関西「住み続けたい街ランキング2024」発表! 自治体1位は芦屋市を抑え天王寺区。住み続けたい駅の第1位は?
リクルートが関西圏(大阪府・兵庫県・京都府・奈良県・滋賀県・和歌山県)に居住している20歳以上の人を対象にWEBアンケートを実施し、「SUUMO住み続けたい街ランキング2024 関西版(SUUMO住民実感調査)」を発表した。
この調査は「お住まいの街(駅・自治体)に今後も住み続けたいですか? 」と質問し、回答を分析したもの。住んでいる人が魅力を感じ、将来もずっと住み続けたいと願っているのは、いったいどんな街なのか。順位を見てみよう。
「住み続けたい自治体」は天王寺区がトップ。隣接する阿倍野区も5位に
SUUMO住み続けたい街(自治体)ランキング2024 関西版 TOP20(リクルート調べ)
アンケートは現在居住している自治体・駅をまず回答し、今後も住み続けたいかと、「通勤・通学など特定の場所へ行きやすい」「子育てに関する自治体サービスが充実している」「大規模商業施設がある」など、さまざまな観点による街の魅力40項目について、自分の住んでいる街がそれに当てはまるかどうかを尋ね、その回答を点数化している。
毎年発表している「住みたい街ランキング」は“住んでみたい”という憧れの要素が強いが、2年に一度の「住み続けたい街ランキング」は居住者だからこそ感じるリアルな魅力が反映されている点が大きな違いだ。
子どもはもちろん、さまざまな世代が集まるてんしば。平日も大勢の人でにぎわう(写真/PIXTA)
「住み続けたい自治体」第1位は大阪市天王寺区。2022年の前回調査7位から一気に首位へと躍り出た。天王寺区といえば、広大な天王寺公園がいつもにぎわっている。特に2015年に開園した芝生スポット「てんしば」は、キタやミナミとは異なりファミリー層がくつろげる場所として定着してきているようだ。春には花見客でいっぱい。てんしばはさらに「てんしば i:na」を開業、天王寺動物園までエリアを拡大し、アスレチックを新設するなど、都会にありながら安全に散歩・ジョギング・運動ができる場として好印象を与えている。「魅力的な運動施設が充実している」という設問では2位につけるなど、天王寺区にはフィジカルなイメージがある。
多数の商業施設やあべのハルカスなど、にぎやかな阿倍野駅前。少し路地を入れば親しみやすい飲食店もいっぱい(写真/PIXTA)
天王寺区と隣接する大阪市阿倍野区も前回調査13位から5位へと大きくランクアップした。「あべのハルカス」「あべのキューズモール」「あべのHoop」など2000年に入り続々と誕生した大型商業施設のほとんどが天王寺区との区境に集中しており、それらの最寄駅であるJR天王寺駅が阿倍野区をまたにかけるなど、両区は切っても切り離せない関係にある。阿倍野区のショッピングタウン、天王寺区のピクニックエリア、ともに徒歩での移動が可能で、どちらのメリットも享受できる一大人気地域として愛されるようになった。2024年は、あべのハルカスがグランドオープンして10周年を迎える。この10年で、天王寺と阿倍野は、キタやミナミに引けを取らない、大阪を代表する街になったのだろう。
2位の芦屋市を筆頭に阪神間の自治体が3つランクイン
芦屋川と芦屋市役所。芦屋川は桜の名所としても有名(写真/PIXTA)
続いて、2位以下の自治体を見てみよう。2位の芦屋市、4位の西宮市、7位の神戸市灘区は、どれも兵庫県の自治体。どの場所も前回調査からわずかに順位を落としつつも上位に食い込んでいる。阪神間エリアの住民愛は強力だ。
2位の芦屋市はイメージの良さばかりが語られがちだが、「魅力的なコミュニティセンターや公民館がある」という設問で1位になっており、特に、芦屋市民会館、芦屋市立公民館、芦屋市立老人福祉会館で構成される芦屋市民センターの大ホールは、日本で最初の本格的アダプタブルシアター(舞台と客席を用途に応じて変形できる構造)とされる「ルネサンス クラシックス芦屋ルナ・ホール」として、さまざまなイベントが行われている。芦屋市役所には全世代参加型カフェ「ASHIYA Cafe supported by NESCAFÉ」を運営、障がいのある人の就労機会の創出や市内の障がい福祉サービスなどの事業所で製作された物品などの販売を行っている。テラス席はワンちゃんと利用することもできる。
