定年退職・早期退職前後にやりたいお金の計画

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定年退職・早期退職前後にやりたいお金の計画

定年退職といえば、退職金の使い道・保管方法をイメージする人も多いのではないでしょうか?そして、人生100年時代と言われる今、お金の計画は退職してからが本番といったところです。住宅ローンの残債がある、教育費がかかる、親の介護が心配、実家やお墓、様々な事柄とお金の問題が入り混じってしまうのではないでしょうか。さらに、最近では早期退職を選択する方も増えています。今後の人生について、なりたい自分・ありたい自分への思いを実現するといった感じでしょうか。早期退職を希望する方のなかには、ハードに仕事と向き合ってきたという方も多いように感じます。5年10年早めにワークライフ・バランスを意識した、働き方へチェンジしていく場面で「退職前後にやりたいお金の計画」と題し、おさえておきたいチェックポイントをお伝えします。

定年退職・早期退職ともに、退職後の収入支出に関する戦略が大切です。現役時代に膨張してしまった支出の見直しもさることながら、収入額の時系列的変化・減少にも対応していく計画が必要です。いずれにしても、行き当たりばったりではだめであることと、事前に計画をし、立てた戦略の修正をしながら、リタイア・セミリタイアを迎えることができれば、今後の長い人生の不安解消へとつながることと思います。では、ここから定年退職・早期退職の方へ、あらかじめ準備しておきたいことやチェックポイントを包括的に書いていきます。

目次

1)「リタイアメントプラン」を策定するのは、いつ?
2)退職後、次の仕事への向き合い方は?
3)健康保険の選択は?
4)退職後が心配!その不安の理由は何?
5)「リタイアメントプラン」の策定について
6)社会保障と照らし合わせる金融商品のあり方

【まとめ】

1)「リタイアメントプラン」を策定するのは、いつ?
A)定年退職年齢の1~2年前に相談を希望するケース
定年まで転職をせずに、退職を迎える方が多いと感じます。同じ勤務先でキャリアの区切りをつけつつ、今後を考えるプランです。

B)早期退職計画に向き合うケース
30歳代、40歳代、50歳代から、長期計画をお持ちの方も非常に多くなっています。資格取得をする。独立する。異分野へ転職する。早期でのリタイアを意識するなどです。リタイア後の暮らし方をまず一番に考えて、リタイアメントプランを策定していく特徴があるように感じます。これまでの長期雇用、年功賃金、永年勤続、退職金といった日本特有の雇用形態が変わっていったことも要因のひとつかもしれません。仮に定年退職の60歳、65歳を、30歳の人から見てみると、遠い出来事のようで自分事と感じにくい感覚なのでは?と思いますが、そうではなさそうです。好きな趣味も続けていきたい、転勤があるか否か、テレワークで対応できるか、理想とする仕事のあり方や遠い将来の生き方までも明確に持ちながら選択していることも多いようです。住まい方も含めてワークライフ・バランスを大切にしていることがわかります。長時間労働である日本人の生活から、今後の人生を模索する生き方について、より意識しやすくなったのかもしれません。

2)退職後、次の仕事への向き合い方は?
A)定年退職しリタイアする。
収支計画がクリアできていれば可能となります。毎月の家計簿が黒字でも、長期間の収支計画が成り立つことが必要です。人生には、ハプニングもあります。余力がありつつも、100歳までの収支が赤字にならないようシミュレーションができていればと思います。

B)継続雇用で同じ会社で働く。
「高年齢雇用継続基本給付金」の支給が該当するかどうかの確認をしましょう。60歳到達時賃金の75%未満になった場合、最高で賃金額の15%相当額を支給されます。
◎期間:60歳になった月~65歳になる月まで。
◎特別支給の老齢厚生年金の一部支給停止となります。
継続する場合は、具体的な労働時間や賃金についての検討が必要です。継続可能な年数と収入についても試算することが大切です。

C)退職(60歳~64歳)後に、再就職を希望する。
いったん退職した後に、「失業給付の基本手当」をもらい、再就職を希望するなどです。基本手当は、退職前6か月の賃金を基準にした額が給付額となります。定年退職・自己都合離職時の給付日数はともに、雇用保険の被保険者期間20年以上で150日です。(退職した日の満年齢が65歳未満の場合)被保険者期間が、10年以上20年未満だと120日です。1年未満から10年未満までは90日です。
◎倒産・解雇等の理由での離職の給付日数は、別途定められています。退職理由によって、給付制限の違いもあります。
◎特別支給の老齢厚生年金は、全額支給停止となります。

受け取れると思っていた「特別支給の老齢厚生年金」と、失業給付を受ける時期とが重複してはいないか確認することが必要です。該当すれば受けられる社会保障ですが、勘違い防止のため、収入金額を計算するだけでなく関係法令をおさえておきたいところです。

D)失業給付を受給後に、再就職する。
「高年齢再就職給付金」支給期間は失業給付の基本手当の支給残日数(100日以上200日未満の場合は1年間)

A)~D)のいずれを選択するにしても、今後の希望を考えながら選択したいものです。この仕事を定年まで継続するのか?〇△年以内には、キャリアを活かせるステップアップをしたいとか。独立開業するつもりでいるとか。別の分野で再出発をしたいとか。今までと違う分野や内容へ転向する場合は、残された時間を逆算しながら準備すべきものを書き出していきましょう。

以上の働き方の違いに加えて、老齢年金等の受け取り方も試算し選択していきましょう。

3)健康保険の選択は?
A)健康保険の任意継続
退職までに2か月以上の被保険者期間があること。退職後20日以内に勤務先の健康保険窓口へ申込みをする。2年間加入が可能。保険料は全額本人負担。協会けんぽの場合は、全被保険者の平均標準報酬月額(2023年度は30万)と、退職時の標準報酬月額のうち低い方を基に算出した保険料となる。標準報酬月額がやや高い人にも、上限が30万となっているので比較的選択しやすい。被扶養者の保険料は不要。

