大河『光る君へ』で注目!紫式部『源氏物語』が1000年読み継がれる理由
2024年のNHK大河ドラマは、吉高由里子さんが演じる主人公・紫式部の物語である『光る君へ』だ。平安時代中期に紫式部によって創作された『源氏物語』は世に出た当時から評価は高く、平安時代の人々に愛読されていたという。そして、現代に至るまで1000年もの間、読み継がれてきた。
■大河ドラマで注目!紫式部の『源氏物語』はいかに読み継がれてきたか
多くの人が学校の授業で習った『源氏物語』だが、勉強したのはごく一部分だけで、全体像はよくわからないという人も多いだろう。
『源氏物語入門』(高木和子著、岩波書店刊)は、『源氏物語』を知識として知るためというよりは、どのような読み方をしたら物語が立体的に見えてくるのかなど、この書物を楽しむための読み方を教えてくれる。
本書では、東京大学大学院人文社会系研究科教授の高木和子氏が、物語の展開をたどり原文の言葉にも触れながら、平安時代から現在まで、人々を夢中にさせつづける『源氏物語』の面白さやどのように読み継がれてきたかを紹介する。
1つの物語が1000年も大事にされ、読み継がれることは、世界的にもまれだ。現在読まれている『源氏物語』は、紫式部の時代から現代までどのように伝わってきたのか。『源氏物語』には、多くの筆で写し書いた「写本」が残っている。それぞれの写本には異なる部分があり、その異なる本文を照らし合わせて校合し、比較的似た写本を集めていくつかの系統に分類し、今日読める本文を作る研究を本文研究という。
『源氏物語』は、昭和初期の池田亀鑑が、藤原定家周辺の写本群「青表紙本」系、源光行・親行親子等による写本群「河内本」系とそれ以外に分類した。これらの写本の原型は、平安時代末期から鎌倉時代初期に制作されたものだが、現存する最も古い藤原定家の自筆本と称される写本も、限られた数巻しかなく、それらもどこまで定家自筆と言えるか微妙。紫式部の直筆の草稿などは一切残っておらず、紫式部の時代から200年以上は後の写本となる。
今日多くの活字版の『源氏物語』が底本にするのは、かつて大島雅太郎が所蔵した通称「大島本」だ。青表紙本系の写本の一つで、浮舟巻を除く五十三帖まで揃っている点で希少なものとなる。ただ、大島本は15世紀後半に制作された写本なので、私たちが読んでいる『源氏物語』は、紫式部によるオリジナル版より数百年後のものとなる。
そして江戸時代初期になると、北村季吟の作った『湖月抄』は、『源氏物語』の本文に、会話の話し手や歌の詠み手の名前を書き加え、従来の注釈書の主要な見解を簡潔に抜粋して記したもので、これにより難解な『源氏物語』も多くの人に理解できるようになった。近代以後活字本が刊行されるまで多くの人に読み継がれた。そして、明治時代末期、与謝野晶子による現代語訳の偉業も、当初は『湖月抄』に拠ったとされている。3度目の訳が1938~1939年、金尾文淵堂から刊行され、今日まで晶子訳として流布している。
よくわからないままになっている『源氏物語』を、その魅力を知り、楽しんで読むためにも、本書を参考にしてみてはどうだろう。そして今年の大河ドラマも時代背景などを理解して楽しめるはずだ。
(T・N/新刊JP編集部)
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