日本橋兜町がウォール街からおしゃれタウンに大変貌! 「BANK」「K5」など旧銀行跡のカフェ、レストラン、ホテル、バーなど勢ぞろい
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東京都の日本橋兜町・茅場町は、「日本のウォール街」とも呼ばれ、江戸時代から続く金融街として知られていますが、東京証券取引所「立会場」の閉鎖(1999年)を受け、一時期、街の活気が失われていました。ところが、近年は、新しいオフィスビルや商業施設が建設ラッシュ! 金融系スタートアップ企業が集積し、金融の街として復活しただけでなく、個性的な飲食店などにぎわいが生まれ、活気のある街へ生まれ変わりました。再活性化プロジェクトの経緯や話題のスポットを取材しました。
「日本のウォール街」日本橋兜町、再開発で新しい金融・ビジネス・文化の発信地に
日本橋兜町・茅場町は、東京都中央区にある歴史的な「証券・金融の街」です。東京メトロ日比谷線「茅場町駅」の10番出口を出て、平成通りを東京証券取引所へ向かうと、徒歩約1分のところに、日本橋兜町の新しいランドマークである大規模複合用途ビル「KABUTO ONE」があります。
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街には歴史的建造物も残っている。右は、大正12年に建てられた旧第一銀行(写真撮影/池田礼)
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日本橋兜町は日本ではじめて株式取引所がつくられた場所。写真は現在の東京証券取引所ビル(写真撮影/池田礼)
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KABUTO ONE。地上15階、地下2階、高さ82メートル(画像提供/平和不動産)
KABUTO ONEには、オフィス、商業施設などが設けられ、金融機関や証券会社、IT企業などが多数入居し、約2千人が勤務しています。「日本の食文化と生産者を応援する食堂」をコンセプトにした「KABEAT(カビート)」やカフェ「KNAG(ナグ)」、スリランカレストラン「HOPPERS(ホッパーズ)」があり、平日でもにぎわいを見せています。
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カフェ「KNAG」は、コミュニティスペースとしても利用できる(画像提供/平和不動産)
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「KABEAT」。店内は、200坪、220席の広々とした大空間(写真撮影/池田礼)
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「KABEAT」ではお酒も提供(写真撮影/池田礼)
永代通りと平成通りの交差点に面するKABUTO ONEのガラス張りの大空間(アトリウム)には、世界最大規模のキューブ型大型LEDディスプレイThe HEARTがあります。「金融の心臓」を象徴して設けられたもので、マーケットの動向に連動して色が変わり、視覚的にマーケットを感じることができます。
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高さ約14m、3層吹き抜けのアトリウム。見上げると巨大なThe HEARTがある(写真撮影/池田礼)
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株価が上昇すると赤に変わる(画像提供/平和不動産)
現在の活況からは想像がしにくいですが、長年日本経済の中心地として発展してきた日本橋兜町・茅場町が、衰退の危機を迎えた時期があります。1999年、株券の電子化やインターネット取引などにより、東京証券取引所株券売買の立会場が閉鎖された影響で、多くの証券会社が移転し、活気を失ってしまったのです。
このような状況を打開するため、平和不動産は、2014年から現在に至るまで、日本橋兜町・茅場町再活性化プロジェクト(以後、再活性化プロジェクト)を進めています。プロジェクトの第一弾として建設されたのが、KABUTO ONEでした。KABUTO ONEは、金融関連の情報発信や人材育成のためのオフィス、投資家と企業の対話・交流促進を図るための施設。東京都が掲げる「国際金融都市・東京」構想の一翼を担っています。
KABUTO ONEには、ホールや飲食店があり、周辺には、2020年に開業したホテル「K5」のほか、飲食店を設けた複合施設「BANK」などが続々オープンしています。日本橋兜町・茅場町は、今まさに、東京の新しい金融・ビジネス・文化の拠点として、生まれ変わろうとしているのです。
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KABUTO ONEを中心に店舗などが次々と建設されている(画像提供/平和不動産)
