AltrisとStora Ensoが提携|ナトリウムイオン電池に持続可能な“ハードカーボン”を統合

クリーンなエネルギーとして近年注目されている燃料電池。その中でも現在主力となっているのがリチウムイオン電池だ。しかし、リチウムイオン電池に必要とされる“希少金属”の産出は特定の地域に偏っており、資源確保が課題となっている。

そこで「ポスト・リチウム電池」の本命として注目を集めるのが、ナトリウムイオン電池だ。ナトリウムは地殻に偏在し、埋蔵量はリチウムの1,000倍とされる。安定供給や低コスト化、サプライチェーンのレジリエンス(強靭化)向上にも寄与する、有望な次世代電池である。

今年6月、スウェーデンのナトリウムイオン電池開発のAltrisとフィンランドのバイオマテリアル大手のStora Ensoが提携することを発表。環境に優しく、高性能な次世代電池の実用化を目指す。

パルプ製造の副産物を電池材料に

Image Credits:Altris

今回の提携では、Stora Ensoが開発したハードカーボン(硬質炭素)素材Lignodeを、Altrisのナトリウムイオン電池の負極材料として採用することで合意。

パルプ製造の副産物であるリグニンから作られたLignodeは、枯渇が懸念される化石資源由来の負極材料に代わる、環境負荷の低い素材として注目を集めている。

AltrisのCEOのBjörn Mårlid氏は、今回の提携によって「欧州を拠点とする木材から負極材料に至るまでのサプライチェーンの構築に加わることができるのは大変喜ばしいことだ。今後数年間でこのパートナーシップを発展させ、世界で最も持続可能な電池の商用化を目指す」と述べている(参考)。

ノーベル賞受賞者の研究がヒントに

Altrisのあゆみは、2015年にウプサラ大学の大学院生だったRonnie Mogensen氏が、ノーベル化学賞を受賞した物理学者John B. Goodenough氏のナトリウムイオン電池の研究に着目したことから始まる。2017年、Mogensen氏は指導教官らとともにAltrisを創業した。

持続可能な技術の分野で成長を期待されるAltrisは、2022年のシリーズAラウンドで約1億スウェーデンクローナ(以下、SK)の資金調達に成功。2024年にはスウェーデンのエネルギー庁から7,700万SKの支援を受けた。

研究開発から製造までを手掛ける同社は、スウェーデン国内に2つの主要施設を有する。1つはウプサラにある研究開発施設で、最大100MWh/年の電池製造能力を持つ。もう1つはサンドビーケンにある正極材料の製造工場で、年間2,000トン(電池容量換算で3GWh相当)の生産能力を目指して増強中だ。

一方、グローバルなバイオエコノミーの一翼を担うStora Ensoは再生可能製品のサプライヤーであり、民間森林所有者の1つでもある。約2万人の従業員を擁し、2023年の売上高は94億ユーロに上る。

北欧スウェーデンは豊富な森林資源に恵まれている。卓越した技術力を武器に、AltrisとStora Ensoは「木から生まれた電池」という新たな物語を紡ぎ出そうとしている。リチウムイオン電池からナトリウムイオン電池へと、電池業界の「第2幕」に期待が高まっている。

参考・引用元:
Altris
Stora Enso
EuropaWire

(文・嘉島亜麻実)

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