イスラエルPrevera、保存料に頼らない食品保護技術で持続可能な食糧供給へ一手

昨今、健康ブームの広がりにより健康志向の消費者が増え、安全で健康的な食品に対するニーズが高まっている。スーパーの売り場で食品を検討する際、価格だけでなく食品の安全性も意識されることが少なくない。

実際、GfKが2017年に行った健康維持の方法に関するグローバル調査によると、世界では65%もの人が身体の健康を保つための方法として健康的な食事をすることを重視しており、多くの消費者の食に対する意識が高まっていることが分かる。

このように食に対する意識が高まる一方、サプライチェーンのグローバル化により食糧供給のグローバル化が急速に拡大し、食品の多くが長期輸送されるようになった。この長期輸送に伴って食品の外観を長く維持し、また保存可能期間を延長する必要があるため、食品にはさまざまな食品添加物や保存料が使用されている。

さらに、スーパーマーケットにおける大量の食材の在庫保有と長期保管により、消費者が口にする食品には多くの食品添加物や保存料が含まれている。今後は、増え続ける人口を養う食糧供給に向けてさらに多くの食品がグローバルに流通することが見込まれ、食品添加物と保存料が使用が増加することも予想される。

健康ニーズに応えながら、食の安全性と持続可能性を確保することが求められるなか、イスラエルでは250以上のスタートアップ企業がこうした課題に向けたソリューションを開発していると現地メディアが報道。その一つが、イスラエルのアシュドッドに本社を置くPrevera社だ。

本記事では、Prevera社の「食の安全性」に関する社会課題を解決するソリューションとその技術について紹介していく。

イスラエルのフードテックスタートアップ “Prevera”

Image Credits:Prevera

Prevera社は「Protecting our source of life」というモットーのもと、消費者にも環境にも優しい食品保存製法を採用した、食品・飲料保護ソリューションを提供するイスラエルのフードテックスタートアップ。

同社はエルサレムのヘブライ大学(The Hebrew University of Jerusalem)の研究成果をもとに、抗菌性ショート・プロテインを活用し、有害な保存料を使わずに食品の保存期間を延長する技術の開発に成功。これにより食品廃棄物を削減しながら、サプライチェーンのどの段階においても安全で健康な食品を提供するソリューションを生み出した。

Prevera社は、Gal Shamri氏(CEO兼共同創設者)とZvi Hayouka氏(共同創設者兼発明者)らにより2020年に創立された。Gal Shamri氏は、産業市場で事業を展開するハイテク企業で25年の経営経験を持ち、戦略的視点と実行力で多国籍チームを率いて同社のビジネスをリードする。

一方、Zvi Hayouka氏は化学博士でエルサレム・ヘブライ大学で准教授を務める人物。他にも微生物学、生化学、分子生物学、細胞生物学の分野で豊富な経験を持つメンバーが結集し技術開発を進めている。

なお同社はフードテックのインキュベーター兼投資家であるThe Kitchen FoodTech Hub、イスラエル政府の支援部門のIsrael Innovation Authority、 イスラエルの食品メーカーStrauss Israelとパートナーシップを結んでいる。

安全で健康的な食品を実現する“食品保護プロテイン”

Image Credits:Prevera

Prevera社は多くの食品に不健康な保存料が含まれ、その他の食品が賞味期限を短くし、腐敗レベルを高める方法に頼っている状況を鑑みて、“食品保護プロテイン”ソリューションを開発した。

同ソリューションは、関連する病原体から食品を保護する強力な抗菌タンパク質を形成する“天然必須アミノ酸の混合物”を利用して、食品の保存期間を延長する食品保存製法にもとづくものだ。

同社によると、現在多く使用されている食品添加物や保存料に代わるもので、消費者の健康に悪影響を与えない画期的な技術であるという。

なぜ健康に悪影響を与えないのか?

Image Credits:Prevera

Prevera社の食品保護プロテインは、消化されると元々の天然必須アミノ酸に分解され、人の腸内に存在するマイクロバイオームに影響を与えない。マイクロバイオームとは、体の表面や腸内、口腔などに存在する多様な微生物の集合体のことだ。健康や疾患に関与すると考えられている。

同社が開発した食品保存製法を用いれば、人の健康を害することなく食品を長期間保存できるほか、保存期間の延長により食品廃棄物の削減も期待できる。

食糧供給のグローバル化と人口増加による食品の長期輸送、長期保存の需要の高まりが予測される中で、消費者の食への安全性にも応える、まさに“持続可能な食糧供給”を可能にするソリューションといえるだろう。

培養肉・植物由来製品の保護にも取り組む

Image Credits:Prevera

現在、Prevera社が開発した食品保存製法は以下のようなプロセスで使用することができる。

【原材料の消毒】
新鮮な果物・野菜生の鶏肉と魚

【ファイナルプロダクト*の保護】
食肉加工品
ドレッシング、ディップ
飲料
乳製品
ベーキング製品

*…生産過程における最終製品

さらに、培養肉や植物由来製品の保護にも取り組んでいる。

培養肉とは、動物や魚などの細胞を栄養成分が入った液体の中で培養したもの。植物由来製品とは、従来ある植物由来の食品のほか、植物性素材を使用して肉や卵、バター、チーズのような動物由来の食品に似せて製造された食品だ。

これらの代替製品は、体質や宗教などの理由で食事を制限する人々の新たな“食の選択肢”として、そして世界的な人口の増加に伴うタンパク質の不足、畜産による環境問題への対策としても大きく注目されている。

シード・プランニングによると、代替肉の市場規模は世界で2020年に110億ドル、2030年には886億ドルに広がると予想されている。

今後も需要拡大なるか

健康への意識が高まるなか、グローバルな食糧供給の需要は今後ますます拡大していくだろう。開発段階である培養肉、植物由来製品の保護製法の開発が進めば、Prevera社の技術はますます需要が増えることも予測される。

参考・引用元:Prevera

(文・Sachi)

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