東京の個人宅、1000坪の「秘密の花園」をいつでも公開! 親子3世代でつなぐ庭の日常にベーカリーカフェも 森田オープンガーデン・小平市

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東京の個人宅、1000坪の「秘密の花園」をいつでも公開! 親子3世代でつなぐ庭の日常にベーカリーカフェも 森田オープンガーデン・小平市

個人のお宅を一般開放する「オープンガーデン」。東京都小平市では市全体の取り組みとして広報・バックアップをしているが、なかでも1000坪の広さを誇る森田光江さんのオープンガーデンは別格。そのスケール感は個人宅の庭とは思えないほどで、テレビ、雑誌の取材を受けることも多い。SUUMOジャーナルでも3年前に取材し、記事はなかなかの反響に。そして、3年後、森田さんのオープンガーデンは、現在どうなっているのか、改めてお話を聞いた。

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足を踏み入れると、個人宅とは思えない、森の花園が広がる

森田さんのお庭で圧倒されるのは、その広さだ。1000坪の広さは個人宅の庭のイメージを大きく超える。しかも、玉川上水沿いの緑道に接しているため、その成熟した緑も借景になり、庭に入ると、まるで森の中にいるような感覚になる。

森田オープンガーデンの敷地図。2022年に娘さん達がオープンしたパン屋さんや花時計、養蜂箱(イラスト右下※移設予定)、ピザ窯など、遊び心がいっぱい(イラスト/ふじや)

森田オープンガーデンの敷地図。2022年に娘さん達がオープンしたパン屋さんや花時計、養蜂箱(イラスト右下※移設予定)、ピザ窯など、遊び心がいっぱい(イラスト/ふじや)

コンセプトは“手入れしすぎない、日常の中のガーデン”。こぼれた種はそのまま、落ち葉は堆肥に、自然の循環を感じる庭づくりがされている。
森田さんがイメージしたのは、世界的に知られたガーデナーで絵本作家のターシャ・テューダーの庭。57歳のときにアメリカのバーモンド州の森の中に移り住み、自分の庭をつくり上げ、スローライフを送った彼女は、森田さんの憧れの存在だ。
森田さんも、花々が咲き誇る庭づくりをするとともに、野菜、果物を育て、収穫し、食す。さらに養蜂でハチミツを採り、摘んだカモミールでお茶を入れる。庭とともに暮らす毎日だ。
「だから小平の”ターシャ”と記事にしてもらえたときは嬉しかったです」

もともと小平市のオープンガーデンの取り組みより先に、ご自身の庭を開放していた森田さん(写真撮影/片山貴博)

もともと小平市のオープンガーデンの取り組みより先に、ご自身の庭を開放していた森田さん(写真撮影/片山貴博)

(写真撮影/片山貴博)

(写真撮影/片山貴博)

庭に入ると高い建物が見えず、非日常な感覚が味わえる(写真撮影/片山貴博)

庭に入ると高い建物が見えず、非日常な感覚が味わえる(写真撮影/片山貴博)

ところどころ、木陰にはイスやテーブル、ハンモックやブランコが置かれ、ひと休みもできる(写真撮影/片山貴博)

ところどころ、木陰にはイスやテーブル、ハンモックやブランコが置かれ、ひと休みもできる(写真撮影/片山貴博)

取材日の5月下旬にはオニゲシなどが咲き誇っていた(写真撮影/片山貴博)

取材日の5月下旬にはオニゲシなどが咲き誇っていた(写真撮影/片山貴博)

左上から、オニゲシ、ダリア、カモミール、菜の花(写真撮影/片山貴博)

左上から、オニゲシ、ダリア、カモミール、菜の花(写真撮影/片山貴博)

■前回の記事:
「私の庭に寄ってって」! 個人宅の『秘密の花園』を自由に楽しむ「こだいらオープンガーデン」

脳梗塞で倒れたものの、庭づくりはリハビリに

実は森田さん、2021年の前回の取材後に脳梗塞で倒れてしまったのだ。約1カ月の入院とその後のリハビリの間は家族や友人が庭の手入れを手伝ってくれたものの、もしかしたら庭いじりは難しいかも、という考えがよぎった。ところが、花の世話をすることや誰かと会話すること自体がリハビリになると主治医から言われ、そのままオープンガーデンを続けている。
「ほっとしました。もちろん、昔よりマメに手入れができなくなったけれど、それはそれで、ありのままの姿でもいいかなと思ってます」

「無理のない範囲で」と思いつつ、気候がいい日には日中はほぼ庭にいることが多いという森田さん(写真撮影/片山貴博)

「無理のない範囲で」と思いつつ、気候がいい日には日中はほぼ庭にいることが多いという森田さん(写真撮影/片山貴博)

手前に背の低い草花を配置し、小道を歩きながら見やすいように工夫された庭(写真撮影/片山貴博)

手前に背の低い草花を配置し、小道を歩きながら見やすいように工夫された庭(写真撮影/片山貴博)

