そのへんに生えてる猫じゃらしを脱穀 →製粉してパンを作った結果

みなさま、そのへんに生えてる猫じゃらしを見てこう思ったことはありませんか?

「この子たち、もしかして食べたらウマいんじゃね?」と。

気になって調べてみたところ、猫じゃらしはどうやらアワの原種で食べられるらしいです。

というわけで、今回は猫じゃらしを料理して食べてみたいと思います(`・ω・´)!

猫じゃらし(エノコログサ)

猫じゃらしはイネ科エノコログサ属の植物でアワの原種だと考えられており、正式名称は「エノコログサ」と言います。

犬の尻尾のような形をしているので「犬っころ草(いぬっころくさ)」→「エノコログサ」という名前になったみたいです。

なお中国語では「狗尾草(イヌの尾の草)」、英語では「green foxtail (緑色のキツネの尾の草)」と表記されるので、エノコログサが動物の尻尾に見えるのは万国共通なのですね。

食用としての歴史は実は古く、約1万年前の中国の河南省霊井(リンチン)遺跡から出土品から、猫じゃらしのものと思われるデンプン粒が見つかったそうです。

当時の調理方法は定かではないのですが、お粥のように粒のまま食べていたのではなく、「脱穀した猫じゃらしを粉にしてクッキーやクレープのようにして食べていたのではないか?」という説があります。

そして日本には縄文時代にアワ作とともにアワの雑草として渡来してきたと考えられています。

これだけ歴史が古いのに食用として認知されていないということは……単純に美味しくないからだろうな(・∀・;)

でも実際に食べてみないと美味しいかマズイかなんて分からないし、イネ科なのでパンにしたら美味しいんじゃないかしら?

というわけで猫じゃらしパンを作るべく、猫じゃらしを集めていきます!

猫じゃらしを収穫する

その辺にボーボーに生えてるのが手軽で良いですね。庭のボーボーな猫じゃらしを収穫していきます。

お食事中の虫がめちゃくちゃついているので「栄養価が高くて美味しいのかも?」と期待が高まります。虫さん、食べ物奪ってごめんね(・ω・;)

とりあえずスーパーの買い物袋Lサイズにいっぱいになるぐらい収穫してきました。

猫じゃらしを干す

パンを作ると意気込んだものの、猫じゃらしの脱穀、製粉てどうやるんだろうな……全然分かんねぇ……同じイネ科の小麦のやり方を真似してみるか。

株式会社ニップンのHPに小麦の種まき~脱穀~製粉、食品に加工するまでの方法が記載されており、とても分かりやすかったのでこちらを参考にさせていただきました。
https://www.nippn.co.jp/hiroba/komugi_sodateyo/vol05.html[リンク]

まずは猫じゃらしの実の水分量を飛ばすために10日~2週間ほど天日干しします。

風で飛ばされたり、落ちた実が散乱するのを防ぐべく、ダンボールに入れて干しました。

ちなみに天日干し中は特に水に濡れると謎のアンモニア臭を放ち、本当に食べ物になるのか心配になりました。家の猫にオシッコひっかけられたのかと疑ったほどキツメのアンモニア臭がします。

猫じゃらしを脱穀する

干した猫じゃらしは手で揉むだけで実(種籾<たねもみ>)がとれて脱穀できます。

でも手ではとりきれない種籾もあるため、私は猫のノミ取りブラシですいて脱穀しました。

脱穀後の重さは126gでした。収穫に1時間ほど、脱穀には5時間ぐらいかかったのにたった126gしかとれないのか……労力に対して歩留まりが非常に悪いですね。

なお、匂いはちょっとアンモニア臭のする青臭い畳です。決していい香りとはいい難いです。

猫じゃらしを水選する

ここから中身の詰まった良い種籾を選別します。

株式会社クボタのHPに水を使って選別する方法(水選)が非常に分かりやすく書かれておりましたので、こちらを参考にさせていただき水選していきます。
https://www.kubota.co.jp/kubotatanbo/rice/germination/antisepsis.html[リンク]

水をはったボールに種籾を入れてぐるぐるかき混ぜます。中身の詰まった良い種籾は沈むので、ゴミとともに浮き上がった軽い籾(もみ)は取り除きます。

えっっっ!? まって!? ほぼ全部浮かぶんだが!?

これは浮いたヤツを取り除くと何も残らなくなってしまうので、選別はせずにザルで洗ってゴミを取り除くだけにしたいと思います。

沈む種籾なんてこれっぽちです……不要なヒゲなどのゴミはかなり出るので、何度か水洗い →ザルにあけるを繰り返してきれいにします。

水洗いが完了したら1~2日干して乾燥させます。

猫じゃらしを製粉する

1日乾燥させただけでは種籾に水分が残りかなり湿っていたので、製粉前にとろ火で炒って乾燥させました。

ちなみに傷んだピスタチオや枝豆の匂いがします。

種籾が乾燥したら製粉作業に入りたいのですがここで問題が……一般家庭には石臼やら製粉機なんてない……

う~ん……フードプロセッサーで代用できるかしら??? とりあえずフープロでの粉砕を試してみましょう。

ダメだ!!!! 籾殻(もみがら)が強靭すぎてフードプロセッサーでは歯が立たない!! 1時間フープロにかけてもほとんど変化しませんでした……

仕方ないので手動ですり鉢で擦ります。

割れた籾殻から出た実は粉末にできるものの、籾殻は全然粉にならない……ここでふるいにかけて実の粉末だけを集める手もありますが、それでは量が少なすぎる……

まとまった量にするために籾殻やふすま(皮)ごと粉にした全粒粉にしたいのだけど……もういいや、綺麗な粉にするのは諦めて、籾殻(原型)まみれのままでパン作りに入りたいと思います!

