ロボットシェフNOSHがインドの食卓を変革。アプリ&ミールキット宅配付きで献立や買い物の手間もいらず

2028年までに44億ドルに達すると予測されている調理ロボットの市場規模。技術大国にしてグルメ大国であるインドで、業務用だけでなく家庭用の調理ロボット開発が相次いでいる。

2012年設立のMukunda Foodsはビリヤニやロティなどのインド料理を自動で作れる調理ロボット各種を展開しているが、基本的に業務用だ。一方、2017年設立のNymbleはコンパクトな家庭用の調理ロボットJuliaを開発、製品化前からユーザーに好評を博し今年6月に正式な市場展開を控えているが、初回製造分は売り切れだという。Juliaはアプリ連動のほか調理の状況を見守るカメラとAI、機械学習によってベストな火加減を調整するなど、toC視点での使いやすさが特徴だ。

同じく家庭用調理ロボット「NOSH」は、3月9日に製品発表会が行われる予定。開発はインドのシリコンバレーと言われるベンガルールのスタートアップ「Euphotic Lab」である(企業名・ブランド・商品名を総称してNOSHと呼ばれることが多い)。

調理ロボット「NOSH」は電子レンズほどのサイズ。Image Credits:NOSH

専用アプリ連動とAI搭載はJuliaと同じだが、こちらはロボット本体とミールキット宅配サービスを組み合わせた点が大きなポイントとなっている。

専用アプリでAIがメニューを提案

ロボットシェフNOSHは、516mm×465mm×435 mmと一般的な電子レンジと同程度のサイズ。キッチンのインテリアを邪魔しないスタイリッシュなデザインがうれしい。本体にフライパンとスターラー(攪拌する調理器具)、材料トレイ、調味料トレイ、油や水の容器をセットして使用する。

まず、ユーザーは豊富なメニューから調理したい(食べたい)料理を選択する。AIがユーザーの趣向に合うメニューを提案してくれるので何を食べようか悩まずに済む。

専用アプリからメニューを選択、食事や調理開始時刻を設定できる。Image Credits:NOSH

メニューはインド料理がメインで5つ星シェフ考案の料理が120種類以上から選択可能。日本でも人気の各種インドカレーのほかフライドライスなどのご飯もの、朝食メニューやスイーツまである。また、「Continental」のカテゴリではパスタやリゾット、マカロニ&チーズなどの洋食メニューも。

ミールキット宅配で買い物の手間も解消

なによりNOSH最大の独自性は、料理に必要な食材を届けるミールキットのサブスクリプションサービスだろう。当日にカット・下ごしらえされた新鮮な食材が届けられるので、調理の自動化だけでなく献立・買い物の手間を省くことに成功している。

あとはガイダンスに従ってNOSHに食材をセットし、焼き加減や味の好みを設定すれば、レシピと設定どおりAIが調理を始めてくれる。「献立の考案、食材の選定、買い物、下ごしらえ、調理」という全工程をNOSHがこなしてくれるのだ。

価格は本体が1台4万~5万インドルピー(約9~10万円)。ミールキットはベジタリアンメニューが1食138ルピー(250円程度)、通常メニューが1食159ルピーとなっている。ミールキットのサブスクリプションは毎週更新可能で、さまざまな選択肢から次の週の献立を決めて送信するだけでよい。「今日は外食したい」といった場合にはスキップすれば返金される。

味にこだわる多忙な夫婦が故郷の味をもとめて自動調理ロボットを開発

調理ロボットのアイデアは、Euphotic Lab設立者の1人であるYatin Varachhia氏とその妻の悩みから誕生した。2017年に妻のMargiさんがMBAを取得して働き始めると、二人とも仕事が忙しすぎて料理に時間をかけられなくなってしまう。Free Press Journalなどの取材によると、食事の準備をホームヘルパーに任せてみたが、インド西部クジャラート出身であるYatinさんが求める本格的なクジャラート料理をベンガルールで味わうことはできなかったそうだ。

そうした状況についてYatinさんが友人や同僚にこぼしたところ、どこの家庭でも同じ問題を抱えていることがわかった。こうして調理の自動化を目指すことになったYatinnさんは、友人のDevangさんと共にまず材料・調味料の投入工程と攪拌工程の自動化を実現した機構の開発に成功。その後、トウモロコシ脱穀機を3か月で開発したエンジニアのVenkateshさんとインド科学研究所のエキスポにて出会ったことから、彼もチームに加わることに。

NOSHの開発チーム。Image Credits:NOSH

2018年6月にプロトタイプ1号、2019年初旬には2号が完成。試行錯誤を繰り返し、3年間の研究開発の末に誕生したのが「NOSH」である。開発期間中にチームの面々を刺激し励ましたのは、子供の頃に味わった母親や祖母の手料理の記憶、実家や故郷の味だった。「おばあちゃんのキッチン」の味を再現するうえで最大の課題となったのは、野菜を均等に鍋にいれること、適切なタイミングで調味料をふりかけることだったそうだ。

開発に3年を費やした。Image Credits:NOSH

競合との差別化、ミールキット対応地域の拡大がカギ

今月9日に製品発表会を控えるNOSHは、現在主として飲食店を対象にプレオーダーとして製造販売を行っている。今年中に5000台の製造を予定しており、Amazonなどオンラインで本体のみが販売されるとのことだ。

ただ、ミールキットサービスに未対応の地域では、本体を購入できても自ら食材を用意しなければならない。買い物や食材の準備は料理工程の中で最も大きなハードルとなり得るだけに、今後NOSHが国内ならびに国外で事業を拡大していくにあたっては現地のミールキットサービスとの連携がキーポイントになるだろう。

また、インドは生活習慣病が深刻な社会問題となり、9000万人近い糖尿病患者を抱えている状況だ。カロリーや栄養バランスまで考慮したメニューや、スポーツジムとコラボしたダイエットメニューの提供も需要があるのではないだろうか。「最先端技術の力で、一般市民の日々の生活から調理・食材管理などの負担をなくす」というビジョンを掲げる同社の今後に注目したい。

参考・引用元:
NOSH製品サイト
NOSH企業サイト

(文・Takasugi

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ウェブサイト: https://techable.jp/

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