マンション管理の課題、居住者の高齢化、空室の増加など浮き彫りに。国交省のマンション総合調査結果を徹底解説!大規模修繕工事の重要性や影響は?

居住者の高齢化、空室の増加…マンション管理の課題が浮き彫りに。国交省のマンション総合調査結果を徹底解説!大規模修繕工事の重要性、実行可能性とは?

国土交通省では、マンション管理の実態を把握するため、5年に一度「マンション総合調査」を実施している。このたび、令和5年度(2023年度)の調査結果がまとまり、それが公表された。その結果には、マンション管理のさまざまな課題が浮かび上がっている。詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
「令和5年度マンション総合調査結果(とりまとめ)」を公表/国土交通省

居住者の高齢化、賃貸化や空室の増加…課題が多いマンション管理

まず、全国のマンションの居住実態を見ていこう。

居住者の世帯主年齢は、70歳以上比率が増え続け、5年前の前回調査(平成30年度)の22.2%から3.7%増加の25.9%に達した。マンションに住む4世帯に1世帯は70歳以上ということになる。なかでも、昭和59年(1984年)以前のマンションに限ると、70歳以上の割合は55.9%にまで増え、築30年以上経つマンションでの居住者の高齢化が著しいことが分かる。

■マンション居住の状況 世帯主の年齢(マンション完成年次別)

世帯主の年齢(出典:国土交通省の報道発表資料より)

世帯主の年齢(出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果(とりまとめ)」報道発表資料より)

各マンションの戸数に占める「空室住戸」(3カ月以上空室)の割合は、「0%(空室住戸なし)」が55.4%、「0%超~20%」が33.2%、「20%超」0.8%がだった。ただし、築30年以上経つ(1984年以前築)マンションでは、空室率「0%超~20%」の割合が56.8%にまで増加するのだ。

また、賃貸戸数の占める割合は、「0%(賃貸住戸なし)」が12.8%、「0%超~20%」が62.3%、「20%超」が15.5%だった。区分所有者(住戸の所有者)が転勤などさまざまな理由で違う場所に住み、そこを賃貸に出す事例が一定数あることは想定できるが、「20%超」となると懸念水準だ。こちらも、築30年以上経つ(昭和59年(1984年)以前築)マンションでは、賃貸率「20%超」の割合が28.2%に増加する。

高齢化や空室化、賃貸化が問題となるのは、管理組合の活動に支障が出るからだ。マンションの管理組合は、区分所有者で構成され、総会で多数決により重要な事項を決めていくのが原則。一般的にマンションに居住する区分所有者が、理事などの役員となって組合の運営をしていく。

区分所有者が空室で住んでいない、あるいは外部に居住して賃貸している数が多いと、役員のなり手不足や総会の議決定数に達しないなど、いろいろな問題が生じる可能性がある。高齢化を理由に組合活動に参加しないという場合も同様だ。築30年以上のマンションでは、これらが重なることで、管理組合の活動に円滑に進まないことが強く懸念される。

大規模修繕工事が実施されないと、資産価値の減少や居住性の低下に

マンション管理で重要となるのは、管理組合が適切に活動していることに加え、必要な大規模修繕工事を計画的に行うことで、マンションの居住性が下がったり資産価値が下がったりすることを抑制することにある。

おおむね12年程度ごとの大規模修繕工事を計画的に実施するためには、その費用を支払う資金を準備する必要がある。そのため、「長期修繕計画」を立てて、修繕積立金をしっかり集めることがカギに。国土交通省が推奨する長期修繕計画は、現在では「2回の大規模修繕工事を含む30年以上」となっているが、その前は「25年以上」とされていた。

「長期修繕計画」については88.4%の管理組合が作成していると回答しているが、「25年以上の長期修繕計画に基づいて修繕積立金を設定している」となると、59.8%と約6割にとどまる。その結果、計画上の修繕積立金の積立額と実際の積立額が「計画に対して不足している」という管理組合が36.6%(「20%超の不足」11.7%+「10%超~20%の不足」3.7%+5%超~10%の不足)2.9%+「5%以下の不足」18.3%)もある。

