“あやふやな記憶”から思い出の一冊を見つける! 本好きにおすすめの書籍『あやふや記憶の本棚』
小学生のときに図書館で読んだ”あの本”、タイトルはなんだったっけ? ストーリーは少し覚えているけれどタイトルが思い出せない……。そうした「あやふやな本の記憶」はありませんか? 実は、思い出そうとしても思い出せない、皆さんの記憶の中にある本を探し出してくれるXアカウントがあります。その名も「あやふや文庫」(@ayafuyabunko)。
そんなあやふや文庫さんが、これまでに探し当てた本をまとめた書籍『あやふや記憶の本棚 思い出せないあの本、探します』は、本好きにおすすめしたい一冊です。
たとえば、こんな”あやふや記憶”が紹介されています。皆さんはなんの本の記憶か分かりますか?
「ある女性が女の子を誘拐して逃げる話で、なんで誘拐したのか、なにから逃げているのかも覚えていないのですが、たしか昆虫の名前が入っている短い題名だったと思います」(同書より)
ドラマ化や映画化もされた小説なので、作品を知っている人ならこの時点でピンときているかもしれません。答えはこちらの作品でした。
「(角田光代さん著)『八日目の蝉』。一見、かなり重要な要素が含まれているため検索でもすぐに見つかりそうですが、『昆虫 本 誘拐』で調べると昆虫の生態の本に行きつくようです」(同書より)
このように、あやふやな記憶の中からワードを選んで検索すると、逆に見つけづらくなってしまうことがあるようです。
知っている作品が、あやふやな記憶で語られているのを読むと、「この人はそこが印象的だったのか」「そういえばそういうシーンもあったなあ」など、違った視点で作品の魅力を再確認できます。また、自身が知らない作品の”あやふや記憶”も非常に興味をそそります。
個人的には以下の”あやふや記憶”が気になったので紹介します。
「短編の、少し怖い話です。なんでも割り勘したり、物を半分に分けることが好きな夫婦orカップルが、別れる際に体ごと真っ二つにして相手に送り返す? 話だったと思います」(同書より)
こちらは今邑 彩さん著『よもつひらさか』に収録された短篇「ハーフ・アンド・ハーフ」のあやふや記憶とのこと。『よもつひらさか』は奇妙な怖さが味わえる全12篇からなるホラー短篇集。これをきっかけに読んでみようと思った作品です。
このように”あやふや記憶”を読んで新たな作品に出合うという不思議な読書体験ができるのも、同書の楽しいポイントです。
ただし同書には、探し出せていない未解決の”あやふや記憶”もいくつか紹介されています。
「40年ほど前に読んだと記憶している本です。主人公はお母さんだと思います。その子どもが小学生なのですが、忘れ物ばかりしています。いつか大切なものを忘れるような気がして、お母さんは心配です。ある日、子どもが学校から帰ってきたようで、玄関で音がします。ただいま、という声が聞こえましたが、姿が見えません。お母さんがたずねると、『体を忘れてきちゃったの』と答えます。交通事故にあった、というゾクッとする話です。星新一さんのショートショートだと思うのですが……」(同書より)
もし皆さんの中に、この作品のタイトルが分かる人がいれば、あやふや文庫さんに連絡してみてはいかがでしょうか。ときには書籍ではない”あやふや記憶”も届くそうなので、映画やドラマ、音楽、舞台など、幅広いジャンルの記憶を掘り起こしてみてください。
同書は、書庫1「みんなが探してる!」、書庫2「”あの作品”を探してる!」、書庫3「変な記憶を探してる!」、書庫4「忘れられないフレーズを探してる!」、書庫5「おいしい記憶を探してる!」、書庫6「試験・教科書の本を探してる!」、書庫7「特別な思い出を探してる!」、番外編「本じゃなかった!」の大きく9つに分けて、たくさんの書籍が紹介されています。
同書をとおして、自身の知識量を試すもよし、次に読む本を決めるもよし、一冊でさまざまな楽しみ方ができます。読書好きな人は、この機会に読んでみてはいかがでしょうか。
[文・春夏冬つかさ]
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