藤岡みなみ|緑あふれる街への憧れが爆発【思い立ったがDIY吉日】vol.77
文筆家・ラジオパーソナリティの藤岡みなみさんが、モノづくりに対してのあれこれをつづるコラム連載!題字ももちろん本人。かわいくも愉快な世界観には、思わず引き込まれちゃいます。今回は、緑あふれる街への憧れについて!
藤岡みなみ
文筆家、タイムトラベル専門書店utouto店主。縄文時代と四川料理が好き。やってみたがり。
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緑あふれる街への憧れが爆発
▲グリーンに囲まれて暮らしたい。
ああ、シンガポールに住みたい。
街にもビルの中にも植物がいっぱいで、いつも視界の50パーセントは緑色。
あちらこちらでいきいきと茂る草木を見ていると、そうしようと思うよりも先に体が深呼吸をする。
忘れられない印象的なスポットもいくつかあった。
雲の上を歩いているような遊歩道のある巨大な植物園。吹き抜けの中心から大きな滝が落ちていて、それを取り囲むように植物が植えられているショッピングモール。人間が絶滅した後に植物が幅を利かせている未来のようだった。
かっこいい。緑にのみ込まれたい。
しかし実際問題、シンガポールに住むのは今の私にとって簡単なことではない。想定される家賃や生活費の高さ、ビザ取得までのハードルなど、かなり具体的に妄想してみたことがある。
何度調べてもやっぱり条件が合わない。うう、こんなに憧れているのに。
仕方ない。こうなったら家を少しでもシンガポールに近づけるしかない。私がシンガポールに行くのではなく、シンガポールのほうからこちらに来てもらおう。
手始めに、仕事部屋を植物で埋め尽くすことにした。
実は去年から少しずつ観葉植物を増やしてきたのだけれど、まだまだ理想には遠い。部屋の中に緑があるのではなく、緑の中に仕事部屋がある状態にしたい。
週末にホームセンターや苗木店を巡り、一緒に暮らしたいと思った植物たちを連れて帰ってきた。
個性豊かな植物と共に暮らす
▲空想の雲がもくもくしているマハラジャ。
それでは新メンバーを紹介しよう!
まずは〝奇妙な植物〞を意味するビザールプランツのマハラジャ。多肉植物の仲間でどの個体も唯一無二の形をしている。なんとなく芸術家っぽいなと思い購入。インスピレーションを与えてくれそう。
ユッカ・ギガンティアは生命力が強く青年の木とも呼ばれている。ゾウの脚のような太い幹から噴水のように葉が飛び出す様子を見ていると、やる気が湧いてくる。
▲フィカス・ベンガレンシスの茎のカーブ!
一番名前が好きなのは、フィロデンドロン。光沢のある葉と赤い茎がかっこいいサトイモの仲間。
フィカス・ベンガレンシスはうねうねした白い茎に惚れた。
シュガーバインの葉は子どもの手で、ツピダンサスは大人の手。
植物を観察していると、自分より年下だと思うものと年上だと思うものがある。
それは樹齢とかそういうこととは関係ない。例えば芸術家・マハラジャは少し年上の先輩。シュガーバインはうんと年下。平べったい葉が垂れ下がるサボテンのラムローサはアンニュイで、なんとなく同年代な気がする。
▲子どもと大人の手。かわいい5枚の葉っぱ。
新入りを配置し終えると、部屋がお花屋さんの香りに包まれた。植物園というよりももう少し甘い、街のお花屋さんの空気。花はないのに不思議だ。
以前より目に入るグリーンの量が増えたことで、家にいながら散歩している気分を得られるようになった。求めていたのはこれだ。ここは、マイ・シンガポール。
▲こちらがわが家のシンガポールゾーンです。
私は本棚の本を並べ替える作業が大好きだが、植物の場所を入れ替えることもとても好きだと気付いた。
葉っぱが大きいゴムノキを高いところに置くと部屋がパンッと明るくなる。リプサリスのカスッサは窓際につるすと部屋に光が注ぎ込むよう。
シャキッと真っすぐな茎のものは床に置いたり、小さくてワサワサしたものは棚に置いたり。並べ方で空間の印象ががらっと変わるから飽きることがない。
横に配置したり縦に配置したり、寄せたり離したり。仕事の合間に一息つきたいときや夜ゆったり過ごしたいときに、植物たちの席替えをするようになった。
おそろしいことに、新しい植物を迎えるたびに「まだ足りない、もっと緑を増やしたい」と考えてしまう。
ひとまず今のメンバーのすこやかな成長を祈り、丁寧なお世話を心がけたい。気分はすっかり植物園の園長だ。
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