■マンションの修繕積立金の修繕

修繕積立金の積立状況(出典:国土交通省の報道発表資料より)

修繕積立金の積立状況(出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果(とりまとめ)」報道発表資料より)

わずかな不足であればさまざまな対応方法も考えられるが、大幅に不足している場合は、その時の区分所有者から不足分を一時徴収するか、必要な工事を行えないかといったようなことになるのだ。

マンションは社会の変化に対応する必要もある

長期修繕計画に盛り込まれるのは、経年劣化するものを建設当初の機能に戻すための工事となる。ところが、20年、30年と経つと私たちの暮らし方も変わってくる。近年は、ECサイトで商品を購入して配送してもらうスタイルが定着している。一方で、運送業界の人手不足もあり、宅配ボックスや置き配などに対応する必要性が高まっている。

今回の調査で、宅配ボックスの設置状況を聞いたところ、半数近くが「施工当初から(宅配ボックスが)設置されている」(49.2%)と回答し、「後から設置した」(8.2%)と合わせると57.5%のマンションに宅配ボックスが設置済みとなった。設置台数は、「5~9台」(36.1%)と「10~14台」(34.9%)が多かった。

宅配ボックスの設置状況(出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」より)

宅配ボックスの設置状況(出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」より(作成/SUUMOジャーナル編集部)

宅配ボックスが設置されていたとしても、台数が足りないなどで設置し直す必要があったり、新たに設置することになったりする際に、修繕積立金の積立額に余剰があれば、宅配ボックスの設置の合意が取りやすい。マンションの機能を維持するためだけでなく、新たなニーズに対応するためにも、修繕積立金は重要なのだ。

なお、「置き配に関するルールを決めていない」マンションは、86.0%と大半だった。置き配に関する管理規約又は使用細則に置き配を規定し、「置き配を全面禁止」としているマンションは2.5%だった。

さらに、マンションの駐車場も課題に挙げられる。車を所有する若者が減少しているといわれているが、マンションによっては駐車場に空きが出る事例も増えている。管理組合に入る駐車場の使用料は、修繕積立金に充当(管理費に充当するマンションもある)されるので、長期修繕計画が狂う要因にもなる。

また、近年は脱炭素の流れから電気自動車が急速に普及している。マンションの駐車場に「電気自動車充電設備」が設置されているのは、まだ5.7%しかない。電気自動車が普及すればするほど、設置していないマンションは買い手に選ばれない可能性が出てくるので、今後検討したい課題となるだろう。

こうした課題に取り組むのは「理事会」になるが、一般的に理事会の役員は1年あるいは2年で交代する。新たな課題に継続的に取り組むには、管理組合の理事会とは別に専門委員会(例えば駐車場委員会など)を設置するのが効果的だ。ただし、専門委員会を設置するためのルールづくりなども必要で、管理組合が適切に活動していなければそれも難しくなる。

マンション管理には課題も多いので、国土交通省でも、修繕積立金のガイドラインを作成したり、外部の専門家を活用する道筋をつくったりと、さまざまな手立てを打っている。ただし、管理組合自身がそれぞれの課題をどう解決するか真剣に向き合わない限り、先に進むことは難しい。

マンションを買って住む場合、自動的に管理組合に入ることになるので、管理に対して関心を持ち、活動にも積極的に参加してほしい。構造部分から水漏れしない、蛇口からきれいな水が出る、安心して共用の廊下やエレベーターを使えるなどは、当たり前のことではなく、適切な大規模修繕工事が行われてこそ得られるものだから。

●関連サイト
国土交通省「高経年マンションに居住する70歳以上の世帯主が半数以上に~令和5年度マンション総合調査結果(とりまとめ)~」
令和5年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状

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