B)家族の健康保険の被扶養者になる。
保険料の負担はない。被扶養者になるには、年収基準の条件あり。

C)国民健康保険へ加入する。
いずれの保険にも加入していない場合、居住地の市区町村で加入する。前年の所得に応じた保険料+加入者数に応じた所得割額等となる。料率は市区町村による。(2023年度、介護保険料を含まない世帯の最高限度額は年87万)保険料が必要。退職時や前年所得との兼ね合いで、今後の健康保険についてよりよい選択をしましょう。

4)退職後が心配!その不安の理由は何?
・経済上のこと
・健康上のこと
・社会とのつながりが希薄になるかもしれない
・仕事以外でのコミュニティがない
・余暇時間をうまく使えない
・家の処分やリフォーム、断捨離、介護、ミニマムな生活、
・運転免許証返納スケジュール
・住まい方・転居

さらに、自営されている方は、事業継承等も大きな悩みとなっています。では、いよいよどのようにプランを作っていくかについてです。

5)「リタイアメントプラン」の策定について
①希望のライフスタイルを明確にする。
例)
・いつまで働く(時間、期間、賃金も)
・全く仕事しない
・開業の夢をかなえる
・海外移住・海外旅行
・趣味にかける時間や金額
・車の買い換えなどのイベント時期と金額
・不動産の売却や転居

時系列的に、より具体的に書き出しましょう。

②現状把握
例)
・資産と負債状況を確認する。
・資産状況の把握・金融機関の整理
・住宅ローン等の支払はいつまで、いくらあるのか。金利条件なども具体的にします。

近頃では、ネット銀行・ネット証券も多くなっています。高齢になると複数の口座管理が不安になることも考え整理していきたいところです。

③退職後の支出の書き出し
例)
・毎月の固定的支出・流動的支出
・年1回などの単発の支出
・数年毎のイベント支出などです。

④退職後の収入の書き出し
例)
・賃金収入
・オーナーとしての家賃収入
・自営(事業による)売上
・公的年金・企業年金等・個人年金
・利子・配当収入等

⑤収支一覧表を作成する
人生100年時代ですので、単年ではなく時系列で100歳までの収支がある方が理想です。家族年表に数字が入った収支計画表を作成します。専門用語で、キャッシュフロー表といわれています。10年くらいは黒字であっても、長期的なお金の流れを把握することができます。

⑥「資産額」を確認・長期運用が可能であれば必要に応じて実行する。
例)
・いくら可能?
・いつまで可能?
・リスク許容度や適合性はあっているか?

一時金としての退職金の使い道や保管方法を含め、ライフプランから見たときの資産の活用戦略を考えるということに繋がってきます。

⑦個別ケースの対応
例)
・相続対策
・事業承継等
別に計画が必要なことを、個別に取り入れていきます。

6)社会保障と照らし合わせる金融商品のあり方
・社会保障の確認をする。
・過不足はないか?の確認をする。

ライフイベントの大きな責任を果たしつつある時期かと思います。「保険・ローン・貯蓄や資産運用」のムダ・ムラ・ムリのカットをしていきましょう。各金融商品の出番が適正であるか、修正をしていく機会です。

【まとめ】

「希望のライププラン」を書き出す
      ↓
「退職後の収入・支出」を洗い出し
      ↓
将来的に収支の「問題点」はないか?
      ↓
「問題点」があれば、修正する。
      ↓
修正後の収支一覧表の作成をする。
      ↓
資産運用についての検討。
相続等の個別対応の確認をする。
「保険・ローン・貯蓄や資産運用」は適正であるか。
      ↓
優先順位を立てながら実行する。

さらに、気をつけたいところはこちらです。

<収支一覧表作成時の項目・数字の注意点>
・収入見込み額が過大になってしまう
・支出見込み額が過少になってしまう
・見落としした項目・計上もれはないか
・数字や計画に余裕を持たせる
・物価上昇率を勘案しているか

一般的に、収入額については、用心深くやや低めの計画にしたいのが心理としてあります。ところが、支出額については理想を追いがちです。作成をしてみたが、精度はどうなのかと心配になった方は、次の方法を試してみてください。支出額の計画が妥当となっているかを確認する方法としては、作成した収支一覧表の初年度の「単年収支」をみてみましょう。「単年収支」について、収支一覧表の数字が、実際の家計の貯蓄ペースよりもかなりプラスの表示となっている場合は、現実世界(家計)では貯蓄ができていないけれども、収支一覧表上では貯蓄がしっかりできているということになります。つまり収支一覧表自体が、現実世界(家計)と乖離(かいり)してしまっていることがわかります。何が、過少計上になっているのか、項目・計上もれはないのか、など細部の確認と修正をしながら、収支一覧表の精度を高めていく必要があります。作成した収支一覧表の初年度の「単年収支」と現実世界(家計)との開きが大きければ大きいほど、100歳までの収支一覧表は理想を追う甘い計画となってしまいます。

このように「リタイアメントプラン」は、壮大なスケジュールです。そう思うと、リタイア後のことを計画するには、時間を逆算して今やるべきことを考察することが必要になってきます。まさに、リタイアメントプランを策定することは、いまの時間配分を考えることで、退職の時期だけに特化していないということもわかってきます。数年前、10年前、20年前から、時間をかけて計画する時に何が必要なのかを考え、今後のキャリアをどう重ねていくのかを考えるキッカケ作りになるかもしれません。なりたい自分・ありたい自分への第一歩を見つめる「定年退職・早期退職前後にやりたいお金の計画」は、人生戦略になると思います。

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