医師リタイア後、74歳女性の人生を輝かせる「バラの庭」におじゃまします! “花友だち”と旅行など在職中は諦めていた人生を再経験中 中山さん・こだいらオープンガーデン

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医師リタイア後、74歳女性の人生を輝かせる「バラの庭」におじゃまします! “花友だち”と旅行など在職中は諦めていた人生を再経験中 中山さん・こだいらオープンガーデン

丹精込めた個人の庭を一般に公開し、地域の人々に自由に立ち寄ってもらう「オープンガーデン」。それぞれが個人で始めたものではあるが、東京都小平市では17年前から、マップを作成したり、散策ツアーを企画するなど、まちならではの文化として積極的にPRをしている。2023年時点で25カ所が登録中だ。
その「庭をつくるひと」にインタビュー。「庭に込めた想いと、この庭で得られたもの」とは? 今回ご紹介するのは、バラいっぱいのガーデンを手掛ける中山庸子さん。

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「美しいものが好き」を叶える美しい薔薇は、まるで宝石

もともと小児科の医師だった中山庸子さんのお庭は、バラが主役。撮影に訪れた5月半ばはまさに「薔薇の花園」。通る人誰もがふと立ち止まらざるを得ないほど。
「まるで宝石箱のようでしょう。私はジュエリーをそんなに持っていないけれど、この庭は入るだけで気持ちが華やぐ、私のジュエリーボックスなんです」

医師リタイア後、74歳女性の人生を輝かせる「バラの庭」におじゃまします! “花友だち”と旅行など在職中は諦めていた人生を再経験中 中山さん・こだいらオープンガーデン 小道を入っていくと、そこはまさに“薔薇の花園”。花の種類は約300種類ほど。そのうち薔薇は70種類だとか(写真撮影/片山貴博)

小道を入っていくと、そこはまさに“薔薇の花園”。花の種類は約300種類ほど。そのうち薔薇は70種類だとか(写真撮影/片山貴博)

色はピンク、ローズ、パープルなどの色合いのもの、白、ベージュなどがメイン。「ロマンチックな雰囲気が好きなんです」(写真撮影/片山貴博)

色はピンク、ローズ、パープルなどの色合いのもの、白、ベージュなどがメイン。「ロマンチックな雰囲気が好きなんです」(写真撮影/片山貴博)

庭づくりは約20年前。医師として多忙のなか始めたもの

中山さんがこの庭を始めたのは20年ほど前。以前、開業した医院の目の前には、母が暮らす家があったが、母が亡くなり更地に。そこで本格的な庭づくりを始めた。

10年前、今は亡き母と診療着姿で撮った写真(写真提供/中山さん)

10年前、今は亡き母と診療着姿で撮った写真(写真提供/中山さん)

「小さなころから花が好き。いずれ一軒家で庭を持ちたい、なんて夢が漠然とあったんです。だったら始めてみようと挑戦しました。それに、病院を訪れるご家族にふっと寄ってもらえるような場所をつくれたらという想いもありました」

現役の医師だったころ、仕事、育児と多忙な日々を送っていた中山さんにとって、花を慈しみ育てる時間は癒やしの時間。医院の窓から眺める咲き誇る花の景色は圧巻だったとか。
「今では、昔来院していた女の子がママになって訪れることもあります」

庭の奥には、花の木陰の下で、腰かけるスペースもある(写真撮影/片山貴博)

庭の奥には、花の木陰の下で、腰かけるスペースもある(写真撮影/片山貴博)

正直、薔薇は育てるのに手間のかかる花。病害虫対策のため薬剤の散布も不可欠だ。「水やり、剪定、落ちた花びらの掃除、やることは次から次へと出てくるんです」(写真撮影/片山貴博)

正直、薔薇は育てるのに手間のかかる花。病害虫対策のため薬剤の散布も不可欠だ。「水やり、剪定、落ちた花びらの掃除、やることは次から次へと出てくるんです」(写真撮影/片山貴博)

リタイア後は、花への情熱が加速。生活も激変

2年前、病院を閉院し、医師を引退。それ以来、庭で過ごす時間は各段に増え、気候が温暖な季節の日中はほぼ庭で過ごすことも多いとか。
「”お花素敵ですね”と声をかけてくださる方が増えました。顔見知りにもなり、だんだん、お花以外の話題になったり。犬の散歩をしながら立ち寄ってくださる方もいて、犬好きなので楽しいです」

こうした交流は、中山さんにもある気づきを与えた。
「この地にきて36年、こんなふうに近所付き合いしたのって、初めてなんじゃないかなぁって思ったんです。私はいつも地域の人々にとっては、小児科の『中山先生』。仕事もとにかく忙しくて、ママ友をつくっておしゃべり、なんて時間もないまま突っ走ってきたんです」

