映画『スクロール』古川琴音インタビュー「観る人によって、観る状況によって、心にフックがかかる場面が違う」
YOASOBIの大ヒット曲「ハルジオン」の原作者としても知られる橋爪駿輝・原作小説「スクロール」(講談社文庫) が北村匠海×中川 大志W主演で映画化。2月3日(金)より全国公開中です。
理想と現実のギャップに悩む4人の若者たちが社会や自分自身と必死に向き合う姿をリアルに描く本作で、主人公「僕」に共鳴し、特別な自分になりたいと願う「私」を演じた古川琴音さんに、作品の魅力についてお話を伺いました。
【ストーリー】 学生時代に友だちだった〈僕〉とユウスケのもとに、友人の森が自殺したという報せが届く。就職はしたものの上司からすべてを否定され、「この社会で夢など見て はいけない」とSNSに想いをアップすることで何とか自分を保っていた〈僕〉と、毎日が楽しければそれでいいと刹那的に生きてきたユウスケ。森の死をきっかけに“生 きること・愛すること”を見つめ直す二人に、〈僕〉の書き込みに共鳴し特別な自分になりたいと願う〈私〉と、ユウスケとの結婚がからっぽな心を満たしてくれると信じる菜穂の時間が交錯していく。⻘春の出口に立った4人が見つけた、きらめく明日への入口とは──?
――素敵な作品をありがとうございます。まず、台本をお読みになった感想を教えてください。
周りの友達、兄弟のことや、たくさんの人のことを考え、思い浮かべながら読みました。台本を読んでそういった感情を抱くのは初めでした。監督は「これはみんなの物語だ」とおっしゃっていたのですが、その通りだと私も感じていて。社会に出て、色々な壁にぶち当たっている私たち自身のお話だと思います。
――古川さんが演じられた「私」という役柄についてはどの様な印象を抱きましたか?
「私」という役柄がすごく好きです。自分がどう生きていくか、何を大切にしていくかということを、この作品の登場人物の中で一番分かっている人物だと思いました。なかなか、自分がこれが好きだとか、これが嫌だという感情って感じづらかったりしますよね。一番身近な感情のはずなのに、大人になればなるほど誤魔化せるというか、周りに流されるうちにわからなくなっていくことも多いと思います。でも「私」は自分のものさしで世の中と関わりを持てているので、カッコいいなと思いました。
――そんな「私」を実際に演じてみていかがでしたか?
やっぱり強い人だなと思い。演じながらパワーをもらっていました。どの役も「この役のこういう所好きだな」という所から広げていくのですが、「私」は特に惚れ込んだキャラクターです。演じていて気持ちが良いですし、演じている間に「私」になれたことが嬉しかったです。自分の思っていること、行動を、妄想ではなくてスパッと出来るのがカッコ良いですね。
――同世代の俳優さんたちとの共演になったと思います。特に北村さんとのシーンが多いと思いますが、撮影で印象に残っていることを教えてください。
北村匠海君とは何度か共演させていただいているのですが、共演する度に、すごく懐の大きい方だなと感じます。お話すると、自分が考えてもいなかった深い所まで考えさせられることが多いです。ミクロな視点も、マクロな視点も両方持っている方だなと思っていて、感情も論理もあるし、バランス感が絶妙な方で、私もそんな人になりたいなと思いました。
映画の中では、匠海君が「僕」で私が「私」役ですが、プライベートな部分では、匠海君の方が「私」っぽいかもしれません。自分の生き方を納得しながら、自分が好きな様に楽しく選択しているし、自分の基準をハッキリ持っている方だと思います。
――演じている役柄と逆であることが興味深いですね。古川さんも「僕」に近い部分があるのでしょうか?
