その辺に浮いてる菌でパン作ったらプロに絶賛される味になった
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みなさま、突然パンを作りたくなる時はありませんか? でもイーストなんて常備してないから、思い立っても断念せざるをえないことが多々ありますよね。
それでこの間ふと思ったんですよ。「5000年前はイーストなんてないよね? 古代の人々はその辺に浮いてる菌でパン作ってたんじゃね?」と。
ということで今回はその辺に浮いてる菌を使ってパンを焼いてみたいと思います(`・ω・´)!
※私は生まれて初めてパンを作るうえに、元来が怠惰な性格なので、以下職人さんに見られたらぶん殴られそうなスーパー手抜き&適当な作り方をしています。予めご了承ください。
古代のパン作り
パンはふっくら膨らますための「発酵ダネ(パン種)」に小麦粉などの材料を混ぜて作ります。
調べてみると古代エジプトでは小麦粉と水を混ぜるだけの「サワードウ」という製法でパンの発酵ダネを作っていたようです。
現代でも「サワードウブレッド」と呼ばれ、ライ麦パンやルヴァン種天然酵母パンなどがこの方法で作られています。
イーストで作ったパンよりも風味豊かで、欧米では一般的な作り方みたいです。
サワードウブレッドの作り方
まず酵母菌や乳酸菌に餌(小麦粉と水)を与えて発酵させ、「スターター」と呼ばれるパン種を作り、それでパンを焼きます。
酵母菌や乳酸菌は空気中や植物、果物など、自然界のあらゆるところに存在しています。
酵母菌たちは餌(小麦粉の糖分)を分解して炭酸ガスを発生します。パンはこの炭酸ガスで膨らむのです。
スターターは24時間に1回小麦粉と水を1:1の割合で加えて暖かいところに放置し、酵母菌を培養・発酵させて作ります。それだけです。
超シンプルなので簡単そうに見えるものの、これが難しく、うまく発酵しなかったりカビが生えてダメになることが多くあります。
ちなみに私は真夏日に作ったのもあり、カビが生えて3回失敗しました(・∀・;)
スターターを作る前に、失敗でつかんだコツを先にまとめます。
サワードウ・スターターを育てるコツ
・保存温度は30℃以下を保つこと!
→これが一番大事です。31~35℃の真夏日に室温で放置したら1~3日でカビが生えました。20~30℃、できれば28℃で保存しましょう。
・砂糖を少し加える!
→酵母菌の餌は糖なので、砂糖をちょっと加えてあげるとよく発酵します。
・3~6時間以内に2~3倍に膨らんだら冷蔵庫にしまう!
→過発酵を防ぐためです。暖かいほど発酵は早く進んでしまいます。
最重要だと思うのは上記3点。以下は「こっちのほうがいいよね」ぐらいの重要度です。
・小麦粉はライ麦粉か全粒粉を使う。
→酵母菌が多く付着しているので発酵しやすく、慣れないうちはこの2つが使いやすいそうです。
・水はできればミネラルウォーターか蒸留水を使う。
→水道水の塩素は酵母菌も弱らせてしまうため、ミネラルウォーターか蒸留水を使うほうが良いみたいです(でも私が試した時は水道水でも発酵しました)。
・最初は小麦粉10g、水10ccから始めてみる。
→コツをつかむまでは少量から作るのが良いです。小麦粉100gとかで始めて失敗すると無駄が多くなるので。
ではさっそく作っていきましょう!
