二酸化炭素を回収する?CCSやCCUSの仕組み

CCSとは

CCSというのは、CarbonCaptureStorageの頭文字を取って略したもので、二酸化炭素を回収することです。主に工場などが二酸化炭素の排出源になっており、空気中に大量に放出されているでしょう。CCSでは、大気中に放出する前の段階で回収します。そのため、空気を汚さずに済むというわけです。
また、既に大気中にある二酸化炭素を回収することもあります。これまでは大気中の二酸化炭素は増える一方でしたが、今後はCCSにより減らせるかもしれません。
そして、CCSにより回収された二酸化炭素は貯留しておきます。貯留場所は主に地中です。地中には二酸化炭素を通さない泥岩の層や隙間の多い砂岩の層などがあり、そのような場所に二酸化炭素を閉じ込めます。

空気中から二酸化炭素を分離させる仕組み

二酸化炭素を回収すると聞いて、その方法が気になる人もいるでしょう。CCSでは主に物理的吸収法と固体吸収法、膜分離法などの方法で二酸化炭素を空気中から分離させています。
物理的吸収法というのは、ポリエチレングリコールやメタノールを使用するやり方です。二酸化炭素と反応して大気中から吸収する性質を利用して回収します。
固体吸収法は、アミンという化学物質に接触させるやり方です。アミンはアンモニア化合物の一種で、石けんや化粧品などにも使用されている物質です。二酸化炭素を含む気体がアミン溶液に触れると吸収される性質を利用して回収しています。
膜分離法は、二酸化炭素を吸収したアミンを120度に加熱する方法です。そうすると吸収した二酸化炭素を分離できます。

CCUSとは

CCUSはCCSに「利用」を加えたものです。「U」は「Usage」または「Utilization」の頭文字で、使用や利用を意味しています。二酸化炭素を地中に貯留しておけば、空気中の二酸化炭素を増やさなくて済み、減らすことさえ可能です。しかし、二酸化炭素を貯留できる場所は無限にあるわけではありません。ずっと二酸化炭素の貯留を続けていればいずれ限界が来てしまうでしょう。
そこで、二酸化炭素を貯留せずに資源として有効活用するのが望ましいという考え方の元でCCUSの取り組みが行われています。CCUSならCCSと違って限界が来てしまうことはありません。持続可能な二酸化炭素削減方法ということで、CCS以上に期待が寄せられています。
また、二酸化炭素を再利用するという意味で、カーボンリサイクルとも呼ばれています。

回収後の二酸化炭素の利用方法

CCUSでは、回収後の二酸化炭素を主に次のような方法で利用しています。

直接利用

直接利用というのは、二酸化炭素を化学的に他の物質に変化させることなく、そのままの状態で利用することです。例えばドライアイスとして活用する方法が挙げられます。ドライアイスは二酸化炭素を低温にして固体にしたものです。主にアイスクリームなどを購入して持ち帰るときなどに低温に保つために使用されます。
また、農業や園芸などで植物に供給するのも、二酸化炭素の直接利用の方法です。植物は光合成を行う際に二酸化炭素を消費しています。そのため、十分な二酸化炭素を供給することで、植物の成長を促せます。

燃料として利用

燃料と聞くと二酸化炭素を放出するイメージが強いかもしれません。しかし、バイオマス燃料や合成燃料として二酸化炭素を再利用できる場合もあります。

化学製品の原料として利用

ウレタンやバイオマス由来化学品などでは、二酸化炭素を使用して製造しているものもあります。CCUSでは、吸収した二酸化炭素をそのような化学製品の原料として再利用することも可能です。

鉱物として利用

コンクリートや炭酸塩などの鉱物にも二酸化炭素が使用されており、再利用も可能です。主に製造工程で内部に吸収させるなどの方法で、再利用しています。

EORに活用

EORというのは原油の回収率を高める技術のことです。原油を採掘する際には、地下に埋まっている原油の全てをきれいに回収できるわけではありません。どうしても何割かは残されてしまいます。
原油を効率良く採掘するためにはEORが必要です。そして、二酸化炭素を注入すると原油と反応し、ガスが混じり岩石から離れやすくなるため、EORに活用できます。

CCSやCCUSが注目されている背景

CCSやCCUSが注目を浴びている背景には、地球温暖化防止が大きく関係しています。世界全体の平均気温が上昇を続けており、体感的にも暑くなっていると実感できるでしょう。このまま地球温暖化が続けば、生態系や自然環境への影響も懸念されます。
そして、2015年にはパリ協定が採択されました。これにより平均気温上昇を産業革命以前より2度以下に保ち、1.5度程度に抑えることを目標として掲げています。
目標達成のためには二酸化炭素を削減する必要があり、経済活動と両立させるのは難しいのが実情です。そのような中で、二酸化炭素を回収したり再利用したりするCCSやCCUSが注目されるようになりました。CCSやCCUSなら経済活動とも無理なく両立できます。

CCSやCCUSを行うメリット

CCSやCCUSを行うことで、次のようなメリットがあります。

カーボンニュートラルの実現につながる

カーボンニュートラルは、二酸化炭素の排出量と植物が光合成で吸収する量が同じになることです。カーボンニュートラルが実現できれば、世界全体でトータルの二酸化炭素量が増えなくなります。地球温暖化を防止できて、パリ協定で掲げた目標も達成できるでしょう。

炭素の循環利用が実現できる

これまでは、石油や石炭を燃料として使用していたため、炭素は循環せず二酸化炭素として放出されてきました。植物の光合成以外で二酸化炭素が減ることがないため、どうしても二酸化炭素が増える方向に傾いてしまいます。
その点、CCUSなら炭素の循環利用が実現できるのがメリットです。二酸化炭素が一方的に増えるという状況から脱却できます。地球温暖化をはじめとして、さまざまな環境問題の解決につながるでしょう。

再生可能エネルギーの利用促進につながる

水素と二酸化炭素からメタンを製造できます。そのメタンをエネルギーとして活用したり、化学製品の原料にしたりすることが可能です。製造した化学製品が不要になって焼却処分すると二酸化炭素が発生しますが、その二酸化炭素から再びメタンを製造できます。
また、メタンは貯蔵もできるので有効活用しやすいのもメリットです。

CCSやCCUSを行う上での課題

CCSやCCUSは非常に有益な取り組みですが、コストの問題が指摘されています。現状では、多額のコストがかかるのがネックになっており、なかなか普及しないのが実情です。
ただし、低コスト化のための研究が行われています。
また、回収技術も十分ではありません。現在では、工場などで高濃度の二酸化炭素を中心に回収が行われています。低濃度の二酸化炭素を回収するのは、高濃度の二酸化炭素を回収するより難しく、ほとんど行われていません。
しかし、高濃度の二酸化炭素が放出される場所はごく限られています。そのため、今後は低濃度の二酸化炭素も回収する技術も必要になるでしょう。

まとめ

CCSは二酸化炭素を空気中から回収する取り組みのことです。CCUSではCCSに加えて二酸化炭素の再利用も行います。燃料としての利用や化学製品の原料としての利用など、利用する用途は幅広いです。
CCSやCCUSによりカーボンニュートラルや炭素の循環利用などの実現が可能になります。コストの問題を抱えており、二酸化炭素の回収技術も開発途上ですが、地球温暖化防止の救世主として期待が持てるでしょう。

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