知りたかった企業のアノ情報がすばやく検索できる時代がきた
働き方改革関連法案が成立して早5年、コロナ禍を経て私たちの働く環境は目まぐるしく変化し続けています。2023年3月期の有価証券報告書から、「男女間賃金格差」や「男性育児休業取得率」、「女性管理職比率」の人的資本情報の開示が義務付けられ、上場企業にとっては開示元年といわれています。これまでも開示されていた「平均年齢」「平均年間給与」などの項目に加えて、より企業の姿勢が分かる項目が追加されました。
男女間の賃金差は? 育休取得率は? すぐにわかる人的資本データnavi
このほどの情報開示を受けて、社員のあらゆる人材情報を一元化・可視化するシステム「カオナビ」を提供する株式会社カオナビは、新たなサービス「人的資本データnavi」の公開を発表しました。2023年11月28日にβ版をリリースし、2024年1月頃には初年度のデータベースに限り、カオナビユーザーだけでなく一般公開を予定しています。
同社の既存サービスであるカオナビは、人材の個性や特徴、つまりは人事担当が面談で話すようなあらゆる内容を可視化。人事異動や昨今増えつつあるジョブ型雇用に寄与するサービスといえます。カオナビは3,300社(2023年9月時点)が利用しています。
「人的資本情報を扱う中で、例えば離職率が12.9%だったとします。この数字は一体良いのか悪いのか。業界内で見たときにどうなのか、全体ではどうなのか……と、見えない状況がありました。そこで有価証券報告書に記載のある人的資本に関する項目をデータベース化することで、さまざまな項目を検索できるようにしました」と、サービス開始の経緯について語るカオナビCPO 平松達矢氏。
「人的資本データnavi β版」は、2023年3月末決済の上場企業2,329社(全上場企業の約6割)の有価証券報告書の開示書類が元になっています。実際の「人的資本データnavi β版」画面は、データを業種、地域、企業規模などでくくることが可能。さらに男性の育休取得率や女性管理職比率などをグラフで見ることができます。少し触っただけでも知っている企業の名がずらりと出てきました。
平松氏は、「人的資本データnavi」は企業の個性を出せるカスタマイズ性があり、単なる情報開示に留まらないといいます。
「有価証券報告書原本は文字だらけのもので、投資家向けの情報です。ただ、会社員やこれから就職する学生なども触れる可能性があります。パッと見てどんな会社なのかわかるということを心がけています。自社の個性が出せるカスタマイズ性があるので今後ここも伸ばしていきたいです。さらに2年目3年目と年数を重ねると各社の傾向も見えてきますので、深い洞察が可能になります。いずれはカオナビのサービスと連動させられればと考えています」
女性の育休取得率はほとんど未開示!? 人的資本データnaviを読み解く
社員数、給与額、男女間の賃金格差、男性育休取得率……人的資本データnaviにはさまざまな情報が詰まっています。その情報から一体何が分かるのか? 利用者は数字からその背景にあるものに対して想像をたくましくすることで、本当の意味でデータベースを活かせることになりそうです。12月14日には、開示元年に各社がどのような数字を開示しているのかという調査レポートがカオナビHRテクノロジー総研のオフィシャルサイトで発表される予定。今後データを読み解く足がかりとなりそうです。
調査レポート開示に先立ち、カオナビ 執行役員 CEO室長/カオナビHRテクノロジー総研所長の内田壮氏からは速報が届けられました。内田氏は人的資源の調査分析のエキスパート。データを横並びで比較でき、さまざまな人がさまざまな角度で見られることが大切であること、そして「情報の開示がされていない」ことも、ひとつの情報といます。
「80%の企業が、開示義務のある項目は開示しています。その一方で任意項目である人材育成・人材開発においてなんらかの数値開示があった企業は7%。注目したい項目ですが、実績数値の開示率は低いです。男女間賃金格差では、女性の賃金は男性の7割以下。地域では北海道や東北が比較的低いです。業種では、卸売業、建設、金融で差が見られ、情報通信系は男女間の格差が少ない傾向がありました」と、データの傾向を説明する内田氏。
なかなかに興味深い結果です。そして、男性育児休暇取得率が新たに加わった義務項目でありなら、全体や女性の育児休暇取得率はほとんど情報開示されていないといいます。すぐにわかりそうなものですが、不思議です。
会社を写す鏡となる人的資本情報。今後、企業は人材が持つ価値を最大限に高めつつも独自性のある情報開示が求められることになるでしょう。
ウェブサイト: https://getnews.jp/
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。