創業1年で急成長、高等教育に特化したインドのオンライン教育RiseUpp

インド教育省は、同国の高等教育に関して大きく分けて2つの目標を立てている。それは、テクノロジーの活用により、高等教育へのアクセスが難しい地域と、そうでない地域の格差を解消すること。そしてもう一つが、高等教育の総就学率(GER:Gross Enrolment Ratio)を引き上げることだ。

国家教育政策では、2035年までに高等教育への進学率を50%以上に増加させることを目標として掲げている。全インド高等教育調査の報告書によると、2019~2020年のインド高等教育における総就学率は27.1%だという。

ただ、2019年時点のOECD加盟38ヵ国の高等教育への総就学率は平均57.0%、そして日本の同数字は74.1%であることから、インドにおけるGERは未だに低いことが伺える(参考)。

とはいえ、2017~2018年のインド高等教育における総就学率25.8%、2018~2019年の総就学率26.3%から年々着実に増えていることを考えると、今後も増加すると期待できそうだ。

国の方針に加え、数年に及ぶコロナ禍という状況により、インドでは急速にEdTech市場が拡大している。そのような中、誕生したのがオンラインコースのマーケットプレイスRiseUppだ。

2,500+のコースを用意する「RiseUpp」

Image Credits:RiseUpp

RiseUppのサイトでは、高等教育・専門分野に特化した多様なオンラインコースを様々な切り口から検索できる。

Image Credits:RiseUpp

就職保証コース・就職後払いコースなどユーザーの予算や経済状況。学士/修士/博士号、MBAなどの学位。銀行・金融、クラウド・コンピューティング、企業法務、データサイエンス・ビジネスアナリティクス、デジタルマーケティング、ITとソフトウェア、オペレーション・マネジメント、税務などの分野などがある。

独自に開発されたアルゴリズムにより、その中から学習希望者に最適なコースが提示される。

学習希望者にとって心強いのは、『ヒト』によるカスタマーサービスも提供されていることだ。RiseUppにはリアルタイムで質問・相談ができるインタラクティブなチャット機能もついている(ただし営業時間内のみ)。同社の共同創設者兼CEOのHari Rastogi氏がMediumで公開した記事によると、必要に応じて専門のカウンセラーにも無料で相談することもできるという。

Image Credits:RiseUpp

RiseUppによるマーケットプレイスの特徴は、透明性と規模にある。各コースの金額と実際に受講した人からのユーザーレビューとコース評価が一目でわかるように掲載されている。無料でコースを試すこともできる。さらに、コース受講によりポイントを獲得することができ、次回講座の割引や、現在受講中の講座の奨学金制度が利用できるという高等教育の世界において画期的なサービスを提供している(参考)。

現在、RiseUppでは50以上のプロバイダーから2,500以上のコースが提供されているが、ユーザーフレンドリーなインターフェースで、直感的な検索機能でユーザーが適切なコースを簡単に見つけられるよう工夫されている。

Best Edtech Company of the Yearを受賞

RiseUppは2022年に、Hari Rastogi氏(CEO)とNavneet Kumar氏(元CTO)によって設立された。二人は、インド経営大学院(IIMs:Indian Institutes of Management)とインド工科大学(IITs: Indian Institutes of Technology)当時の卒業生であった。両校ともインドの優秀校である。

その後、業界を牽引するIT多国籍企業でおよそ10数年間働いたRastogi氏。自分自身が受けた教育と身に付けた技術力によって、キャリアを積むことができ、人生が豊かになったという経験から、次第にインドの人材教育・育成に携わりたいと思うようになったという。

Rastogi氏がまず考えたのはオンラインコースの将来性。世界1位の人口、世界7位の国土、富の85%は人口の10%が所有しているという格差社会。このような状況にあるインドにおいて、オンラインコースは、柔軟性、アクセスのしやすさ、比較的手頃な価格という点からも、社会貢献度性が高いと感じたという。

しかしながら、コロナ禍で急増したオンラインコースは、2022年の段階で、既に100万を超えるカリキュラムと4,000を超える教育機関が存在しており、学習希望者が適切なコースを見つけるのが困難な状況にあった。さらに、コースに関する詳細や情報も不足しており、比較基準も統一されていなかった。当時、レビューや評価システムがあるコースは5%程度に過ぎなかったという。

そこで、学習希望者が自身のキャリア目標に沿ったオンラインコースを素早く見つけ、効率よく比較、登録できるプラットフォームを作ることをRiseUppのビジョンに掲げた。Rastogi氏は自身のLinkedInでこのように語っている。

RiseUppは単なるビジネスではなく、社会的インパクトのあるベンチャーだと信じています。私たちは、インドや世界中の学習者が夢やキャリアを実現し、時代に遅れを取らず、持続的に活躍できる力がつくようサポートしています。

実際、RiseUppでは、オンラインコースだけでなく、キャリア・メンターからのガイダンスも提供しているという。

RiseUppの成長は目覚ましい。その設立から1年後の2023年には、早くもBest Edtech Company of the Yearを受賞。ユーザー数は10,000人を超え、急成長を遂げている。

2024年3月には、エンジェル投資家、ベンチャーキャピタル向けのプレゼンもしており今後、どのようなビジネス展開を計画しているのか楽しみだ。

参考・引用元:RiseUpp

(文・CANAL.KASAI)

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