱ組.incの相沢梨紗、天沢璃人、高咲陽菜、えびちゅうの小林歌穂、小久保柚乃、桜井えま、仲村悠菜によるほのぼのMCを挟んで、続いては楽曲&衣装交換のコーナーへ。ステージに登場したのは、でんぱ組.incの古川未鈴、藤咲彩音、鹿目凛、小鳩りあ。4人は、えびちゅうの衣装を着て“売れたいエモーション！”を元気いっぱいにパフォーマンス。鹿目は、でんぱ組.inc加入前に、この“売れたいエモーション！”をカバーしていたという経歴もあり、このエモい選曲には多くのファンが盛り上がった。対するえびちゅうは、真山りか、安本彩花、中山莉子、桜木心菜、風見和香がカエルの衣装で登場。でんぱ組.incの「冬へと走りだすお！」を披露し、このイベントならではのスペシャル感をさらに高めた。

ライブここから後半戦へ。でんぱ組.inc「サクラあっぱれーしょん」の後には、えびちゅうが「梅」を歌い、春の風を2組で吹かせると、でんぱ組.incは「商売繁盛！元祖電波屋！」、えびちゅうは「ちちんぷい」をパフォーマンス。1曲ずつ交代しながら、怒涛の勢いで盛り上げていく。こうやってそれぞれの楽曲を聴いていると、楽曲のアプローチの方向性や個性の打ち出し方は少しずつ異なる2組だが、ライヴに来てくれた人全員を楽しませたいというエンターテインメントのベクトルは完全に同じだった。ステージにいるグループが変わっても、フロアの熱が変わらなかったのは、その想いが伝わっているからなのだろうと思った。

圧巻のパフォーマンスを見せたあとは、再び2組揃ってのMCのコーナーへ。ここでは、アイドルが短歌を発表し合うイベント「アイドル歌会」で共演している鹿目と真山が、「アイドル」というお題で、それぞれ短歌を即興で詠んだ。

まず鹿目が詠んだのは「あの頃は よかったけれど 今だって あの頃以上に 幸せなの」という一首。これには、長くアイドルグループをやっていると「あの頃の方が好きだったな」と言われることもあり、そのせいで悔しい思いをする。でもそんななかでも「今が一番、あの頃以上に楽しいし、幸せなんです」という思いが込められいると語る。この短歌には、形を変えながらも10年以上活動を続けている、でんぱ組.inc、えびちゅうの両方のグループのメンバーからも大きな共感を呼んでいた。続く真山は「見逃した ライブ写真 セトリ確認 アイドルの味方 ナタリーで」という短歌を披露し、本イベントの主催者であるナタリーへの感謝をしっかり伝える。この人間性の高さに、なぜえびちゅうが長年に渡り、愛されているのかの理由があるような気がした。

そこからライヴはクライマックスへと向かう。でんぱ組.incの古川未鈴「みんなの明日が最高になるような、そんな曲をお届けします」という言葉から、えびちゅうは“ヘロー”をパフォーマンス。葛藤を抱えながらも、未来へと進む希望の光が会場を包む。続いてでんぱ組.incは、“あした地球がこなごなになっても”をエモーショナルに歌う。2組の熱演が生む、大きな大きな感動が聴く胸をグッと掴んで離さなかった。

2時間にわたって行われてきたライヴも残すところ、それぞれ1曲ずつ。えびちゅうのラスト・チューンは“スーパーヒーロー”。メンバー、観客含めその場にいる全員の背中を押す力強い歌声が、会場全体に響く。そしてでんぱ組.incが披露したのは、8ビートの王道アイドルソング“キラキラチューン”。いまのでんぱ組.incが歌うからこそ、この曲のメッセージは心に響くのだと思う。笑って泣ける素敵な空気を充満させると、最後はえびちゅうメンバーとともに終演のあいさつを行う。万雷の拍手のなか、最高のツーマンライブは幕を閉じた。

エンディングへと少しずつ歩みを進めるでんぱ組.inc。さいたまスーパーアリーナでのライヴに向けて、全力で走り続けるえびちゅう。その旅の交差点が、この日のライブだったのだと思う。これからまた2組はそれぞれの道を進み出す。物語は、まだまだ続くのである。

取材&文：西田健

ライヴ情報

「ライブナタリー でんぱ組.inc × 私立恵比寿中学 ～ヘロー！ウェルカム！踊るでんぱえび共和国～」
2024年11月25日 KT Zepp Yokohama
〈セットリスト〉
01. でんでんぱっしょん / でんぱ組.inc
02. 仮契約のシンデレラ / 私立恵比寿中学
03. Knock You Out! / 私立恵比寿中学
04. ハイタテキ！ / 私立恵比寿中学
05. Go!Go!Here We Go!ロック・リー / 私立恵比寿中学
06. ギラメタスでんぱスターズ / でんぱ組.inc
07. 衝動的S/K/S/D / でんぱ組.inc
08. ちゅるりちゅるりら / でんぱ組.inc
09. BLUE DIZZINESS / 私立恵比寿中学
10. 夏だぜジョニー / 私立恵比寿中学
11. でんぱれーどJAPAN / でんぱ組.inc
12. バリ3共和国 / でんぱ組.inc
13. 売れたいエモーション！ / でんぱユニット（古川未鈴、藤咲彩音、鹿目凛、小鳩りあ）
14. 冬へと走りだすお！ / えびちゅうユニット（真山りか、安本彩花、中山莉子、桜木心菜、風見和香）
17. サクラあっぱれーしょん / でんぱ組.inc
16. 梅 / 私立恵比寿中学
17. 商売繁盛！元祖電波屋！ / でんぱ組.inc
18. ちちんぷい / 私立恵比寿中学
19. ヘロー / 私立恵比寿中学
20. あした地球がこなごなになっても / でんぱ組.inc
21. スーパーヒーロー / 私立恵比寿中学
22. キラキラチューン / でんぱ組.inc