新たに金融人材育成や起業を支える機能を街にプラス
当初から再活性化プロジェクトに携わっている平和不動産ビルディング事業部の伊勢谷俊光さんに経緯を伺いました。
「日本橋兜町は、明治時代、東京実業界の有力者であった渋沢栄一らにより、東京株式取引所がつくられ、その後も為替会社や通商会社などが設立されてきた歴史のある街です。再活性化プロジェクトのために行った有識者の座談会では、証券の街、金融の街というアイデンティティを守りながら、渋沢栄一の新しいことにチャレンジするマインドを継承しようと話し合いました。具体的には、金融人材の育成や海外からのスタートアップ企業受け入れ、投資家と企業の対話交流促進など、起業の拠点となる取り組みを推進しています」(伊勢谷さん)
取り組みの一環として、2017年に、資産運用を行う国内のスタートアップ企業や、海外から日本に進出する資産運用企業等を対象にしたサービスオフィス「FinGATE」シリーズをスタートしました。
FinGATE KAYABAを皮切りに、FinGATE KABUTO、FinGATE BASE、FinGATE TERRACE、FinGATE BLOOMの計5施設を展開しています。
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FinGATE BLOOMの会議スペース(画像提供/平和不動産)
「FinGATEシリーズは、FinTech(フィンテック)など金融ベンチャー企業や金融専門サービス事業者の発展への貢献にフォーカスした施設で、2023年6月現在、計5施設に約60社が入居しています。FinGATE KAYABAは、資産運用を中心とした金融ベンチャー企業を集めた施設。FinGATE KABUTOは、海外から運用会社として日本に来る企業を受け入れるためのもので、支援にあたる東京都の執行機関も入居しています」(伊勢谷さん)
※FinGATE……金融と技術を組み合わせた造語で、金融サービスと情報技術を結びつけた革新的な動きを指す。
FinGATEシリーズでは、金融サービスの立ち上げや経営に必要なオフィスなどのインフラ設備のみならず、起業家同士が交流できるスペースなど、コミュニティ機会の創出や行政連携支援などを充実させていることが特徴です。
1923年竣工の旧第一国立銀行をリノベした「K5」
再開発の目的は、金融の発展効果だけではありません。街の課題を解決し、さらに、にぎわいを生み出そうと、リニューアルとリノベーションを並行して進めてきました。
「再開発前は、細分化された土地に老朽化した建物が密集して立ち並び、地震や火事などの災害に弱いという課題がありました。KABUTO ONEは、中間層免震構造を取り入れ、The HEARTでNHK放送など災害情報を発信します。災害時の帰宅困難者受け入れ施設として指定を受けました」
街を盛り上げるために、飲食を中心とした店舗の誘致にも力を入れてきました。建物のリノベーションや内装含めて好評で、訪れた人からは、「街づくりにポリシーを感じる」「センスのいい街だね」という感想が寄せられているといいます。オリジナリティのある飲食店が多く、「どうやって個性的な店舗を集めることができたの?」という質問も多いそうです。
「もともと、日本橋兜町は、建物の1階部分が店舗ではなく証券事務所になっているビルが多かったため、外から人が来て回遊するような場所がありませんでした。店舗がないということは、マーケットがないということなので、店舗を集めるのは難しいエリア。街にはオフィスワーカーが多くて、夜は他のところへ飲みに行ってしまう。新しい人材を街に呼ぶためには、居たくなるような環境をしっかり整える必要があると考えました。クリエイティブな店舗を集めることができたのは、2020年2月に開業したK5の存在が非常に大きかったですね」(伊勢谷さん)
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1923年に竣工した歴史的建造物、旧第一銀行の外観を残してリノベーション(写真撮影/池田礼)
K5は、旧第一銀行の外観、躯体はそのままに、内部をリノベーションしたホテルと4つの飲食店からなる複合施設です。
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石造りで重厚な雰囲気をまとう外観(写真撮影/池田礼)
「建物に魅力があり、人を惹きつけたのだと思います。印象深かったのは、米国の代表的なクラフトビールメーカーであるブルックリン・ブルワリーが、『自分たちが街の拠点をつくるんだ』という思いで一緒に取り組んでくれたことです。ブルックリン・ブルワリーは、元気がなかったブルックリンの街にブルックリン・ブルワリー酒造所ができ、そこを拠点に人が集まり、街が盛り上がったという歴史を持っているそうです。ブルックリン・ブルワリーのおかげで、『彼らがいるならやってみよう』という人も増えてきて、エネルギッシュでクリエイティブな方々に興味を持っていただけました」(伊勢谷さん)
