4人家族で平屋79平米のコンパクトな暮らし。「リビングを通る動線」で思春期の子ども、夫婦ともに仲良しな距離にこだわりました
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“家族4人が暮らす一戸建てマイホーム”と聞けば、多くの人が、2階建て・3LDK以上をイメージするのではないでしょうか。それより狭く、最近需要が伸びている約70平米前後の“コンパクト平屋”は、実はこのような子どものいるファミリーのマイホームとしても選ばれているようです。今回訪れたのは、40代のご夫妻と小学生・中学生が暮らす79平米の平屋。家族それぞれのプライバシーは? 部屋数は十分とれるの? 収納は? 家族4人平屋暮らしのリアルを取材しました。
広すぎた築40年超の家から、コンパクトな平屋に住み替え
5月の陽射しの強い日、千葉県の石井さん宅を訪ねました。住宅街に現れたのは、広々とした芝生の向こうに建つカバードポーチ(屋根付き玄関ポーチ)が印象的な平屋。ブルーグレーの外壁に白い枠の窓が映えます。アメリカの映画に出てくるさまざまな色の外壁やファサードにデッキやテラスのある家が並ぶ住宅街を訪れたような気持ちになる佇まいです。
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もともとは北米で開発されたアスファルトシングルという屋根材を使用。瓦と比較して薄い素材で、アメリカの住宅に使われている。軒先がカバードポーチの庇(ひさし)と一体のデザイン(写真撮影/北島和将)
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「リビング・ダイニングは、落ち着いた雰囲気にしたかったので吹き抜けなど開放感のあるデザインは求めませんでした」と正美さん(妻)(写真撮影/北島和将)
迎えてくれた正美さん(妻:46歳)に導かれて中に入ると、開放的な外観から一転して、リビング・ダイニングは、隠れ家カフェのような佇まいです。正美さんは、夫(46歳)と、長女(13歳)、長男(10歳)の4人家族。平屋は、築40年以上の中古住宅を建て替えたものです。
「もともと住んでいた中古住宅は築40年を超えていて、雨漏りや隙間風に悩まされていました。木造2階建てで約83平米、1階は二間続きの和室になっており、奥の部屋を居間として使っていたため、手前の部屋は通り道としか使っていませんでした。2階の部屋数は2部屋でしたが1つは物置と化しており、あまり人が出入りすることがなかったんです。階段のスペースも、無駄だなと感じていました」(正美さん)
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庭の芝生や敷石は家族皆で敷いたもの。もともとの庭にあったサルスベリの木が、庭のシンボルに(写真撮影/北島和将)
「子ども2人が過ごす時間はわずか20年ほど。その後のふたり暮らしを考えると広い家は必要ない」と考えていた夫妻。建て替えるなら平屋にしようと決めていました。将来を見越して建て替えをする上で、いちばん大切だったのは、家族と距離が生まれないこと。子どもが独立するまで家族の時間を大切に過ごせる家へ……。2016年、下の子どもが3歳になったのを機に、石井さんの家づくりがスタートしました。
関連記事:2023年住宅トレンドは「平屋回帰」。コンパクト・耐震性・低コスト、今こそ見直される5つのメリットとは?
海外映画に出てくる家に憧れ。デザインはアメリカンハウスを希望
アメリカ映画に出てくるようなカバードポーチ(屋根付き玄関ポーチ)に憧れていた夫妻。インターネットでアメリカンハウスの施工例が多い建築会社を見つけ、建築中の家を見学した上で、依頼することにしました。
希望したのは、板を横に重ねて張り上げていくラップサイディングの壁と、瓦より薄くて軽いアスファルトシングルの屋根。いずれも伝統的なアメリカンハウスに用いられているものです。
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アメリカンハウスの特徴のひとつラップサイディングの外壁。色は悩みに悩んで落ち着いたブルーグレーに。建築会社の「よりアメリカンハウスらしい」という提案でポーチの柱は太め(写真撮影/北島和将)
間取りと動線でこだわったのは、帰宅した家族がリビングを通って自室に行けること。
「家事がしやすいのも大事ですが、家族がリビングを通る動線は絶対条件でした。子どもが思春期になっても、お母さんの顔を見ずに部屋に行くのは、嫌だなあと」(石井さん)
完成したアメリカンハウスは、玄関を入ってダイニング・リビングを通り、主寝室、子ども部屋に行く動線です。「家の中に使わないスペースがあるのはもったいない」と、家族4人にとって広すぎず狭すぎずの79平米にしました。
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延床面積79平米・3LDK。DKは、約28平米。ウォークインクローゼットのある洋室が夫妻の寝室で、玄関側の2室はもともとつながっていたが、点線部分にDIYで壁を新設し、別々の部屋として使っている(写真撮影/JKホーム)
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長女の部屋。右側がDIYで新設した壁。ベニヤに部屋の雰囲気に合う木目調の壁紙を張った(写真撮影/北島和将)