自分が良い人間になれるかどうか……というと、すごく大袈裟に聞こえるかもしれませんが、自分が物事を決めるしっかりとした基準を持てるだろうか、とか、そんな漠然とした不安を感じることがあります。そういう部分が私と「僕」に似ている部分かもしれません。自分に正直になること、地に足をつけること、そうやって少しずつ不安を解消していくしかないなと思っています。「ありのままの自分を受け入れている人」になることが目標なのですが、「まだまだ成長期だし!」と自分には言い聞かせていながら(笑)、まだ抗っている部分もあります。
――清水監督はMVなど数々の映像作品を手掛けられてきたこともあり、映像美が素晴らしかったです。古川さんが好きなシーン、印象に残っているシーンを教えてください。
妄想の中で、「僕」が屋上から落ちる場面がすごく綺麗で。“妄想”ということにもすごく説得力を感じました。人間は社会と関わらないと生きていけない、それを踏まえて、「社会の中にいる僕」がとても綺麗に描かれているなと感動しました。清水監督は、これまで私が出演させていただいてきた作品の監督とタイプが違って、(映像部や俳優部などの)セクションの垣根が無い所が印象的でした。みんなが監督に影響を受けて、オープンになっていく感覚があって、すごくナチュラルでラフな現場でした。こういった哲学的なテーマを扱っていますが、改まって何かを話し合うのではなくて、それぞれの自然な会話の中から噛み砕いていくというか。結論の無い話を監督とたくさん出来たことがとても楽しかったです。
――「愛」についても描かれていますよね。難しい質問になり恐縮なのですが、古川さんは「愛」をどの様に感じて表現したいと思いますね。
とても難しいのですが、日々色々なものを愛しているなと思います。仕事もそうですし、私が飼っている猫にも、家族にもそうです。日々変わっていきますけれど、何かを愛し、愛しているなと思います。皆さんにもきっとそんな存在がいますよね。
――「私」が「僕」に共鳴する様な、そんな存在が古川さんもいたりしますか?
学生時代に大好きで聴いていた音楽には刺激を受けていたと思います。マイケル・ジャクソンが好きで、歌もダンスもスタイルも好きなのですが、高校生だったので「世界がどうしたら平和になるのか」とよく考えている時期だったんです。その時にマイケルの曲を聴いて、みんながこの曲の様な気持ちを持てたら良いのに、とか、チャリティーなどの行動を起こしていることを見て、自分もいつかそういう影響力を持つ人間になりたいと思いました。
――素敵なお話をありがとうございます。改めて、映画を楽しみにしている方に、メッセージをお願いします。
私はこの作品を通して、自分のこととか、友達のことがぽんぽんと浮かんできました。観る人によって、観る状況によって、心にフックがかかる場面が違うと思うので、映画と自分の世界を行ったり来たりしながら自由に観ていただきたいなと思います。
撮影:オサダコウジ
『スクロール』
出演:北村匠海 中川大志 松岡茉優 古川琴音
水橋研二 莉子 三河悠冴 / MEGUMI 金子ノブアキ / 忍成修吾 / 相田翔子
監督・脚本・編集:清水康彦 脚本:金沢知樹 木乃江祐希 原作:橋爪駿輝「スクロール」(講談社文庫)
主題歌:Saucy Dog「怪物たちよ」(A-Sketch)
製作:坂本香 鷲見貴彦 小山洋平 佐久間大介 浅田靖浩 エグゼクティブプロデューサー:麻生英輔 木村麻紀 チーフプロデューサー:小林有衣子
プロデューサー:八木佑介 野村梓二 キャスティングプロデューサー:本多里子 音楽:香田悠真 撮影:川上智之
照明:穂苅慶人 録音・音響効果:桐山裕行 美術:松本千広
衣裳:服部昌孝 ヘア:HORI メイク:NOBUKO MAEKAWA 監督補:⻑田亮 VFX:宮城雄太
助監督:草場尚也 制作担当:小林慶太郎 ラインプロデューサー:門馬直人 安藤光造 アシスタントプロデューサー:金川紗希子
製作:『スクロール』製作委員会 製作幹事:TBSグロウディア ベンチャーバンクエンターテインメント制作プロダクション:イースト・ファクトリー
配給:ショウゲート
(C)橋爪駿輝/講談社 (C)2023映画『スクロール』製作委員会
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