デング熱など熱帯病までカバー、インドネシア発オンライン保険サービス「Qoala」に日本からも出資
新興国の経済発展に伴い、さまざまなものが売れるようになると、社会に求められるのが「保険」である。
たとえば、自動車を買う時はそれと同時に自動車保険にも加入する必要がある。路上の安全のためには、誰しもが保険に入っていなければならない。そこで最近では手軽な保険加入を実施できるアプリが東南アジアで急速普及している。
インドネシアに拠点を置くQoalaは、2018年に設立されて以来、インドネシアのみならず国外進出を実現しているオンライン保険サービスである。
オンラインで各種保険に加入
ASEAN諸国の市民にとって、今やスマホは生活必需品だ。
日本の高度経済成長期には常にテレビがあったように、東南アジア諸国の高度経済成長期には常にスマホがある。あらゆることをスマホで実施できるということに人々が気づくと、まるでスポンジに浸透する水のようにスマホが急速普及した。
Qoalaはブラウザもしくはスマホアプリで手軽に保険加入ができるサービス。車、バイク、入院、生命、旅行(近日公開予定)、そしてスマホ保険(近日公開予定)なるものも用意されている。
これらの保険商品はQoalaが開発しているわけではなく、大手保険会社がQoalaに参画しているという形だ。チューリッヒやアクサといった、日本でもよく知られている会社のロゴもある。それらのビッグネームが提供する商品をQoalaのプラットフォームで条件に応じてマッチングする、という表現が妥当だろうか。
コールセンターやメールによるヘルプにも対応しているが、基本的にはアプリ操作のみで契約を完結させられる仕組み。保険証書もデジタル化されている。
デング熱保険も完備
Qoalaが「いかにも東南アジアらしい」と思える点は、熱帯病保険という商品が用意されている点だ。
熱帯病とは、デング熱や発疹チフス、マラリアである。その中でもデング熱は、異常気象の影響もあり近年患者数が急増している。各国政府はデング熱撲滅の策を練っているが、同時に「デング熱患者向けの医療体制」の構築も急務だ。民間企業による熱帯病保険の開発は、当該国の医療インフラを下支えする。
「デング熱は全身の関節がことごとく痛む恐ろしい病気」とは、実際に感染した経験のある人の言葉である。
そのような熱帯伝染病に対応する保険商品も取り扱うQoalaは、すでにインドネシア国外3か国に進出している。タイ、マレーシア、ベトナムである。
2024年3月、QoalaはPayPal VenturesとMassMutual Venturesが主導するシリーズC投資ラウンドで4,700万ドルを調達した。同社の800万以上の取り引き実績こそ、各国の投資家が注目の視線を向けるには十分過ぎる材料ともいえそうだ。
UFJフィナンシャル・グループが投資に参加
この投資ラウンドについてもう少し詳しく説明すると、日本の三菱UFJフィナンシャル・グループの連結子会社である三菱UFJイノベーション・パートナーズも出資者の中に名を連ねている。
この出資は、インドネシア現地のダナモン銀行とUFJフィナンシャル・グループの戦略的パートナーシップ締結という結果にもつながった。今後はQoalaを軸とした東南アジアの保険事業拡大へ本格的に踏み出すと思われる。
ASEAN加盟国の人口は2022年の時点で約6.7億人(参考)。平均年齢が若く、耐久消費財や旅行に対する需要は旺盛の一言である。それに付随する保険商品の需要も、当然存在する。
Qoalaはスマホアプリで加入手続きを完結できる保険提供プラットフォームの潜在力を証明し、東南アジアのライフスタイルを変革しようとしている。巨額の資金調達に成功したQoalaは、今後も保険商品の種類を増やしながらより多くの顧客を取り込んでいくだろう。
参考・引用元:
Qoala
三菱UFJイノベーション・パートナーズ
(文・澤田 真一)
ウェブサイト: https://techable.jp/
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