ターシャの庭をイメージしてつくられたベンチのある一画は、取材を受けたテレビ番組の企画で入院中に制作され、快気祝いとしてそのままプレゼントされたもの(写真撮影/片山貴博)

ターシャの庭をイメージしてつくられたベンチのある一画は、取材を受けたテレビ番組の企画で入院中に制作され、快気祝いとしてそのままプレゼントされたもの(写真撮影/片山貴博)

隣近所のお馴染さんには定番のお散歩コース。雑誌やテレビなどで取り上げられるたびに遠方からも訪れる人がいる一方、緑道沿いを散歩していた人が偶然「ウエルカム」の看板を見つけ、立ち寄ることも多い。
社交的な森田さんは、初対面でも共通の大好きな花の話題で盛り上がる。訪れた人とおしゃべりすることもリハビリになるそうだ。

撮影中も女性2人組の来客(写真撮影/片山貴博)

撮影中も女性2人組の来客(写真撮影/片山貴博)

こだいらオープンガーデンの地図を見ながら行ったことのあるお庭にチェックをいれているとか(写真撮影/片山貴博)

こだいらオープンガーデンの地図を見ながら行ったことのあるお庭にチェックをいれているとか(写真撮影/片山貴博)

敷地内に娘さんがベーカリーカフェをオープン

そして前回の取材の後、2022年に起きた大きな変化は、敷地内に、森田さんの娘さんがベーカリーカフェをオープンしたこと。その経緯を森田さんの娘さんに伺った。
「きっかけは母が脳梗塞で倒れたことです。幸いなことに母の友人がその場にいて、私にすぐ連絡をくれたため、救急車を呼ぶことができました。しかし、もし今後、誰もいないときに一人で倒れたらと不安になったんです。そこで、何があった時でも対応できるように、そばで過ごせたらと、思い切って当時勤めていた会社を辞めました。そしてせっかくなら、そばにいながらできる仕事がいい。そうだ、パン屋はどうだろうか、と夢が広がりました。それまでパンづくりは趣味だっただけ。早朝から営業は難しくても、ランチなら、週に2、3日ならできるかもしれない。そんなふうに考えて少しずつ準備しました」

パンづくりが趣味で、コロナ禍でさらにその腕は上達。友人にふるまうと大いに喜ばれたことも動機のひとつ(写真撮影/片山貴博)

パンづくりが趣味で、コロナ禍でさらにその腕は上達。友人にふるまうと大いに喜ばれたことも動機のひとつ(写真撮影/片山貴博)

カフェの名前は「HIDAMARI cafe」営業時間は火・金・土曜11時~15時 (第2土休、ほか不定期休)(写真撮影/片山貴博)

カフェの名前は「HIDAMARI cafe」営業時間は火・金・土曜11時~15時 (第2土休、ほか不定期休)(写真撮影/片山貴博)

カフェの外観。もともとは、以前、賃貸していた元・蕎麦屋の店舗で、厨房やトイレがあり、修繕すれば使えたえたことも、後押しになった(写真撮影/片山貴博)

カフェの外観。もともとは、以前、賃貸していた元・蕎麦屋の店舗で、厨房やトイレがあり、修繕すれば使えたえたことも、後押しになった(写真撮影/片山貴博)

買ったパンをその場で食べられるほか、ピザ、ピザトースト、ホットサンドなどのカフェメニューもある(写真撮影/片山貴博)

買ったパンをその場で食べられるほか、ピザ、ピザトースト、ホットサンドなどのカフェメニューもある(写真撮影/片山貴博)

室内はほぼDIY。室内の内装は、大工仕事が得意な森田さんの友人の手を借りながら、ペンキ塗り、棚づくり、少しずつ手掛けていった(写真撮影/片山貴博)

室内はほぼDIY。室内の内装は、大工仕事が得意な森田さんの友人の手を借りながら、ペンキ塗り、棚づくり、少しずつ手掛けていった(写真撮影/片山貴博)

パンのラインナップはこの庭ならではのものも多い。
庭で採れた菜の花、蕗(ふき)、のらぼう菜を使ったパン。ジュースに使うブルーベリー、梅、柚子も、庭で収穫したもの。料理に使うバジルやミントなどハーブ類をその場で庭に出て摘むこともある。さらに親戚から送られきたキウイやいちごなど果物を使ったジェラードも人気だ。
「今はこれが旬だから、庭で採れたこの野菜を使おう、と材料ありきでどんなパンがいいか考える。それ自体が楽しいんです」
カフェでは、森田さんにとっては孫娘さんがパンの製作や接客で働いている。森田さん自身もお客様とおしゃべりするのも日課のひとつに。

森田さんの孫娘さんは1歳児のママ。つまりカフェでは、森田さん、娘さん、孫娘さん、ひ孫さんがいる瞬間も(写真撮影/片山貴博)

