そんなに贅沢はできない?「年収1000万」の現実

そんなに贅沢はできない?「年収1000万」の現実

「年収1000万円」といえば、多くのビジネスパーソンが目標にし、目指している所得額。たしかに、年収1000万円を稼げるのは、日本ではごく一部の限られた人。

もちろん、それだけ稼いでいるならお金に困ることは少ない。ただ、資産はというと案外残らないという現実を指摘しているのが『脱・高収入貧乏』(幻冬舎刊)だ。本書では、この収入帯の人向けに手元に資産を残すためのマネーリテラシーを授ける一冊。

ここでは著者でファイナンシャル・プランナーの永田智睦さんに、「年収1000万の現実」とこの層の人に求められるお金との向き合い方についてお話をうかがった。

■そんなに贅沢はできない?「年収1000万」の現実

――『脱・高収入貧乏』についてお話をうかがえればと思います。まず想定されている読者の年収はどれくらいを想定しているか教えていただきたいです。

永田:だいたい1000万円前後の方を想定して、この収入帯の方々に必要なマネーリテラシーについて書いています。

――年収が1000万円をこえていても、意外と資産がなかったり手元にお金が残らない人が多いというのは驚きました。

永田:年収1000万円前後だと、資産額でいうと数百万という方が多いのではないでしょうか。3000万円から5000万円くらいのまとまった資産となると年収は1500万円以上が多いと思います。年収2000万円を超えるとやはりまとまった資産を持っている方が多いですね。

――年収1000万円だと正直もっと資産は多いのかと思っていました。

永田:もちろん、年齢にもよると思います。40歳前後の方で、資産運用や貯金に熱心な方であれば年収1000万円で資産額は3000万円という方もいるにはいます。当然、若いほど資産額は少ない傾向がありますね。

――この年収帯の方々の暮らしぶりはどのようなものなのでしょうか。たとえば世帯年収が1000万円で子どもが二人いる夫婦だと、そこまでの贅沢はできないかもしれませんね。

永田:夫婦合わせて1000万円だと正直そんなに「いい暮らし」はできないはずです。「パワーカップル」という言葉が最近使われていますが、夫婦ともに年収が700万円~800万円ほどあって、世帯年収で1500万円を超えてくると、タワーマンションを買ったりする方が増えてくる印象です。ただ、これは子どもがいるかどうかにもよるでしょうね。

参考までにお話しすると、年収1000万円ちょっとだとタワマンのローン支払いは結構重たいはずです。いくらのマンションを買うかにも当然よりますが、単独で年収1000万円だと、手取りは700万円ほどで、月収は60万円くらい。それで仮にタワマンの1億円の物件を買ったとすると月々のローンの支払いは30万円くらいなので、半分くらいローンの支払いで消えてしまうことになります。

――高収入なのに資産が残らない「高収入貧乏」になってしまう原因についてはどのようなことが考えられますか?

永田:「これです」という一つの明確な答えがあるわけではないと思います。ただ、現状理解とプランニングがうまくできていないということはいえるのではないでしょうか。

――本書ではボーナスの時期にゆるんだ財布のヒモがその後もなかなか元に戻らない、というような具体的な指摘もされていました。

永田:お金って入れるよりも出し方、使い方のほうが難しいんです。そして人それぞれのお金の使い方が何で決まるかというと、結局現状理解と未来をどう考えているかによって決まります。

自分の現状がわかっていなければ何にお金を使っているかわかりませんし、未来のプランがなければ、せっかく稼いでも浪費してしまうことが多いんです。

――永田さんがこれまで見てきた「高収入貧乏」の方々について具体的に教えていただければと思います。

永田:収入はありますから、ものすごくお金に困っている感じではなくて、適度にいい生活もしている。ただなかなかお金が貯まっていかないし、資産もできない。本人もそれはわかっているのですが、どこにお金を使いすぎているのかがわかっていないというパターンが多い気がします。

――お金を使いすぎていることは本人もわかっているんですね。

永田:そうですね。浪費のパターンについては人それぞれです。旦那さんの飲み会が多くて、という家庭もありますし、奥さんの買い物の出費がかさんで、毎月のカードの支払いが50万円を超えているという家庭もあります。

ただ、浪費が悪というわけでもないんです。子どもを2人育てていて働きたいのに働けないという方が、買い物でストレスを解消することもあるわけで、それを浪費だからという理由でいきなりスパッとやめたとしても後で反動がくる。

お金を使いすぎているという自覚があるのであれば「どんな未来を望むか」という視点からお金の使い方を考えていく必要があると思います。

(後編に続く)

■永田智睦さんプロフィール

愛知大学法学部法学科卒業。FP1級技能士、日本FP協会CFP認定者。新卒で信用金庫に入社し、約6年個人法人の営業として勤務。退社後、28歳で上京。独立系FP事務所を開業。個人で2年間事業を行い、周囲の勧めもあり法人化を決意。DragonBlood株式会社を設立。個人向けの資産コンサルティング、オンラインサロン、金融知識のトレーニング事業を中心に、中小企業においての財務コンサルティングも多く行っている。フィリピン不動産を取り扱うAPI Gateway株式会社代表取締役。未来の起業家を育てる教育プログラム「CEOキッズアカデミー」の講師も務める。先進的なFPとしてのコンサルティングを行うべく、国内外の情報を多く取り入れ、国や会社が信頼できない時代に頼られる、「顧客と共に未来へ歩んでゆける会社」を目指したいと考える。

【関連記事】

元記事はこちら

高級車もブランド服もなし 元国税局職員が語る「資産家の暮らし」

年収1000万でも手元にお金が残らない人の問題点とは

  1. HOME
  2. エンタメ
  3. そんなに贅沢はできない?「年収1000万」の現実

新刊JP

ウェブサイト: http://www.sinkan.jp/

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。