サワードウ・スターターを育てる
今回は
・スペルト小麦全粒粉
・ミネラルウォーター(『南アルプスの天然水』使用。私は軟水を使用しましたが、本来は硬水のほうが発酵に向くみたいです)
・てんさい糖(上白糖よりも酵母菌が付いてそうだから使いました)
で育てていきます。
1日目
フタつき容器にスペルト小麦全粒粉10gと水10ccを入れて、完全に混ざるようにしっかりとよくかき混ぜてフタをします。
※密封するとガスが溜まって爆発することがあるので、フタはかぶせるぐらいでOKです。
ちなみに、容器やスプーンは熱湯消毒してから使うらしいのですが、面倒くさいのでしませんでした。でも全然問題なかったです。洗剤で洗うだけで十分。
水もぬるま湯が良いらしいですが、冷蔵庫から出したばかりのキンキンに冷えた水を使ってます。
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そしてここからが重要です。
私が作った時は連日33~35℃の真夏日! 室温で放置していたらカビが生えました……
なので保冷剤を入れて28℃ぐらいになった保冷バッグの中でスターターを保管します。
冬はお湯を入れたペットボトルを置けば保温できるので、保冷バッグ超便利!
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▲画像では25℃になってますが、実際は28~30℃で保管してます。湿度は35%から50%ぐらい。
これで24時間放置します。
24時間後に見に行くと水が溜まっていました。これは餌不足の証です。
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ここで「酵母の餌って糖分だよね? じゃあ砂糖入れたらよく発酵するんじゃね?」と思いたち、次の餌やり(小麦粉と水を与えること)からてんさい糖を加えることにしました。
なお、この水分は捨てずに餌やりの時にそのまま混ぜ込みました。
匂いは普通に水に溶いた小麦粉の匂いです。この時点では発酵があまり進んでない感じです。
2日目
24時間経ったので2回目の餌やりをします。
スペルト小麦全粒粉10g、水10cc、てんさい糖2g(とりあえず粉の10%を加えてみました。昨日の粉分と合わせて2gです)を加えてよく混ぜ合わせます。
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24時間後↓
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ボコボコしてる! いい感じ! やっぱり砂糖を加えるのは良いのかも!
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側面もプクプクしはじめてる!
匂いは小麦粉にアルコールと干し草を混ぜたような感じです。ちょっと舐めてみると豆腐のような味がしました。
3日目
3回目の餌やりです。変わらずスペルト小麦全粒粉10g、水10cc、てんさい糖1gを加えてよく混ぜます。
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混ぜた直後から気泡がいくつか現れました。
そして今後はどれくらい膨らんだかを確認するため、餌やり直後のカサのところにマスキングテープを貼ります。
3時間後↓
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2倍に膨らんでます!! 餌やりしてから4時間~12時間以内に2倍に膨れるようになったらもうパン作りはできるらしいです。
でも酵母の力を安定させるために、数日はこのまま餌やりを続けたほうが良いそうなので、パン作りまでもう1~2日待つことにします。
なお、ちょっとだけ雑巾的なバッチィ香りがしてきたので、「すぐにパン作りに入ったほうが良いのでは……」という不安もあります(゚∀゚;)
5時間後に見たら3倍に膨れていたので、過発酵をふせぐために冷蔵庫に入れます。
24時間後↓
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ブックブクに泡立ってます!! 表面の色が濃くて下が薄いなどの色ムラもなし!
匂いはふやけた饅頭の皮に干し草と、ちょっとだけ酒と塩素を加えた感じです。変な匂いだけどバッチィ香りはないです。これが発酵臭なのか。
味は酒饅頭の皮と豆腐を混ぜた感じです。
4日目
本当は5日~10日間ぐらいかけてスターターを育ててからのほうが良いらしいけど、我慢できないのでもう今日パン作りに入ります!
パンを作る時にスターターの発酵がピークになるように調整します。
昨日は3~5時間で2~3倍になったので、逆算して、パンを作る予定時間の3~5時間前に餌やりをします。
変わらずスペルト小麦全粒粉10g、水10cc、てんさい糖1gを加えてよく混ぜます。
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5時間後に見てみると3倍に膨らみ、ふるふるトロトロのムースのようになっていました!
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粘り気もあります! なお香りは昨日と変わらずです。
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発酵力テスト
ここで育てたスターターにパンを膨らませる力があるかテストをします。水にスターターを少量垂らしてみて、浮けば合格です。
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半分浮いて半分沈んだ……これはどうなんだ……まぁ、全部沈んでも使いますけどね!
