酵母ベースのプロテイン「ProteVin」開発、人口増による世界のたんぱく質需要へ一手

世界的な人口の急増により、将来的にたんぱく質が不足するといわれており、持続可能なたんぱく質供給は世界が取り組むべき課題になっている。プロテインというと肉や魚など動物性の食材を想像しがちだが、プロテインには動物性、植物性などさまざまな種類のものがある。

特に植物性のプロテインには、自然環境への影響が少ないことや動物愛護の観点など、動物性のプロテインにはないメリットがあり市場でも注目が高まっている。

こうした状況のなか、中東のイスラエルでは、ヨクネアムに拠点を置くフードテックスタートアップ“Nextferm”が酵母ベースのプロテインを開発した。

世界のたんぱく質需要に加え、ヴィーガンの人やヒンドゥー教徒をターゲットにした開発により、Nextfermは今注目を集める代替食品市場で最も成長する企業として話題を集めている。

イスラエルのフードテックスタートアップNextferm

Image Credits:Nextferm

Nextfermは、2013年にCEOであるBoaz Noy氏によって創業されたイスラエルのフードテックスタートアップだ。

同社の経営陣は、栄養成分・医療食品メーカーのEnzymotecの元財務担当副社長や元COO兼生産マネージャーなどから構成されている。Enzymotecは2013年にNASDAQに上場し8000万ドル以上の収益を上げ、時価総額3億ドルとなった企業で、Nextfermの成長にも期待ができる。

Nextfermは、人に最適な栄養価をもつ発酵ヴィーガンプロテイン“ProteVin”の開発に成功。同社が開発したProteVinは、非遺伝子組み換えのヴィーガンプロテインとしては唯一とされる、栄養、味、パフォーマンスに妥協することなく、動物性タンパク質を代替できる製品だ。

ProteVinには、非遺伝子組み換えの酵母菌株が使われている。製造のための動物を育てるのに大規模な土地や水を必要とする動物性プロテインに比べ、酵母菌株を使用したプロテインは製造に必要な土地や水、CO2の排出量が少ないという。

人口増加に反して資源が減少する昨今、ProteVinは今後増加することが予想されるたんぱく質需要に持続的に応えることができる革新的な製品といえるだろう。

酵母ベースのプロテイン「Protevin」

Image Credits:Nextferm

Nextferm独自の発酵プロセスによって生産された非遺伝子組み換えのヴィーガンプロテインのProtevinは、ヴィーガンが多い中東地域のみならず健康ブームが広がる世界の需要に応える製品として期待されている。

Image Credits:Nextferm

Protevinは、栄養面でも高い評価を受けており市場競争力が高い。Protevinにはロイシンを含む分岐鎖アミノ酸をはじめ、高レベルな“必須アミノ酸”を含有しており、その栄養価は動物性プロテインと遜色ない。

また摂取したProtevinは、迅速で効果的に人の体に吸収・利用され、PDCAAS(たんぱく質消化性補正アミノ酸スコア:たんぱく質の消化および吸収の効率を示す指標)は最大値の1だ。

さらに注目したいProtevinの特色は、他の食品と合わせて食べても本来の風味や味を損なわない手軽さにある。高齢者や乳幼児の食事に追加することで手軽に栄養補助できそうだ。元から風味が付いておりドリンクに溶かして飲まれることが多いプロテイン製品にはない強みだ。

この強みは、他社の製品に追加しても風味を損なわずに栄養を付加することができるとして、EUの食品メーカーであるBonMushをはじめ、多くの食品会社や栄養補助食品会社から注目されている。

成長するイスラエルのヴィーガン食品市場

Nextfermが拠点を構えるイスラエルは、世界有数のヴィーガン大国として知られている。ジェトロ(日本貿易振興機構)によるとイスラエルは国民の74%がユダヤ教、18%がイスラム教であり、ヴィーガン人口の多さは宗教が深く関わっていると考えられる。

しかしそれだけでなく、近年の健康志向ブームも相まって、イスラエルの総人口の5%がヴィーガンであるといい、その数は着実に増加しているとのこと。

市場におけるヴィーガン需要の高まりを受け、2024年3月にNextFermはインドでProteVinの最初の生産ラインを完成したと発表。

この製造施設はインドの酵母製品業者であるKothari Fermentation and Biochemとの契約に基づいて設立された。ここを拠点に、NextfermはProteVinの販売強化と新規顧客の獲得に乗り出す予定だ。

今年は施設の本格稼働に力を入れ、生産量の増加により年間約400万ドルの売上を達成する試算だ。成長するヴィーガン市場で、Nextfermはさらなる成長が見込まれる。

さらなる技術開発で期待される収益増加

Nextfermは今後、ProteVinの生産工程で副産物として得られる高品質の酵母エッセンスを用い、調理中や調味料に使われる酵母エッセンスの製造を計画 している。今後本格的に市場に進出するとのことだ。

Mordor Intelligenceによると、酵母・酵母エキス市場は2024年から2029年にかけてCAGR 10.01%で成長すると予測されており、主軸となるProteVinの収益増加に加えて新たな主力製品となりそうだ。

一方ProteVinもまた、これまでに多くの食品企業とのコラボ商品の販売を行っており、アメリカとヨーロッパで“ProteVin”のブランド名が付けられた商品が販売されている。

2022年の発売開始から、すでに100社以上の企業から高い評価を受け、4社からスポーツパウダーの材料として採用され、市場に前例のない最高水準の新製品開発を称えるEdison Awardsを受賞している。

食品の風味を損なわない酵母ベースのヴィーガンプロテインという他社にはない強みを生かし、今後もProteVinはさまざまな代替製品に採用されるだろう。

成長する市場の後押し

ボストン コンサルティング グループによると、代替製品市場は、2035年までに2900億ドルまで成長すると予想されている。 2035年までに世界中で摂取される肉、卵、乳製品、魚介類の10分の1は代替たんぱく質から作られると予測されている。

昨今の健康志向、筋トレやダイエット時のたんぱく質補給にも“欠かせない”とされているプロテイン。さまざまな視点から今後も伸びるであろうたんぱく質需要に応え、技術開発を続けるNextfermの動向に注目したい。

参考・引用元:Nextferm

(文・Sachi)

  1. HOME
  2. デジタル・IT
  3. 酵母ベースのプロテイン「ProteVin」開発、人口増による世界のたんぱく質需要へ一手
Techable

Techable

ウェブサイト: https://techable.jp/

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。