猫じゃらしでパンを作る

前に天然酵母パンを作った時のスターターをパン種にします。

スターター40gを水15ccで溶き、猫じゃらし粉50g、塩1.5gと合わせて混ぜます。

猫じゃらしはアワの原種だけあってグルテンフリーなのか全然まとまらない……

パンは酵母菌が発生させる炭酸ガスを、小麦粉のグルテン膜で包んで逃げないようにすることで膨らみます。

つまりこれではまとまらないだけでなくパンにならない……

本当は猫じゃらし粉だけでパンを作りたかったけど、背に腹は代えられないので強力粉を50g入れることにします!

それにともない塩1.5gと水45ccも追加し混ぜて、しっかりこねます。

なんとか弾力が出てまとまったので、ラップをかけて室温(27℃)で放置し一次発酵させます。

ちなみに匂いはアンモニア臭のする草です。脱穀前の猫じゃらしと同じような匂いがします。

このアンモニア臭はどこからきているのでしょうか……

3時間後に発酵具合を確認してみましたが膨らんでる気配がありません……。グルテンが足らずガスが逃げまくっているのでしょうか。

仕方ないので冷蔵庫にしまい翌日焼くことにします。

猫じゃらしパンを焼く

冷蔵庫で12時間寝かせてみるとほんの少しだけふっくらしていました。

匂いもアルコールっぽい発酵臭がしているので、これで一次発酵完了とします。

成形のために割ってみてビックリ!!!!!!

納豆みたく糸をひいてネバネバしてる!!!!!!!!!!!!!!!

猫じゃらしに付着した枯草菌(こそうきん。植物や特に枯れ草によく付着している菌。納豆を作るための納豆菌はこの亜種だと考えられています)の働きかしら?

枯草菌だとしたら安全な菌なのでこのまま成形 →二次発酵させて焼いていきます。

ちなみに匂いはアルコール臭のする腐ったたくあんのような香りです。

丸めて室温で1時間ほど放置し二次発酵させ

パン生地にふり粉をまぶしてクープ(切れ込み)を入れ、クープにオリーブオイルを数滴垂らします。

オーブンを250℃で15分予熱したら、蒸し焼きにするために天板の隅に水を垂らし、230℃にセットしたオーブンに入れて30分焼きます。
(焦げそうだったので最後の10分は200℃に下げて焼きました)

ちなみにオーブンからはパンの良い香りはまったくせず、たくあんのチーズ焼きみたいな匂いが漂い、不安が募ります。

猫じゃらしパン実食

猫じゃらしパンが焼けたので粗熱をとって食べてみたいと思います。

割ってみると中は籾殻まみれでパンというよりも焼き饅頭という感じですね。酸味のある干し草の香りがします。

ここに来て「猫じゃらしってイネ科だけど麦角菌(イネ科植物に寄生する毒性の非常に強い菌。精神異常、痙攣、意識不明を引き起こし、死に至る場合もある)は大丈夫なのかしら?」とふと頭をよぎりましたが、麦角菌に侵された場合の爪状に黒く変質した特徴的な種籾もなかったし、ざっと調べた限り猫じゃらしでの麦角菌感染事例は見つからなかったので、たぶん大丈夫でしょう。

では頂きます(。・н・。)パクッ

口に入れた瞬間に籾殻の繊維が『ふえるわかめちゃん』のように口の中で膨れ上がり、まずそれに驚きます。

表面のこんがり焼けた部分は醤油せんべいや焦がしチーズのような風味がして悪くないです。いや、味自体は結構美味しい。

ただ食感が最悪です……強靭すぎる繊維のゴマやポップコーンの殻を大量に口の中に詰め込まれたかのように、籾殻が硬すぎて噛み切れずにいつまでも口の中に残り、飲み込むことができません。不可能です。

肝心のパンの味は絶望的です。

籾殻の食感はそのままに、噛むごとに青臭さと雑草のエグみと苦味が出てきて食えたもんじゃないです。非常にマズイです。

しかしクソマズイ中にもどこか懐かしさがあり、「大昔の祖先たちはこういうものを食べてきたのだろうな。」としんみりし、美味しいものにあふれた飽食の時代に生まれたことに対する感謝の念がふつふつと湧き沁みます

全体的にはマズすぎて食用不可ではあるものの、パン表面のカリカリ部分は発酵食品を焦がしたような良い香りがするので、工夫次第で美味しい料理に化ける可能性は十分にあると思います。

今回の大失敗の要因は籾殻が粉砕できず、きちんと製粉できなかったことです。

次は製粉機を使ってしっかり粉にし、クラッカーのような焼き菓子やもんじゃなどの粉もん料理でリベンジしたい所存です(`・ω・´)

※画像は全て筆者撮影

<参考>
https://www.nabunken.go.jp/nabunkenblog/2019/09/20190902.html[リンク]

(執筆者: ゆずくん)

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