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K5の地下1階にあるブルックリン・ブルワリー世界初のフラッグシップ店「B(ビー)」(画像提供/平和不動産)
K5の2~4階を占めるのが、ブティックホテルHOTEL K5です。ストックホルムを拠点に活動する建築家パートナーシップCLAESSON KOIVISTO RUNE(クラーソン・コイヴィスト・ルーネ)が、リノベーションしました。高級インテリアブランドとのコラボレーションも手掛けるデザインチームが、築97年のレトロな趣を活かしながらデザインした内装は、海外の方にも好評です。
「ホテルの利用者は8、9割が海外の方です。リノベーション物件や建物、デザインが好きな方が多いですね。カジュアルに利用したい方は、ビアホールやバーを使ってくださっています」(伊勢谷さん)
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客室ごとにタイルが異なり、廊下のタイルと響き合うように一部同じタイルを使用している(写真撮影/池田礼)
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ベッドは藍染のカーテンで囲まれ、オリジナルの北欧家具が配されている(写真撮影/池田礼)
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図書館とライブラリーが一体化したバーAo。館内だけでなく街の滞在を楽しめるように、宿泊客には兜町のお店で使用できる2000円のクーポンを配っている(無期限)(写真撮影/池田礼)
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内観は、山梨拠点の造園家「Yard Works」が手掛けたグリーンでいっぱい(写真撮影/池田礼)
日本橋兜町・茅場町の見どころは? 話題のスポット「BANK」を紹介
「再活性化プロジェクトの前と後で、明らかに街を歩く人の姿が変わりました」と伊勢谷さん。以前は、スーツを着た人が多かったですが、最近では、私服の人や若い女性も増えていると言います。
話題のスポットをたずねると、2022年12月にオープンした複合施設「BANK」を紹介してくれました。商業施設フロアには、レストラン、カフェ、インテリアショップ、フラワーショップなど、さまざまな店舗が入居しています。注目は、Bakery bank(ベーカリー バンク)。水分量と粉の種類にこだわったパンを提供する人気店です。
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Bakery bankの入口(写真撮影/池田礼)
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お店のおすすめは、オリジナル熟成発酵バターを使用したクロワッサン。パリパリサクサクで、中はフンワリもっちり(写真撮影/池田礼)
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お店の名前を冠した「BANK」(パンの種類:サワードゥ)も人気。季節変わりで数種類を提供(写真撮影/池田礼)
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フラワーショップFlowers fete(フラワーズ フェテ)。ドライフラワーブーケやポプリ、アロマディフューザーを販売(写真撮影/池田礼)
「日本橋兜町には、歴史的な建物やそれをリノベーションしたものも多く、非常に見ごたえのある街だと思います。昔の植木市をモチーフにした体験型のグリーンフェスや、個性的な出店を飲みながら街歩きする兜町夜市など、イベントもたくさん開催していますので、日本橋兜町を知る機会として参加してみてください」(伊勢谷さん)
再活性化プロジェクトは、2023年現在も進行中で、2025年には、ハイアットの最新ライフスタイルホテルブランド「キャプション by Hyatt 兜町 東京」が竣工予定。さらに多くの海外のお客さんが街にやってきます。日本橋兜町・茅場町は、金融の街として再生しただけでなく、新たなビジネス・文化の発信地、東京の新しい観光地となりつつあると感じました。発展を続ける街は、海外からやってくる人だけでなく、今まで日本橋兜町・茅場町を訪れることがなかった新しい層の人たちも惹きつけています。個性的なカフェやレストランを巡りながら、金融の昔と今を感じに出かけてみませんか。
●取材協力
・平和不動産株式会社
・KABUTO ONE
・FinGATE
・K5
・BANK
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