阪急西宮ガーデンズ周辺(写真/PIXTA)
4位の西宮市は「駅周辺に生活に必要な施設が揃っており便利だ」「幹線通り沿いに生活に必要な施設が揃っており便利だ」「魅力的な大規模商業施設がある」「魅力的な運動施設が充実している」が同率5位でずらりと並んでいる。2008年に開業し、現在西日本で3番目に広いショッピングセンター「阪急西宮ガーデンズ」が、いかにこの街の人気を支えているかが改めてうかがえる。フィットネスジムも充実している阪急西宮ガーデンズは開業以来3度目の大規模リニューアルが進行中である。次回調査では、さらに順位を上げるかもしれない。
うめきた2期開発の影響でお隣の福島区が3位に
大阪市福島区のほたるまち周辺。堂島リバーフォーラムや商業施設、高層マンションなどが集積している(写真/PIXTA)
3位は前回調査4位からワンランクアップした大阪市福島区。「いろいろな場所に電車・バス移動で行きやすい」「通勤・通学など特定の場所に行きやすい」が1位に並ぶなど、交通利便性への評価がとりわけ高い。JR「福島」「新福島」・阪神本線「福島」・地下鉄千日前線「野田阪神」の4つの路線を近距離で利用でき、さらに大阪市北区の京阪「中之島」駅へも玉江橋を渡り歩いて行ける屈指の便利さもある。
しかし、ランク上昇の大きな理由は、隣接している話題の「うめきた2期地区開発」への期待感にあるのではないか。大阪最後の一等地とも呼ばれるうめきた2期の完成に先駆け、大阪駅徒歩圏内の福島区ではタワーマンションの供給や建設が相次いでいる。発展性ではトップクラスの注目を浴びているのが福島区なのだ。
半面、うめきた2期地区の本拠地である大阪市北区は前回調査9位から順位が変わらないのが意外だった。「住みたい街ランキング2024」では2位につけている北区だが、「住み続ける」となると周辺区のほうが暮らしやすい面があるのだろう。
水がきれいで福祉や医療に力を入れる島本町がベスト20にランクイン
島本町を流れる水無瀬川。浅瀬では水遊びをする親子連れも(写真/PIXTA)
ベスト10圏外で注目したい自治体、まずは前回調査21位から13位へとジャンプアップした大阪府の三島郡島本町。隣接する高槻市などと比べ、分譲マンションの価格も手頃で供給もあり子育て世帯を中心に人気だ。加えて高齢化や人口流出などでシャッター通り化が進んでいた商店街「島本センター」の代表者が若返り、新店舗を誘致し、町が活気を取り戻しつつあるのだ。
ほか、島本町は50歳のがん検診を無料化したり、北摂3市町(高槻市・茨木市・島本町)とともに保育への取り組みを強化したりするなど近年、ケアや福祉に力を入れている。それらが評価をあげるポイントとなったようだ。
島本町は大阪府内で唯一、現・環境省選定の「全国名水百選」に選ばれた湧き水の郷であり、サントリー山崎蒸溜所があるウイスキーの産地だ。2023年にはリニュアルオープンされ、「テイスティングラウンジ」での、ウイスキーの試飲や、「山崎蒸溜所 ものづくりツアー」においてウイスキーの製造現場の見学などができる。自然豊かな環境も魅力で、島本町は今後さらに衆目が集まるだろう。
サントリー山崎蒸溜所(画像提供/サントリー)
りんくうタウン北地区と中地区を田尻漁港をまたいで結ぶ位置にある田尻スカイブリッジ(写真/PIXTA)
もう一つが前回調査68位から19位へと飛躍した大阪の泉南郡田尻町。人口が8千人台の小さな港町だが、田尻漁港では海上釣り堀を設けるなどレジャー化につとめ、最大約40店舗が並ぶ大きな朝市が今年30周年を迎えるなど熱気がある。「教育環境が充実している」で3位、「子育て環境が充実している」でも2位という子育て環境が支持されている一面も。保育所、幼稚園、小学校、中学校がそれぞれ町に1つしかなく、近くにまとまっており、町じゅうみんなお友達のような環境なのも面白い。
