藤岡みなみ|憧れの釣り人生をスタートさせたい【思い立ったがDIY吉日】vol.96
文筆家・ラジオパーソナリティの藤岡みなみさんが、モノづくりに対してのあれこれをつづるコラム連載!題字ももちろん本人。かわいくも愉快な世界観に、思わず引き込まれちゃいます。今回は、釣りについて!
藤岡みなみ
文筆家。暮らしの中の異文化をテーマにした『パンダのうんこはいい匂い』(左右社)が発売中。
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憧れの釣り人生をスタートさせたい
▲釣った魚!ではありません。
私のDIYライフに、また新しいページが加わる……はずだった。
これまでのDIY歴を振り返ると、いくつかの時代が見えてくる。
小物やアクセサリー作りにハマった時期、木工に精を出していた時期、そして畑に夢中になっていた時期。
そんないくつかのフェーズを経て新しく足を踏み入れようとしているのは、釣りという一大ジャンルだ。
子どもの頃は植物を育てるのが苦手だったが、大人になってから家庭菜園の楽しさを知った。
自分は釣りに熱中するタイプではないと思い込んでいたけれど、今の私は変化しているかもしれない。
釣り針に餌の虫をつけるのも怖くないかもしれないし、魚がかかるまで何時間でも待つ粘り強さが芽生えているかもしれない。
やってみないとわからないけれど。
でも、以前たまたま持った苦手意識を一生抱えたまま生きるのはもったいない。
ほとんど釣り堀でしか経験がなかったので、自分の釣り竿を買うだけでも勇気が必要だった。
一度遊ぶだけなら借りればいい。私の生活に釣りは定着するのか。
図書館で初心者向けの本を借りたり、インターネットで動画を見たりして予習に励んだ。
誰か詳しい人に連れていってもらうのが一番いいのかもしれないけれど、私は一人で釣りに行くということに憧れがあった。
釣り竿を背負い、複雑な道具をてきぱきセットし、釣った魚を自分でさばいて食べる。自立を感じる。そうなってみたい。
▲初心者向けのサビキ釣りにしました。
道具を準備し、海釣りの人気スポットに行ってみた。
常連風の釣り人たちがこんにちは! と爽やかに挨拶してくれる。
一人で釣りをするのはいいけれど、海や川は事故も多い。
出会った人とその日だけの顔馴染みになっておくことも安全のために重要らしい。
何度も繰り返し動画を見たのに、最初は釣り竿と仕掛けをセットするのにかなり時間がかかった。
ようやく準備が整って釣り糸を海に向かって垂らすと、それだけでもう満足だった。
というか、久しぶりに海に来た時点で結構うれしかった。
▲釣り竿を握っているだけで充実感がある。
この日は結局何も釣れなかった。
でも釣り人の一員になれた。
そして2回目、釣り竿のセッティングが上達していた。
釣れなかった。
3回目は別の場所に行ってみた。
数時間粘ったけれど、何も釣れなかった。
釣れた後のことも考えて練習してみる
何も釣れない!
釣ってさばいて食べたいのに。
でも、いきなり釣れても困るかも。
私は魚をさばき慣れていない。
いつも切り身を買う。
4回目の釣りに行く前に、魚をさばく練習をすることにした。
常連さんがアジを釣っていたので、アジが釣れた想定でいこうとスーパーに向かった。
しかし、その日はたまたまアジはなかった。
かわりに売っていたのはトビウオ。
なんと切り身以外の魚はトビウオしかなかったので、仕方なくトビウオを買って帰宅した。
幸い、動画で何度もイメトレしたアジのさばき方とそんなに変わらないようだった。
でも骨が多くて全然上手くいかない。
もし自分で釣れた魚を持ち帰って、こんなさばき方しかできなかったら泣きたくなるだろうな。
あと3回くらい練習が必要そうだ。
▲魚が上手にさばける人になりたいです。
きれいにおろせなかった部分はあら汁にすればいい。
そう開き直って取り組んでいたら、やたら豪華なあら汁になった。
取り出せた身の方が少なすぎる。
トビウオの羽の部分をこんなにしみじみと見たことがなかった。
立派、鳥みたい。
きっと今後、釣りで種々の魚たちに出会えるのだろう。
知っているつもりだった魚のことを、全然知らなかったのだと気づくはず。
トビウオにもう一度飛んでほしくて、身はフライにした。
塩を振ってあら汁とともにいただく。
自分でさばいただけでいつもよりおいしく感じるのだから、釣ったらどんなにおいしいだろう。
トビウオが釣れる日が来るとは全然思えないのだけれど。
▲これから切り身以外も買ってみよう。
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