森田さんの孫娘さんは1歳児のママ。つまりカフェでは、森田さん、娘さん、孫娘さん、ひ孫さんがいる瞬間も(写真撮影/片山貴博)

「当初は手探りでした。初めてのことだから手際よくできなかったり。でも皆さん優しくて”ゆっくりでいいよ”とおっしゃってくれるんです。1年目は夏営業をしていましたが、真夏はお客様も少ないので、今年は思い切って休むつもり。最初はもっと少ないメニューで、と考えていたんですけど、常連さんの要望を叶えていたら、だんだんメニューが増えました」

パンはテイクアウトも。撮影中、人気のごぼうパンは開店30分で完売(写真撮影/片山貴博)

パンはテイクアウトも。撮影中、人気のごぼうパンは開店30分で完売(写真撮影/片山貴博)

庭で採れた生ハチミツも販売している(写真撮影/片山貴博)

庭で採れた生ハチミツも販売している(写真撮影/片山貴博)

ブルーベリースムージー500円とブルーベリージャムホイップのコッペパン400円。もちろんブルーベリーは自家製(写真撮影/片山貴博)

ブルーベリースムージー500円とブルーベリージャムホイップのコッペパン400円。もちろんブルーベリーは自家製(写真撮影/片山貴博)

テラス席ではワンちゃん連れの常連さんも。犬用のスムージーも販売している(写真撮影/片山貴博)

テラス席ではワンちゃん連れの常連さんも。犬用のスムージーも販売している(写真撮影/片山貴博)

カフェができたことで、花目当ての訪問客の滞在時間が長くなり、ご近所さんが顔を見せる頻度も上がり、さらに活気が生まれることに。
さらに、小平市では「タクシーで巡るオープンガーデン」なるイベントが開催されている。タクシー半日コース(5000円・昼食付)で、市内のオープンガーデンを複数まわれる。
この日もそのツアーに参加した方4人がカフェでランチ。ツアーの最後がこの森田邸のオープンガーデンらしく、カフェでひと休み。なんとみなさん1人参加の初対面同士。自分も庭で花を育てている、花の写真を撮るのが趣味と、属性も違う初対面の4人が「花好き」という共通点で盛り上がっていた。

「楽しかったです」「お花に癒やされました」と、今回、タクシーで巡るツアーに参加した方たち(写真撮影/片山貴博)

「楽しかったです」「お花に癒やされました」と、今回、タクシーで巡るツアーに参加した方たち(写真撮影/片山貴博)

森田さんの友人が手掛けた陶器を販売もしている。森田さんの庭の看板のようなカモミールをモチーフにしたカップやプレートも(写真撮影/片山貴博)

森田さんの友人が手掛けた陶器を販売もしている。森田さんの庭の看板のようなカモミールをモチーフにしたカップやプレートも(写真撮影/片山貴博)

「庭」を舞台に、訪問客と繋がり、家族とも繋がっていく

森田さんのお庭はもともと野菜畑で、庭いじりは、森田さんが夫と2人でスタートさせたもの。「私が花担当、亡くなった夫が野菜担当で、唯一の揉めごとが花畑と野菜畑の境界線争いだったんですよ(笑)」と、自他ともに認める仲良しぶりだった。
ところが、15年前、末期がんとなった夫が急逝。当初は花を育てる気力がないほど悲しみに打ちのめされていた森田さんが、「せっかく彼が残してくれた場所だから」と、庭づくりにさらに邁進した。
つまり、森田さん夫妻の趣味の場が、森田さん渾身のガーデンになり、それが一般公開され、地域の人々の憩いの場のオープンガーデンとなり、さらに、カフェができたことでコミュニティとしての機能は増幅。「過ごせる」「集う」オープンガーデンとして進化した。

「やっぱり自然の癒やす力ってすごいんですよね。それをたくさんの人に感じてほしいんです」と森田さん(写真撮影/片山貴博)

「やっぱり自然の癒やす力ってすごいんですよね。それをたくさんの人に感じてほしいんです」と森田さん
(写真撮影/片山貴博)

さらにいえば、この庭は、森田さんの娘さん、お孫さんと、親子3世代の居場所として、縦にも繋がる場所ともいえるだろう。森田さんにとってはひ孫にあたる子ども達にとっては、ここは格好の遊び場だ。
「この庭がなければ、この庭が人が集う場所でなければ、私は“パン屋を始める”なんて思わなかったと思います。そしてオープン日は亡き父の誕生日の6月21日。家族の大切な節目になりました」と森田さんの娘さん。まさしくこの庭園は森田家の歴史の舞台となっている。

●取材協力
森田オープンガーデン
住所:東京都小平市小川町1-647-3
TEL:090-4220-2061
開放日:通年

HIDAMARI cafe
営業:火・金・土曜11:00~15:00
定休日:第2土曜日(ほか不定期休)
※営業日時はinstagramで事前確認

こだいらオープンガーデン
※登録25カ所(令和5年時点)の一覧、開催時期、連絡先を記載

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