【京都・清水焼を巡る旅】清水焼団地で陶芸体験。茶わん坂を散策
こんにちは。奈良県生駒市で「暮らしとうつわのお店 草々」を営む高根恭子です。お店では、手づくりの陶磁器や陶芸家へのインタビューを届け、器の魅力を発信しています。今回は、日本を代表する伝統工芸品「清水焼(きよみずやき)」の産地、京都へ。1泊2日の器を巡る旅を満喫してきました。
ちなみに、清水焼とは、清水寺へ向かう五条坂界隈に多くの窯元が集まって焼かれていた陶磁器をそう呼んだことが始まり。今では、京都市東山区、京都市山科区の清水焼団地、宇治市の炭山などで生産されている陶磁器をまとめて清水焼と呼んでいます。
京都駅
旅のはじまりは京都駅から
今回の旅の起点、JR京都駅へ。JR東京駅から京都駅までは東海道新幹線「のぞみ」で約2時間とのこと。うとうとしていたらあっという間ですね。なお、「JR東日本びゅうダイナミックレールパック」であれば、新幹線と宿のセットがお得に予約できます。
さっそく、京都駅からバスに乗って約30分の「清水焼団地」へ向かいます。
清水焼団地
生産者が集まる「清水焼団地」
「上花山久保町」バス停で降りて徒歩約10分。山科区にある清水焼団地は、清水焼に関わる問屋や窯元、作家、原材料屋、木箱屋などが集まっている地域です。
もともと清水焼は、清水寺の参道にある五条坂でつくられていましたが、五条坂の観光地化や市街地化に伴い、昭和40年代後半に生産者が山科区へ移住。集団で工業団地を形成したことから清水焼団地となりました。
古くからある窯元やギャラリーが点在しています。
創業100年を超える「雲楽窯」の店内。清水焼がずらりと並び、裏には工房がありました。
TOKINOHA Ceramic Studio
「TOKINOHA Ceramic Studio」で新感覚の楽焼体験
散策しているとガラス張りの白い建物を発見。ここは、2021年にオープンした「TOKINOHA Ceramic Studio(トキノハ セラミック スタジオ)」。ショップと工房が併設された体験型のお店です。
店内では、ガラス窓越しに製作現場を見学できるようになっています。
日常での使いやすさを意識して「シンプルで控えめなデザイン」の清水焼をつくっているのだそう。どれも人の手から生み出されたものだと思うと、ひとつひとつの器から温かみを感じます。
2階はオーダーメイドギャラリー。レストランユースを中心に、職人に相談しながら器をオーダーできるスペースです。条件が合えば、一般家庭向けの器のオーダーも可能だそうです。
器をたっぷり堪能したあとは、いよいよ「楽焼体験」へ。「楽焼」とは、低温(800度〜900度)で焼く陶器のこと。
体験では、職人がつくった素地に釉薬(ゆうやく)を塗って焼くまでの工程をします。釉薬とは、陶磁器の表面を覆うガラス質の膜のこと。釉薬をどのくらいの厚さで塗るのか、どこに塗るのかなど、出来上がりを想像しながら塗っていきます。
スタッフが丁寧にフォローしてくれるので、安心して進めることができました。
釉薬を塗り終わったら、焼きの工程へ。器を電気窯に入れて約10分待ちます。
その間にお茶をいただきながら、店内で焼き上がりを楽しみに待ちます。
10分が経過! ワクワクしながら窯から取り出してみると……。
なんと、メタリックな仕上がりになりました。釉薬が溶けてガラス質になり、土の成分と化学反応を起こしてできた色なのだそう。不思議……。
今回、私は釉薬を薄めに塗りましたが、同じ釉薬でも、塗る厚さ、焼く際の温度や酸素の供給量を変えることで全く雰囲気が変わってくるとのこと。面白いですね。
左が今回焼いた器。右がサンプル用に焼かれた器。同じ釉薬でもこれだけ違いが出るのです!
楽焼を体験したあとで職人がろくろを挽いている様子を見ると、ますます凄みを感じます。ちなみに、清水焼団地では毎年秋に陶器市(※)を開催しているそうなので、ぜひまた遊びにきたいと思います。
再びバスで京都駅周辺へ戻り、ホテルへ。明日に備えてゆっくり休みます。
※編集部注:清水焼団地で開催の陶器市「清水焼の郷まつり」の詳細はこちら
若宮八幡宮(陶器神社)
茶わん坂
素敵な器との出会いが溢れる「茶わん坂」
若宮八幡宮から徒歩約10分。五条坂から清水寺までゆるやかに続く坂道、茶わん坂は、京焼・清水焼発祥の地。数多くの名工を輩出してきた歴史あるエリアです。
両脇にはさまざまなジャンルのお店が並び、歩くだけで楽しくなります。
清水寺へ向かう人、お店を散策しながら楽しむ人。いろいろな人が行き交います。
そんな中、スタイリッシュな店構えに惹かれて入ったのが「東五六」。
きれいに絵付された華やかな器から、シンプルモダンな器まで。清水焼の魅力が広がっていました。
茶碗に湯呑み、カップ、お椀、花器、茶道具と、器類はほぼ全て揃っています。デザインもひとつひとつ違うので、きっとお気に入りが見つかるはずです。
そして、もう1店舗。東五六から徒歩1分ほどのところで見つけたお店が「東哉(とうさい)」。和を感じる店構えに惹かれ、店内に入ってみると……。
侘び寂びを感じる京都らしい空間が広がっていました。
茶室をイメージしたしつらえも所々にあり、器とお店の雰囲気がぴったりと合っていました。
ひとつひとつ丁寧に絵付された器からは、清水焼の歴史の深さや繊細な心を感じます。
ギャラリーの奥は工房になっていて、今回は特別に、絵付する様子も見せてもらいました。器用に色をさす職人の後ろ姿はかっこいいなぁとため息が出るばかりです。
さて、2つのお店を巡ってたっぷり器を堪能したので、お腹が減ってきました。そろそろランチにしましょうか。
cafe かねや
京町屋カフェ「cafe かねや」で絶品ランチ
五条坂と茶わん坂が交わるあたりにある「cafe かねや」。散策して一休みしたり、帰り道に寄ったりするのにちょうどいい場所にあります。
店内は、約100年前の京町屋を改装したカフェ。重厚感ある色の家具やクラシックなインテリアがホッと安らぐ気持ちにさせてくれます。
ランチメニューはどれもおいしそうで迷ったのですが、ビジュアルに心奪われて「ハーフ&ハーフ」を注文。
京風のおだしがきいた和カレーと、トマトソース、中央にはふわふわ卵のチーズ入りオムライス! 和カレーに入った九条ネギの食感も食欲をそそり、一瞬で食べてしまいました。
スープもサラダもお団子もついてボリューム満点。旅の終わりがおいしい思い出で満たされました。ごちそうさまでした。
清水焼って華やかな絵付のイメージが強かったのですが、今回の旅で印象が大きく変わりました。シンプルなものからモダンなものまで、絵付も職人の個性に合わせて無限に広がる。伝統を継承しながら発展している清水焼の奥深さを発見する旅になりました。みなさんもぜひ京都でお気に入りの清水焼を探してみてくださいね。
東京駅
掲載情報は2023年6月27日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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