私たちは常に「最後の今」を生きている――。人生を豊かにする時間の法則について記した一冊

私たちは常に「最後の今」を生きている――。人生を豊かにする時間の法則について記した一冊

 今からするのは、ある仮定のお話です。あなたはある日、たまたま入った喫茶店でおいしそうなプリンを見つけました。プリン好きのあなたは「食べたい!」と思いますが、その一方で、あなたは現在ダイエット中のため甘いものを控えている状況です。こんなとき、あなたならそのプリンを食べますか、それともガマンしますか……?

 もし時間が無限に存在していれば、「プリンを食べて、そのあとでダイエットすればいい」という考え方もあるでしょう。けれど、人生とは終わりがあるもの。私たちは限られた時間の中で、「食べる」という「幸福の時間」を選ぶのか、「ダイエットを成功させるために我慢する」という将来への「投資の時間」を選ぶのかを決めなくてはなりません。時間について考えるということは、どんな選択をして、どんなふうに生きるのかを考えることでもあると言えます。

 こうした「やっかいな時間を自分の手に取り戻し、人生を豊かにするためにどうしたらいいか」というテーマで書かれたのが、今回紹介する『このプリン、いま食べるか? ガマンするか? 一生役立つ時間の法則』。

 著者は『パン屋ではおにぎりを売れ 想像以上の答えが見つかる思考法 地味だけど一生役立つ「考える技術」』や『バナナの魅力を100文字で伝えてください 誰でも身につく36の伝わる法則』でも知られる柿内尚文さんです。

 柿内さんは、人生は「幸福の時間」「投資の時間」「役割の時間」「浪費の時間」の4つの時間からできているとし、その中でも特に大切なのは「幸福の時間」を増やすことだと記します。けれどそうそう毎日幸せなことばかりが転がっているわけではありません。

 同書では、「『やらなければいけないこと』を『やって楽しい』に変換できないか考える」「新しいネーミングをつけて時間の価値を変換する」といった、幸福の時間を増やすためのさまざまな方法が紹介されています。このハウツーを身につければ、仕事や通勤、付き合いなど、これまで無駄や退屈さを感じていた時間が、有意義でポジティブなものになるかもしれません。同じことをするのでも、その時間についてどのような価値を見出すかによって私たちの人生に大きな変化があることが同書を読むとわかります。

 ここで最初の話に戻りましょう。ダイエット中だけどプリンを食べるという選択をした場合、「なぜガマンできなかったんだ。自分はなんて意志が弱いんだ」と思ってしまう人もいるかもしれません。これは「後悔方向に感情がいくクセがついている人」(同書より)であり、それよりも目を向けたいのは「食べたことの価値」の認識だと柿内さんは言います。

 人生には思い通りに選択できないことも多々ありますが、大切なのは「もし不本意や妥協の選択をしてしまっても、なるべく後悔しないで価値を見つける」(同書より)こと。こうした心の持ちようも、「幸福の時間」を増やすためには大切なのではないでしょうか。

 「人も、時間も、一期一会」(同書より)。時間というものは常に過ぎ去ってゆくもので、今というこの瞬間すらすぐさま過去になります。せっかく大好きなプリンを食べるのならば、最高においしい方法で味わおう――同書は私たちの人生を豊かにするための時間の法則について教えてくれる一冊です。

[文・鷺ノ宮やよい]

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