さらに町の面積の多くを占める人工島は関西国際空港の一部を担っており、税収の面でも安定している。
地下街に直結した京都の穴場が住み続けたい駅の1位に
次は「住み続けたい駅ランキング」から注目の駅を見ていこう。
SUUMO住み続けたい街(駅)ランキング2024 関西版 TOP20(リクルート調べ)
京都市役所周辺。周辺の有名スポットよりぐっと人が少なくなるが、地元の人ぞ知る人気レストランなども点在しているまさに「暮らす街」(写真/PIXTA)
1位は京都市役所前(地下鉄東西線)。前回調査8位から首位に立った。海外からの観光客でごった返す新京極商店街の目と鼻の先にありながら、庁舎ゆえにツーリストが見物目的に立ち寄らない。そのためオーバーツーリズムが課題となっている中京区にもかかわらず、駅周辺は奇跡的に静けさを保っている。
また、京都市役所前は、京都駅の京都ポルタに次いで2番目に長大な地下街「ゼスト御池地下街」と直結している点も人気の理由の一つだ。しかも京都ポルタと違いスーパーマーケットや生活用品の店が多く、地元の暮らしを支えている。いわば地下の市場である。観光客からはいい意味で「まだ見つかっていない」感があり、ほっとする空間となっているのだろう。
大学へのアクセス良好な無人駅「元田中」が2位に
京都大学にほど近い無人駅の元田中。駅周辺には安価でボリュームがある飲食店が並び、学生たちのパワーの源になっている(写真/PIXTA)
2位は京都の無人駅、元田中(叡山電鉄叡山本線)。前回調査78位からの大躍進である。周囲に京都大学や京都芸術大学を擁する学生の街であり、「近所付き合いが薄く自由な生活ができる」という設問で2位につけている点も学生街らしい。
駅を降りて東大路通を南へ歩けば安価でボリュームがある飲食店や町中華が並ぶ。現在「デカ盛り」で町おこしをはかっており、物価高騰の昨今、お腹いっぱいになりながらも外食費を抑えられる点が支持される理由の一つではないか。
東大路通を反対に北へ歩けば、「洛北阪急スクエア」「イズミヤ高野店」「コジマ×ビックカメラ高野店」が至近距離に集結するショッピングゾーンが現れる。単身者、ファミリー層が近場で生活が完結できる便利さがある。学生が多いためか、大型書店がゾーン内に2軒もあり、知的欲求も満たしてくれる。
3位の苦楽園口を筆頭に阪神間の駅が6つもベストテン入り
苦楽園口駅より徒歩約10分のニテコ池と周辺の街並み(写真/PIXTA)
3位の苦楽園口(阪急甲陽線)、4位のさくら夙川(JR東海道本線)、5位の芦屋川(阪急神戸線)、6位の岡本(阪急神戸線)、9位の夙川(阪急神戸線)、10位の西宮(JR東海道本線)と、阪神間の駅が6つもベスト10入り。兵庫県南東部、六甲山の麓の人気は根強い。
とりわけ六甲山に近い芦屋川は前回調査20位から5位へと急上昇した。「自然が豊富(山や海、森、川など)」という設問で1位を獲得している。コロナ禍によってライフスタイルが変化し、登山やハイキングなど豊かな自然を日常生活に取り入れられる環境が近年、再評価されたのではないだろうか。
芦屋川駅から六甲山側を望む風景(写真/PIXTA)
都会と下町、どちらも楽しめる7位中崎町駅、8位阿倍野駅
7位の中崎町(地下鉄谷町線)は前回調査29位から跳ね上がった。古民家をリノベーションしたカフェや雑貨店が並び、「インスタ映え」でさらに人気となった町だ。「雰囲気やセンスのいい、飲食店や個人商店(書店、美容院、雑貨屋など)がある」で1位を獲得しており、有名なブランドよりも、独自性がある個人事業を好む人たちに絶大な人気がある。
中崎町はおしゃれな店舗に姿を変えつつも戦前の木造建築が現在も残っている希少なエリアで、その懐かしさを体感しようと連日、国内・海外からの観光客が押し寄せている。住民は2000年代初頭から観光客を受け入れる態勢ができており、インバウンド時代を先駆けた。