ではいよいよパン作りの工程に入ります!
パンを作る
色々なレシピをみてみると、パンの配合は大体このような感じでした。
※全て強力粉に対する%です。
・サワードウ・スターター:60%以下(20~25%ぐらいが扱いやすそう)
・ライ麦粉や全粒粉:10~30%(使う場合は。ライ麦粉や全粒粉はクセがあるので使わないのが一般的です)
・水:65%~80%(水分量は少ないほうが扱いやすく初心者向き)
・塩:1~2%
ここから計算して以下の配合にしてみました。
・サワードウ・スターター:約80g(今回作ったもの全量)
・スペルト小麦全粒粉:150g
・強力粉:50g
・水:100~130cc(まずは100ccを使い、様子をみながら加水します)
・塩:4g
※強力粉に対して明らかにスペルト小麦全粒粉の量が多すぎるのですが、中途半端に余るのが嫌だったので、スターター作りで余ったスペルト小麦全粒粉を全て使うことにしました。
パンを作る(一次発酵まで)
サワードウ・スターターを水100ccに溶かします(こうすると発酵が早く進みます。水は30℃程度のぬるま湯を使うと発酵はより早まります)。
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粉、塩を入れたボールに水に溶かしたスターターを入れて混ぜてまとめていきます。
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最初はべちゃべちゃですが、生地を底からすくって中心に押し込むように混ぜるとまとまりやすいです。
パサパサで水分量が足りてない感じがしたので、水を13.5cc追加してさらに混ぜます。
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まとまるようになったので丸めてラップをかけて、保冷バッグの中で一次発酵させます。
温度はスターター育成の時と同じく28~30℃になるようにしました。
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2時間後に見てみたら2倍ぐらいになってました。スペルト小麦はグルテンの性質上、縦じゃなくて横に広がります。
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本来はここで成形 →二次発酵 →焼きに入るべきなのですが……
でももう今日は疲れちゃったよ……だから続きは明日やるね……ということで冷蔵庫にしまいます。
フィンガーテスト
なかなか時間が取れず、一次発酵から20時間半が経過してしまいました。正直失敗を覚悟しています。
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匂いは穀物と豆腐を混ぜたような香りで、アルコール臭もすっぱい匂いもせずいい香りだけど……
一次発酵がちゃんとできているかフィンガーテストしてみます。
指に粉をつけて第二関節ぐらいまでズボッと埋めます。
穴がすぐにふさがったら発酵不足、全体がガスが抜けるようにシュワシュワと縮んだら過発酵で失敗です。
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穴は残ったままだし、生地全体も縮まらないから大丈夫そう! 良かった(´∀`;)
パンを作る(成形~二次発酵)
生地のふちに粉をふって
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ヘラを差し込んでボールから生地を外します。
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成形する台に打ち粉をして
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▲これは打ち粉の量が異常です。大さじ1杯あれば十分すぎるくらいでした。
ボールをひっくり返してのせて、生地を台に落とします。
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生地の下に手を入れて、下からやわやわと生地を全体的を広げたらナイフでスパッと2分割します。
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生地をつぶさないように優しく優しく、手巻き寿司の要領で巻きます。
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優しく両サイドの断面側を下に引っ張り丸く成形します。裏面は餃子のように隙間がないようにピッタリ止めます。
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二次発酵が終わったらそのままオーブンに突っ込めるように、鉄板にクッキングシートを敷き、その上にパン生地を載せて暖かいところに放置し二次発酵させます。
※この日は気温32℃だったので室温で放置しました。
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乾燥しないよう、濡れティッシュで拭いてちょっと湿らせたどんぶりを被せておきます。
生地が1.5~2倍に膨れたら二次発酵完了です。
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クープを入れる
45分後に見てみたら1.5倍ぐらいになってたので、オーブンを250℃で予熱開始し焼く準備をします。
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パンの上に粉をふるいかけ、包丁でクープ(切れ込み)を入れます。
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クープは魚を3枚におろす時のように、刃を引く時に力を入れるとうまくいきます。
焼きあがってから反省したのですが、パンが膨らむとともにクープが埋もれるので、生地の半分ぐらいの深さまで切れ込みを入れたほうがいいです!