医師の生活は過酷だ。自分の病院を切り盛りしながら、3人の子どもの育児・教育に邁進した。母やシッターなど、多くの助っ人の手を借りながらだが、命に関わる職業だけに、仕事の現場で「もっとこうすればよかったかも」と悩み、それがプライベートの時間まで続くこともあった。
医師を引退したきっかけは、年齢的に「これ以上続けてしまったら、なにか間違いがあった、ではすまされないと思ったから」だ。

4年前の診療着姿の中山さん。コロナ禍の初期に地域の子どもたちが感謝状を持ってきてくれたときの写真。「実家が医師一家。子どもが好きで、自然と小児科をめざしていました」(写真提供/中山さん)

4年前の診療着姿の中山さん。コロナ禍の初期に地域の子どもたちが感謝状を持ってきてくれたときの写真。「実家が医師一家。子どもが好きで、自然と小児科をめざしていました」(写真提供/中山さん)

「子どもたちには心配されましたよ。『あんなに忙しかったのに、急に暇になってどうするの』って」

ところが中山さんには、この「庭」があった。まるで宝石箱のような、ドレスを並べたワードローブのような、手間をかけた分だけ美しく咲く花であふれる庭。そしてそれを愛でて、楽しんでくれる方たち。

(写真撮影/片山貴博)

(写真撮影/片山貴博)

「時間がなくて諦めてしまったことを、今はとことんできるのが楽しくてしょうがないです」

時間がたくさんできたことで庭づくりは加速。花の種類も増え、本宅の前にも花を植え、道の両側に花々を愛でる道になった。

もともとの庭は左側のみだったが、右側の自宅前の花壇にも(写真撮影/片山貴博)

もともとの庭は左側のみだったが、右側の自宅前の花壇にも(写真撮影/片山貴博)

落ちてしまった花は水を張ったバケツに入れて自宅の前に置いておき、訪れる人の目を楽しませている。庭園で過ごす時間が増えたため、満開を過ぎた薔薇を、訪れた方に剪定ついでにプレゼントする機会もできた(写真撮影/片山貴博)

落ちてしまった花は水を張ったバケツに入れて自宅の前に置いておき、訪れる人の目を楽しませている。庭園で過ごす時間が増えたため、満開を過ぎた薔薇を、訪れた方に剪定ついでにプレゼントする機会もできた(写真撮影/片山貴博)

花を通して広がるコミュニティ。諦めていた人生を再経験している

今では花づくりを通して、情報交換のできる「花友だち」ができ、北海道のバラ園、高知モネの庭など、旅行を一緒にすることもある。
「まさか、こんな年齢で新しい友だちができると思わなかったんです。家族からも“楽しそうでよかった。若返ったんじゃない?”って言われました」

花友だちと行った「中之条ガーデンズ」(群馬県)(写真提供/中山さん)

花友だちと行った「中之条ガーデンズ」(群馬県)(写真提供/中山さん)

リタイア後は当然、近隣に住む孫たちと過ごす時間が増えた。保育園のお迎え、夕方以降の預かりの助っ人になることも多い。
「息子の妻、義理の娘が小児科医。多忙な彼女を手助けすることで、今も間接的に子どもたちを助けることになっていたらいいですね」

この庭園は孫たちの格好の遊び場。孫たちは虫も大好き。「この花なに?」「ジギタリスよ、心臓のお薬になるの」と、中山さんの返答もさすが(写真撮影/片山貴博)

この庭園は孫たちの格好の遊び場。孫たちは虫も大好き。「この花なに?」「ジギタリスよ、心臓のお薬になるの」と、中山さんの返答もさすが(写真撮影/片山貴博)

「よくよく考えたら、夫が帰ってきたら、お帰りなさいと言って温かいご飯を用意する。私の世代なら当たり前のことを、私はあまりやっていませんでした。
庭で花々を丹精込めて育て、のんびりおしゃべりする。もしかしたら、こんな人生もあったのかな?って思ってみたり。この庭があったことで、時間を前向きに使うことができたのだと思います」

「思っていた以上にリタイア後の生活はすごく充実しています。とはいえ、もし生まれ変わっても、子どもたちを救う医師になりたいですね」(写真撮影/片山貴博)

「思っていた以上にリタイア後の生活はすごく充実しています。とはいえ、もし生まれ変わっても、子どもたちを救う医師になりたいですね」(写真撮影/片山貴博)

医師の現役時代は、多忙な毎日を癒やす趣味の場であった庭園が、第二の人生において、新たな「自己実現」と「コミュニティ」の場となる。中山さんにとって、決して意図したものではないけれど、「憧れていたけれど、選ばなかった人生」を辿る舞台になっているといえるだろう。

(写真撮影/片山貴博)

(写真撮影/片山貴博)

●取材協力
中山さん
【住所】東京都小平市鈴木町1-30-89
【TEL】042-322-1231
【開放日】通年
※駐車場あり

こだいらオープンガーデン
※登録25カ所(令和5年時点)の一覧、開催時期、連絡先を記載

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