中崎町駅周辺のレトロな街並み。路地の中に隠れ家的な飲食店がいっぱい(写真/PIXTA)
何よりも、開発が進むうめきた2期への徒歩圏である。完成の日が近づくとともに住むメリットが明確になり、順位が上昇したのではないか。
8位は阿倍野(地下鉄谷町線)。「あべのキューズモール」「あべのキューズタウン」「あべのベルタ」の最寄駅で、買い物やレジャーに直結しているのが特徴だ。あべのキューズモールには2022年、赤ちゃん専用のスペース「キューズランドベビー」が開設された。流行に敏感な若者のみならず、ファミリー層も安心できる場所となっている。
あべのキューズモール周辺(写真/PIXTA)
トレンドの先端を体験できる半面、区内33件が都市景観資源に登録されており、古き良き大阪の姿も温存されている。新しいけれど、新しくなりすぎない点が暮らしやすさにつながっているのだろう。
ここで注目したいのが地下鉄谷町線沿線の人気である。谷町六丁目が61位から12位へ。谷町九丁目が32位から13位へ。都心へのアクセスが良好ながら、御堂筋線のようなメイン路線ではなく、下町の雰囲気が残る駅が多い点が「住み続けたい」理由につながっているのではないか。
阪神タイガース優勝が2つの駅の順位を上げた?
10位以下で気になるところは、前回46位から14位になった久寿川と、40位から17位になった甲子園。阪神本線の隣り合う駅が猛虎のような勢いで40位台から急伸している。
どちらの駅も100周年を迎えた阪神甲子園球場へ歩いて行ける距離。阪神タイガースの優勝による球場周辺の経済効果は見逃せないだろう。観戦客による消費、阪神ファンの居酒屋やスポーツバーなどでの消費、地元のスーパーや商店街の優勝祝賀セールなどによる恩恵を授かった人たちは多かったはずだ。阪神タイガースの優勝により、地元への帰属意識がいっそう高まったと考えられる。
また、両駅ともに甲子園浜の沿岸にある。甲子園浜は野鳥の集団渡来地として、大阪湾内では唯一の鳥獣保護区に指定されている。「コロワ甲子園」「ららぽーと甲子園」などショッピングモールと豊かな自然が共存している点も魅力だ。
阪神高速5号湾岸線 六甲山を背景に甲子園浜からポートアイランドを見晴らす湾岸の景色(写真/PIXTA)
では、なぜ球場を眼前とする甲子園より久寿川の順位が高いのか。甲子園と久寿川は新築マンションでは坪単価40~50万円くらい差があり久寿川周辺はかなりお手頃。ならば二択で久寿川となったのでは。
滋賀県で要注目は本屋大賞受賞小説の舞台となったあの駅
住み続けたい駅ランキングを居住都府県別に見てみると、滋賀県の2位に膳所(JR東海道本線)がつけている。膳所は2024年に本屋大賞を受賞した『成瀬は天下を取りにいく』や、2022年に直木賞を受賞した『塞王の楯』などの舞台であり、街が活気づいているのだ。
『成瀬は天下を取りにいく』にも登場した西武大津店の跡地には708戸の大規模マンションが完成。また大津湖岸なぎさ公園の再整備事業が始まり、2025年に和菓子のたねやの新店「LAGO 大津」が開店するとあり、関西でも指折りに熱い視線が注がれている駅だ。次回調査では滋賀の首位を奪うかもしれない。
再整備事業が始まった大津湖岸なぎさ公園(パース提供/たねや) ※パースは現時点でのイメージとなります
かつて「大阪第3の街」と呼ばれた自治体が1位になり、無人駅が2位になるなど、波乱に満ちた2024年度の「住み続けたい街ランキング」。調査を経て、注目の都市よりも、隣接する区や駅に順位上昇の傾向があるなど新たな発見があった。関西の街が変わり続ける限り、「住み続けたい」の観念も変化してゆくのだろう。次回調査では、さらに大幅な順位の変動が起こるかもしれない。
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