クープにオリーブオイルを数滴垂らします。
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蒸し焼きにできるよう鉄板のすみに水を垂らしておきます。
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15分以上250℃で予熱ができたら、230℃に下げて30分焼きます!
(10分経過した時にだいぶ焼き色がついていたので、残り20分は200℃で焼きました)
完成
パンが焼けたー!!!!!!! ちょっと感動!!!!!!
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ご覧の通りクープは埋もれるので、思いっきって深く入れたほうが良いです。
触った感じカッチカチで石みたいに硬いのだけど食べられるのかな……これ……(・∀・;)?
粗熱がとれたら切り分けて試食していきます!
実食
外はカッチカチでしたが中は柔らかいです。
スペルト小麦を多く配合しているので、ちょっとケーキっぽさがありますね。
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小麦というよりも穀物の香りがします。では頂いてみましょう(。・н・。)パクッ
え……美味しくない……
美味しくないというよりは食べ慣れていない、思ってたのと違う味というのが適切ですね。いつも食べてるイーストのフワフワパンを想像しながら食べるとガッカリします。
まず食感がちょっとパウンドケーキっぽく、ホロホロモッチリしています。
そして小麦というか穀物の複雑で濃厚な風味とほんのちょっと微かに感じる酸味が特徴的です。
純粋に穀物と天然酵母の風味を楽しめる大人な味わいで慣れると美味しいです。というかクセになる。
銀杏みたいに最初は「えっ?」って思うけど、もう1個食べたい、もう1個! と止まらなくなる感じです。
でも正解の味が分からない……これで果たしてあっているのだろうか……
この道45年のプロに試食してもらう
というわけでドイツ・フランスで修業した創業45年の近所にある天然酵母のパン屋さんにも試食してもらいました。
「すごいじゃん!! 本場の本格的な味をちゃんと再現できてるよ!! お世辞抜きで成功だし美味しいよ!!!! でも塩が足りないね。塩の配合2%ぐらい? 4~6%は入れていいよ!! あとこういうパンは次の日のほうが美味しいから楽しみだね♪」
とのことでした。良かった成功してたみたい ε-(´∀`*)ホッ
次の日
翌日、一切れはトーストして、もう一切れはそのままで食べてみました。小さい方がトーストしたやつです。
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これ一日寝かせてから焼くとめっっっっちゃくちゃ美味しい!!!!!!!!!!
まず味が馴染んでるし、なによりも香りがすごい!!!!
穀物の芳醇な香りに木の実っぽい香ばしさがあって、どことなくビールっぽい風味もあります。
外は乾パンのようにちょっと甘くて香ばしくカリカリ食感で、中はホロホロもっちり!
例えようがない味わいですが、強引に例えるとめちゃくちゃく風味豊かなフランスパンでしょうか。
トーストしてもそのままでも旨み豊かで大人なパンです。この風味はイーストでは出せないね。天然酵母ならでは。
小麦粉を水でこねただけなのに……その辺にいる菌すげぇwwwwwwwww
感想
初めてパンを作る超初心者が雑にチンタラ適当に作っても美味しくできるのが天然酵母パンの良いところです。
完成したスターターは冷蔵庫で保存して週に1~2回餌やりをすれば半永久的にもつし、餌やりが面倒くさければ冷凍保存もできます。
スターター作りは生き物を育てるのに似ててとても愛着がわき楽しいです。
最近涼しくなってきてパン作りに最適な気温になりましたので、よかったらぜひサワードウブレッドを焼いてみてください!
(スペルト小麦やライ麦粉、全粒粉はかなり好き嫌いが分かれるので、強力粉の10%ぐらい配合から始めるのがおススメです)
イーストでは出すことのできない風味豊かな美味しいパンができますよ(・∀・)
※画像は全て筆者撮影
(執筆者: ゆずくん)
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