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長男の部屋。お気に入りは、「窓が大きくて開放的」なところ。以前の家には、断熱材が全く入っておらず寒かったが、断熱材と二重サッシの窓で、冬も快適(写真撮影/北島和将)
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来客時は、カウンターテーブルが活躍。友人家族の計20名以上が集まることもあるそう。普段は、カウンターと高さをそろえて夫がDIYしたテーブルを食卓として使用(写真撮影/北島和将)
正美さんのお気に入りは、キッチンです。
「料理や洗い物をしながら、家族の様子がよくわかります。『玄関から必ずリビングを通る間取りにしてよかったね』と夫と話しています。個室はあるのに、家族全員リビングにずっといるんですよね」と笑います。
子どもたちからも、「どこからでもリビングに行きやすい」「どこにいても家族の声が聞こえる」と好評です。
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思い思いに過ごす石井さんファミリー。ソファに4人でぎゅうぎゅうに座って一緒にテレビを見ることも(写真提供/正美さん)
「部屋がつながっているから、エアコンを各自がつけなくても、家中が快適な温度です。このあたりは、プロパンガスで、ガス代が高いのですが、エコキュートを設置し、夜間割安のプランにして、オール電化にしたこともあり、光熱費が格段に安くなりました。家が完成したあと、高齢の愛犬が寝たきりになってしまったんです。大型犬を抱っこしてトイレをさせていたので、そのまま出られて掃除しやすいカバードポーチに助けられました。犬を介護しながら、自分の将来を考えても平屋でよかったなあって思っていました」(石井さん)
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ポーチのタイルは、アンティークの雰囲気があるものをセレクト。汚れも目立ちにくい(写真撮影/北島和将)
コストを抑えるため、洗面台やライトは施主支給に
平屋は、2階建てに比べて、基礎や屋根の面積が広いため坪単価が高くなりがち。石井邸では、設備や材料でコストを削減していますが、デザイン性にできるだけこだわるため、洗面台やライトはインテリアに合わせて石井さん自ら購入し、建築会社に支給(通称、施主支給)して取りつけてもらいました。もともと、ダイニングとリビングの床には、無垢材を使おうと考えていましたが、コスト面から傷・汚れに強いラミネートフロアを薦められイメージに近い木目調のデザインを選びました。
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洗面台は正美さんが予算内でイメージに近いデザインを探した(写真撮影/北島和将)
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さまざまなタイプの照明を設置しているが、色味をそろえることで統一感が出ている(写真撮影/北島和将)
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ニューヨークの街角で見かけるような両面の壁掛け時計(写真撮影/北島和将)
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建築会社の提案で取り入れたアーチ壁(Rの垂れ壁)(写真撮影/北島和将)
各部屋をまわると気になることが。家族4人に対して、収納が少ないのでは?
「主寝室にある3畳足らずのウォークインクローゼットに、家族全員の洋服を収納しています。もともとミニマムな暮らしをしてみたかったんです。以前の2階建てから平屋にする際に、物を捨てました。空間があるといらないものも残してしまいますが、これしかないと思えば、減らせるものです。すっきりして気持ちがいいですよ」(正美さん)
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主寝室にある3畳足らずのウォークインクローゼットに1年分の家族4人の服を収納(写真撮影/北島和将)
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玄関には十分なシューズクロークを設けたので、靴だらけになる心配なし。リビングのアーチ壁と響き合うニッチ(壁をくぼませてつくった飾り棚)に鍵を吊るして。何気ないけどおしゃれ!(写真撮影/北島和将)
最後に、平屋にしなければよかったと思うことはありますか?と直球な質問をぶつけると、「私がひとりになれないことかな」と苦笑する正美さん。
「リビングで家族がずっとしゃべっているので、静かになりたい時になれない(笑)。思春期の子どもだと距離が近すぎて嫌がるかもしれないけれど、今のところ、子どもたちから不満は出ていません。二人暮らしの両親も『掃除や移動が楽そう。うちも平屋がいいなあ』ってうらやましがっています」(正美さん)
コンパクトな平屋は4人家族には狭いのでは?と思っていましたが、家族が自然と集えるなどのメリットもあるのですね。子どもが独立したあとの二人暮らしを想定して建てた平屋ですが、子どもたちは「ずっと住みたい!」と話しているそうです。
●取材協力
株式会社リビングライフ・イノベーション
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